
おむつケアは排泄の度に清潔を保つだけではなく、快適さと尊厳を守るために欠かせないケアです。一方で、肌トラブルやニオイなどの悩みが起こりやすく、介護される側もする側も負担になることもあります。
この記事では、初心者の方でも今日から役立つ肌トラブル予防とニオイ対策のポイントをお伝えします。
この記事の目次
1. なぜ高齢者は肌トラブルが起こりやすいのか?~予防のポイント~
年齢を重ねると肌のバリア機能が低下し、乾燥しやすくなります。水分や皮脂が不足して肌が薄くなるため、摩擦や刺激に弱く、赤みやただれを起こしやすくなります。また、血流も減るため、傷の治りが遅くなることも特徴です。
おむつを使用すると避けられないのが、尿や便による化学的刺激とムレ です。尿中のアンモニアや便の消化酵素は皮膚を刺激し、長時間触れていると皮膚炎を起こします。さらにムレで皮膚がふやけると、わずかな摩擦でも傷つきやすくなります。
1) よくある肌トラブル
| 赤み | 赤みは、肌に炎症が起こり始めた最初のサインです。おむつを引っ張る、強くこすって拭く、尿や便が長時間触れるなどの刺激が重なると起こりやすくなります。早い段階で気づいてケアすれば、改善しやすい状態です。 |
| びらん | 尿や便が長時間触れて肌がふやけると、赤くただれてじゅくじゅくした状態になります。ヒリヒリとした痛みを伴うことが多く、早めの保護ケアが必要です。放置すると感染を起こし悪化します。 |
| カンジダ感染 | 長時間のムレや免疫力の低下により、カンジダ真菌が繁殖しやすくなります。赤み、境界のはっきりとした発疹、強いかゆみが特徴です。治療には抗真菌薬の軟膏が必要になるため、症状が見られたら早めに受診しましょう。 |
これらの症状が見られたら、かかりつけの病院やケアマネジャー、訪問介護員(ヘルパー)、訪問看護師に早めに相談しましょう。早めに対応することで、本人と介護者の不快感や負担が軽減します。
2) 日常でできる予防ポイント
(1) 排泄のタイミングに合わせて、おむつ交換をする
尿や便が長時間触れていると、アンモニアや消化酵素による化学刺激で肌のバリアが破壊され、赤みやびらんを起こりやすくなります。
排泄日記をつけて排泄のパターンがわかると、交換のタイミングが把握できます。適切なタイミングで交換できると、ムレによるふやけを防ぎ、摩擦や感染のリスクを減らせます。
(2) 肌はこすらず、優しく押さえるように拭く
汚れを落とそうと力を入れて強くこすると、肌に細かな傷がつきます。その傷に尿や便の刺激物質が触れると炎症が広がり、びらんが起こりやすくなります。
(3) 1日1回は、お湯を使って洗う
肌はpH4.5~6の弱酸性に保って細菌から守られています。おしりふきは便利ですが、アルコールや香料など成分が肌には刺激となることがあります。おしりふきを選ぶ際は「無香料」「アルコールフリー」「赤ちゃん用」などの表示があるものを選ぶと安心です。
普段は肌にあったおしりふきを使い、1日1回はお湯を使うなど、状況に応じて使い分けましょう。
(4) おむつ交換ごとに、保湿する
高齢者の肌は水分を保つ力が低下し、尿や便の刺激に弱くなります。保湿剤で肌の表面に保護膜をつくると刺激が直接触れにくくなり、赤みやびらんの予防につながります。
肌トラブルが起きてから回復するまでには時間がかかるため、症状が出る前から予防的に保湿しておくことが大切です。おむつ交換ごとに保湿する習慣をつけましょう。
ここでは、介護の現場や家庭で使われることの多い、低刺激で無香料の保湿剤の例を紹介します。
国際的なガイドラインでは、おむつ使用で起こる失禁関連皮膚炎の標準ケアとして、「清潔を保つ→保湿する→バリアで守る」という3つのステップが推奨されています。1)~4)の基本的なケアを丁寧に続けることが、肌トラブルを防ぐ一番の近道になります。
2. ニオイの原因はどこにある?~家庭でのニオイ対策のポイント~
自宅で介護していると、生活空間とケアの場所が同じなのでニオイが気になります。まずは、ニオイがどこから生まれているのかを知ることが、対策の第一歩です。
1) ニオイの原因は
おむつのニオイの主な原因は、尿のアンモニア・便の細菌による分解臭・換気不足の3つです。
アンモニアは揮発性が高く、時間が経つほど強いニオイを発します。また、便に含まれる細菌は空気中で分解されて特有のニオイを生みます。さらに、換気が不十分だとこれらのニオイが部屋にこもって広がってしまいます。
2) 自宅ですぐできる対策
(1) 新聞紙で包む
新聞を購読されている家庭も少なくなっているので、なかなか難しいかもしれませんが、新聞紙は湿気を吸収し、ニオイ成分を吸着する性質があります。新聞紙で包んでから捨てると、ニオイ漏れを抑えます。
(2) 防臭袋を使う
最近は、防臭袋が100円ショップでも購入できます。防臭袋はニオイを通しにくいポリプロピレンという素材で作られおり、使用済みのおむつのニオイ対策に効果があります。
おむつ交換を済ませたら、(新聞紙があれば包んで)すぐに袋へ入れ、袋の中の空気をしっかり抜いて密閉します。その上で、蓋つきのゴミ箱に入れるとニオイ漏れが抑えられます。また、ゴミ箱は生活空間から少し離れた換気のよい場所に置くと、ニオイがこもりにくくなります。
なお、おむつを捨てる袋の中に消臭スプレーを吹きかける方法は、実はあまりおすすめできません。スプレーの香りとおむつのニオイが混ざり合い、かえって不快なニオイになることがあります。ニオイ対策は香りでごまかすよりも、「密閉する・空気を抜く・早めに捨てる」方が効果的です。
(3) おむつ交換の後は、5~10分換気する
おむつ交換の後の部屋には尿臭や便臭が残りやすいため、5~10分の換気が効果的です。ただ窓を開けるのではなく、空気の通り道を意識すると効率的にニオイが抜けます。冬場は窓を長時間開けると室温が下がるので、体を冷やさないよう保温した上で短時間の換気を行いましょう。送風機やニオイ除去機能付き空気清浄機を利用することもよいでしょう。
(4) 衣服が汚れたときは、こまめに取り換える
尿や便がおむつから漏れて衣類や寝具についたままにしておくと、そこからニオイが広がります。汚れを見つけたら早めに取り換え、清潔な状態を保ちましょう。
3. こんな時どうする?~場面別の工夫とアドバイス~
高齢者の皮膚は薄く乾燥しやすいため、少しの刺激やムレでも傷ついてしまいます。ここでは、肌トラブルをできるだけ防ぐために、よくある場面ごとの具体的な工夫を紹介します。
1) 長時間尿や便から肌を守る夜のケア
尿や便が長時間触れ続けると、赤みやびらんが起きやすくなります。特に夜は交換の間隔があくため、注意が必要です。就寝前に清潔にしたあと保湿を行い、肌表面に薄い保護膜をつくることで刺激を受けにくくなります。
また、夜間用の吸収量が多いおむつやパッドを選ぶことで、ムレを減らし、肌トラブルの予防につながります。
2) 同じ姿勢で起こりやすいムレから肌を守るケア
同じ姿勢が続くと、おむつ内に湿気がこもり、皮膚がふやけて傷つきやすくなります。体の向きを変えることが難しい場合でも、クッションやタオルを使って、体と布団の間に小さなすき間を作るだけで空気が通りやすくなり、ムレを軽減できます。このような工夫でも、ムレによる肌トラブルの予防に役立ちます。
4. まとめ
・高齢者の肌は乾燥しやすく刺激に弱いため、尿や便、摩擦、ムレで赤みが起こりやすくなります。清潔・保湿・通気の3つを意識した日常ケアが肌トラブルを防ぐ基本となります。
・ニオイはアンモニア・細菌・換気不足が主な原因です。防臭袋の活用や換気の工夫など、家庭でもできる対策を組み合わせることで、ニオイは大きく抑えられます。
・長時間のムレや同じ姿勢での湿気は肌トラブルを招きやすいため、状況に合わせた工夫が肌を守ります。日々の積み重ねが肌トラブルを減らし、快適な介護環境づくりにつながります。
この記事を書いた人
ヤマダ カオリ
〈プロフィール〉
親に勧められ、自分が希望する心理学への道をあきらめ、看護学校に入学し、病院に就職する。周りの同期のように看護が楽しいと感じられず、私のしたいこととは違うと思い続け、「看護師は向いていない」と悩みながら3年間 病院で勤務後、退職する。事務職に転職しようとパソコンや簿記を学ぶが、25歳では事務職への転職は難しく、生活のために看護師に復帰する。
復帰後はマンネリ化した機能別業務に、再度「看護師は向いていない」と感じる日々が続いていた頃、関連病院で病床数増床のため看護師を募集していることを知り、心機一転すれば看護の楽しさがわかるのではと思い、異動を希望し、上京する。上京した病院で、自宅で最期を迎えたいと希望する患者や家族への退院指導の難しさと充実感を知り、新人教育担当として新人看護師が日々成長していく姿に励まされ、5S活動やQCサークル活動を通じて業務改善に手ごたえを感じるなど、看護師を続けたいと思えるようになった。それからは、自分の興味の赴くままに学びを深め、特に認知症に関する知識や技術を身につけ、「その人の行動の意味することは何か、生活歴を通して気づく看護の楽しさ」を伝えたいと思うようになった。
現在は、「看護が楽しい」と感じる仲間を増やしたくて、看護学校で看護教員をしている。
〈経歴〉
看護師経験 32年(内分泌代謝・循環器内科病棟、外科混合病棟、高齢者施設で勤務)
看護教員養成研修 修了
認定看護師教育課程(認知症看護) 修了
医療安全管理者養成研修 修了
認定看護管理者制度 ファーストレベル・セカンドレベル教育課程 修了
〈講座〉
認知症ケアに関する講座 多数
未来をつくるkaigoカフェ 「つづけるカフェ」隔月開催(現在休止中)