自分のからだの変化に前向きな気持ちで付き合っていくことができればと思い、「加齢による五感の変化とつきあい方」を全5回のシリーズでお届けしています。
第5回目は、加齢による「手足指先」の変化とつきあい方です。
ヒトは、二足歩行をすることで、両手が自由になり、腕や手を使うことで様々な文明を生み出してきました。
また、五感の一つである触覚は、自分を守るためにわずかな違いも感知できるように、ミミズのような生物にも備わっている、原始的な感覚です。
その触覚のおかげで、触れたり触れられたりすることを通して、気持ちを癒しリラックスすることを体感している方も多いのではないでしょうか。
加齢による「手足指先」の変化を知り、人生を豊かに過ごすために労わってみませんか。
この記事の目次
1. 加齢による「手足指先」の変化 ―サルコペニア-
- 横断歩道を青信号で渡りきれない
- 手すりにつかまらないと階段を上がれない
- ペットボトルや瓶の蓋が開けにくくなった
ということはありませんか。
このような手足指先の変化を感じる場合は、「サルコペニア」が疑われます。
加齢や生活習慣の影響によって全身の筋肉量が減り、筋力や運動機能の低下が進行する状態のことを言います。
握力が低下しているか(男性26㎏未満、女性18㎏未満)、または歩く速度が低下しているか(1秒間あたり1m未満)、検査をして筋肉量が基準より減少していることが認められると、「サルコペニア」と診断されます。
手足は主に骨・関節・筋肉などからできています。
痛みやしびれがあると、手足を動かすことが億劫になりますね。
しかし、手足を動かさなくなると、筋肉量が減り、さらには筋肉とつながっている骨への刺激も少なくなり、骨粗しょう症につながっていきます。
サルコペニアは65歳以上の高齢者に多いと言われています。
しかし、65歳以下の方でもデスクワークや自動車に頼る生活習慣などによってサルコペニア予備群の可能性がありますので、注意が必要です。
2. 「手足指先」の健康を守るために
健康長寿を保つためには、できる範囲で手足を動かすことが必要です。
1) 指先の柔軟性を保つ
長年、手足指先を使い続けていると、関節内に炎症が起きやすく、こわばりや腫れ、痛みが出やすくなります。
痛みなどがあると、指を動かさなくなります。
さらに血流が悪くなり関節自体も硬くなるため、適度な運動で血の巡りをよくして柔軟性を保つことが大切です。
柔軟性を保つための指の運動を2種類、紹介します。手と足、どちらも試してみてください。
【指ほぐし運動】
STEP
指を思い切り開いて、5本の指を伸ばす。
ギュっとしっかり握ります。
伸ばす、握るを10回程度繰り返します。
指を動かすことは、物を掴んだり文字を書いたりと、私たちの生活において指の動きは欠かせないものです。
人間の手は「第2の脳」と呼ばれていることをご存じですか。
特に指先を動かして刺激を与えると脳が活性化され、集中力や記憶力を高めることにつながります。
【指回し体操】
STEP
足の指を回します。
いすに腰をかけ、足を組むように片方の足をもう片方の太ももに乗せます。
乗せた方の足首を反対側の手でつかみ、親指から小指の順に、関節をほぐしながら、内回りと外回りに10回ずつ小さく回します。
STEP
手の指を回します。
爪の生え際を押さえて指をつかみます。
指の力を抜いてリラックスさせ、内回りと外回りに10回ずつ小さく回します。
2) 歩く
最近、75〜84歳の高齢者の歩く速さと、10年後の生存率を調べた研究で、筋肉の量が多いほど長生きできることがわかってきました。
普通以上の速さ(毎秒1.4m以上)で歩けるグループと、歩行速度が遅い(秒速0.4m未満)グループとを比べると、10年生存率に3倍程度の開きがあることがわかったのです。
手足を動かすことで筋肉細胞から30種以上のマイオカインと呼ばれるホルモンが出て、健康維持に働いているという報告もあります。
激しい運動ではなく、散歩など長く続けられる運動を取り入れていくと、手足の動きの維持・回復することにつながります。
歩くために注意していただきたいことがあります。それは足の手入れです。
- 靴が自分の足に合っているか
-
足が老化すると、足裏のアーチが崩れて扁平足となり、サイズが5mm~1cm程度大きくなることがあります。扁平足になると足に疲れがたまりやすく、歩行にも影響します。
靴がきつくなると足がむくんでいるからと思いがちですが、そればかりではありません。
お店の人に相談し、今の自分の足に合った靴を選びましょう。
- 爪が伸びすぎていないか
-
加齢により、老視で目が見えにくい、からだが硬い、腰や膝の痛みがある、麻痺やふるえがあるなどの理由で、足の爪を切る動作を自分でできない方もいらっしゃるかと思います。
以前、デイサービスのお手伝いをしている時、歩き方がぎこちないなと感じた利用者がいました。入浴の際に足元を確認すると、爪が足の裏側まで伸びて食い込んでいました。
足の爪を切ることが難しい場合は、かかりつけの病院で爪を切ってもらえないか相談してみてください。
もし、その病院で難しいようでしたら、皮膚科に受診してみましょう。
医療費の一部負担は必要ですが、治療の一環として爪切りをしてもらえます。
その他、介護が必要な方は介護認定を受けると、訪問看護や訪問介護を利用することで、爪切りをしてもらえるかと思います。
3. まとめ
今回は、加齢による「手足指先」の変化にとして、次の3点について、お伝えしました。
- 加齢や生活習慣の影響によって全身の筋肉量が減り、筋力や運動機能の低下が進行した状態を「サルコペニア」といいます。
- 指を動かさなくなると、血流が悪くなり関節自体も硬くなるため、適度な運動で柔軟性を保つことが大切です。
- 手足を動かすことで、筋肉細胞からマイオカインと呼ばれるホルモンが出て、健康維持につながります。気持ちよく歩くために、靴や足の爪の長さを整えましょう。
全5回を通して、加齢による五感の変化とつきあい方をお伝えしてきました。
私たちは、視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚という、いわゆる五感と呼ばれる感覚機能の働きを通じて、情報を得ています。
加齢による変化によって、感じたり、判断したりするための情報量が不足しやすくなります。
しかし、日々の生活の送り方によって維持することは可能です。
今までお伝えした内容が、少しでも皆様のお役に立つことを願っています。
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この記事を書いた人
ヤマダ カオリ
〈プロフィール〉
親に勧められ、自分が希望する心理学への道をあきらめ、看護学校に入学し、病院に就職する。周りの同期のように看護が楽しいと感じられず、私のしたいこととは違うと思い続け、「看護師は向いていない」と悩みながら3年間 病院で勤務後、退職する。事務職に転職しようとパソコンや簿記を学ぶが、25歳では事務職への転職は難しく、生活のために看護師に復帰する。
復帰後はマンネリ化した機能別業務に、再度「看護師は向いていない」と感じる日々が続いていた頃、関連病院で病床数増床のため看護師を募集していることを知り、心機一転すれば看護の楽しさがわかるのではと思い、異動を希望し、上京する。上京した病院で、自宅で最期を迎えたいと希望する患者や家族への退院指導の難しさと充実感を知り、新人教育担当として新人看護師が日々成長していく姿に励まされ、5S活動やQCサークル活動を通じて業務改善に手ごたえを感じるなど、看護師を続けたいと思えるようになった。それからは、自分の興味の赴くままに学びを深め、特に認知症に関する知識や技術を身につけ、「その人の行動の意味することは何か、生活歴を通して気づく看護の楽しさ」を伝えたいと思うようになった。
現在は、「看護が楽しい」と感じる仲間を増やしたくて、看護学校で看護教員をしている。
〈経歴〉
看護師経験 32年(内分泌代謝・循環器内科病棟、外科混合病棟、高齢者施設で勤務)
看護教員養成研修 修了
認定看護師教育課程(認知症看護) 修了
医療安全管理者養成研修 修了
認定看護管理者制度 ファーストレベル・セカンドレベル教育課程 修了
〈講座〉
認知症ケアに関する講座 多数
未来をつくるkaigoカフェ 「つづけるカフェ」隔月開催(現在休止中)