「介護をしたのは私なのに…義理の娘の私に相続権がないのが納得いかない…」

人気司法書士の村山澄江先生が実際に対応したトラブルケースをモデルに、解決法のヒントをお届けします。
※実際に登場する人物・所属・家族関係などはすべて架空のものです。

「介護をしたのは私なのに…義理の娘の私に相続権がないのが納得いかない…」

「介護を続けてきた義父が亡くなったのですが、義理の娘である私に遺産をもらう権利がないことに納得がいきません…」

そう話すのは50代の女性、Aさん。

「義父の事業を手伝ってきた夫が先に亡くなってしまいましたが、義父が病床に臥せってしまった後も、介護に加え事業の手伝いも夫の意思を継いで私がしてきました。しかし先日、亡くなった義父の相続についての話が出た際、義理の娘である私は相続人ではないから遺産をもらう権利がないと言われました。」

Aさんは長年義父の介護、事業の支援も行ってきた自分が遺産をもらえないことに疑問を感じました。

「法律上の相続人じゃないのはその通りかもしれないが、家族として生活してきたことには変わりなく、親族の中でも自分が最も義父のことを最期まで見守り、真摯に介護・事業の支援を続けてきたのに、遺産を一切もらうことができないというのはちょっと不公平ではないかしら…」

義父の遺産の主な相続人は義母と夫の妹でしたが、彼女たちは義父の介護・事業にほとんど関与していなかったにも関わらず、義父の遺産全てを受け取ることになります。

Aさんは、そのことに納得がいかない様子でした。

目次

相続人でなくても介護や事業への貢献により「特別寄与料」を請求できる

民法が改正され、令和元年7月1日以降に開始した相続については、相続人でない人であっても条件を満たせば貢献度に応じた額の金銭を請求することができるようになりました。そのため、Aさんは各相続人に対し、特別寄与料を請求しました。

「特別寄与料」とは?

民法改正前は、介護をしても「嫁」のような立場、つまり相続権のない人は自分が行ってきた貢献度合いに応じた金銭を請求することはできませんでした。

しかしAさんのようなケース、つまり故人の介護・事業の援助などをほとんど行わなかった相続人に対し、手厚く介護を施した相続人以外の人が遺産を取得できないのが不公平だと訴える声が多く挙げられました。

そのため、相続人以外の人の故人への貢献を考慮するための方策として、「特別寄与料」の制度が創設されたのです(民法第1050条)。

但し特別寄与料が認められるためには、次のような条件があるので注意が必要です。

被相続人の親族(*)であること
 
被相続人に対し、無償で療養看護(介護など)やその他の労務の提供をしたこと

その行いにより、被相続人の財産が維持または増加したこと
 
*親族とは…被相続人の配偶者、6親等以内の血族、3親等以内の姻族のこと。
内縁の妻は対象にならないので注意が必要。

この条件が揃っていれば、相続の開始後相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭を請求することができます。

遺産分割協議が整わなかったら?

特別寄与料は、まずは相続人と特別寄与者の話し合いで金額が決められます。

一般的には、特別寄与者が介護を行ったことにより、被相続人の財産がいくら維持できたか、いくら減らずに済んだかということを踏まえて、特別寄与料を計算します。

寄与料の計算式、計上する項目の例は以下の通りですが、寄与の程度はご家庭や事情によっても異なるため、型に嵌めた計算ができません。

金額の決め方についても、相続人と特別寄与者との話し合いでは、なかなか全員が納得いく金額を出せないかもしれません。

よって、ご自身が行った介護などを金銭的に反映してほしいとお考えの方は、相続問題に強い専門家にご相談されることをお勧めします。

実際に療養介護を実施した場合(今回の例はこちらに該当)
外部の介護人に依頼した場合の日当 × 療養看護日数 ×裁量的割合(0.5~0.8)
  
介護士依頼費用を金銭的に負担した場合
費用負担額がそのまま寄与分額となります。
  
その他介護にかかった経費
介護にかかった交通費や介護用品の購入費など

もし算出した金額を提示しても協議が整わない、もしくは協議ができない場合は家庭裁判所に申し立てることができます。
その場合は、家庭裁判所が寄与した時期、方法、程度、相続財産の額等の事情を考慮した上で特別寄与料の金額を決めることになります。

時効はあるの?

請求できる期間には時効があるので注意が必要です。

相続開始を知ったときから6か月、または相続開始から1年で時効になります。

将来、特別寄与分を請求するには?

将来的に特別寄与料を請求する可能性がある介護者の立場にあるのであれば、介護をしながら介護日誌などの記録をつけておくことをおすすめします。

どのような介護を行ったのか、またそれに要した時間などを細かく記しておきましょう。
また介護にかかった費用交通費の領収書、もしくはレシートも必ず保管しておきましょう。
それらは協議において特別寄与料の計算に役立ちます。

一方で、その他の親族との関係性を保っておくことも重要なことです。
なぜなら、特別寄与料は基本的に相続人との話し合いで決まるためです。
貢献を周囲にも認めてもらえるようにしておくことで、将来自分にとって納得のいく特別寄与料に近づくのではないでしょうか。

現在義両親の介護をしている方は、ぜひ特別寄与料のことを知っておき、しっかりと準備しておくことで将来の不満を減らすことができるでしょう。

現実問題、嫁の立場で請求するのは大変なのでは?

法律が改正されたとはいえ、いざ相続の話し合いの場所で特別寄与料を請求するというのは勇気がいることと推測されます。

もしも介護される側の方がこの記事をお読みになっていて、介護してくれている方に相続で苦労させたくないと思うのであれば、次のような選択肢があることも知っておいていただきたいです。

  • 遺言書で、感謝の気持ちを形にする(遺贈) 
      
  • 生前贈与として謝礼を渡しておく 
     
  • 受取人を特別寄与者とする生命保険を利用する 
     
  • 養子縁組をして相続人にしておく 

まとめ

義理の親などの介護を担う立場であれば、相続人に特別寄与料の請求ができる場合があります。
自分がどれだけ故人に貢献したのかを数値で算定することを意識して、介護記録や実費の領収書を残しておきましょう。


解説してくれたのは司法書士 村山澄江先生

村山澄江先生(むらやますみえ) プロフィール

民事信託・成年後見の専門家、司法書士

公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート会員

簡裁訴訟代理関係業務認定会員

1979年名古屋生まれ。早稲田大学卒業。

2003年司法書士試験合格。

成年後見の相談者数300件以上。

民事信託と成年後見の専門家として全国でセミナー等行っている。


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