気温や湿度、気圧変動などの天候の変化によって生じる気象病は、身体のだるさ、頭痛、めまい、肩こりなど多様な症状があり、その程度も個人によってさまざまです。気象病は自律神経と深い関わりがあります。気象病と上手に付き合うために、改めて自律神経について考えてみましょう。
この記事の目次
1.自律神経って何?
神経は大きく中枢神経と末梢神経に分けられます。
中枢神経は、脳と脊髄からなり、身体の「司令塔」です。
次に述べる末梢神経からの情報を受け取り、全身へ指令を出します。
末梢神経には体性神経(意志で動かす神経)と自律神経(無意識に働く神経)があります。
体性神経には感覚神経と運動神経があり、感覚神経は、熱い・痛いなどの感覚を脳に伝え、運動神経は手足を動かすなど、意志を行動につなげます。
一方、自律神経は意志に関係なく24時間働き続ける神経で、車で例えるなら「自動運転システム」です。
内臓に分布し、呼吸・循環・消化・排泄など、生命維持に欠かせない機能を支えています。
自律神経には、交感神経(活動モード=アクセル)と副交感神経(休息モード=ブレーキ)があります。
活動時やストレス時には交感神経が働き、アドレナリンなどが分泌されます。
休息時には副交感神経が働き、アセチルコリンが分泌され身体のリラックスを促します。
交感神経優位では瞳孔が開き排尿・排便は抑制されます。
副交感神経優位では瞳孔が縮小し、排尿・排便が促進されます。
このバランスが健康維持の鍵です。
交感神経と副交感神経が身体に及ぼす作用は以下の図の通りです。
2.気象病との関係
自律神経は、無意識のうちに日々の活動や環境に合わせて身体を整えてくれています。
環境要因のひとつが気象で、気温・気圧・湿度が影響します。
①気温
気温が上がると、自律神経は身体の体温を一定に保つために、皮膚の血管を広げ血液量を増やして体内の熱を発散し、汗を出して体温を下げます。
寒いと血管を収縮させて手足の熱を逃がさないようにし、筋肉を震わせて体温を上げます。寒暖差が大きいと自律神経に負担がかかり、「寒暖差疲労」を起こします。
②気圧
気圧変化は内耳が感知します。
前線の通過や台風で気圧が下がると、外からの圧力が低下し血管が広がるため周りの神経を圧迫して痛み(頭痛)が出やすくなります。
気圧低下に自律神経が対応できないと、頭痛、肩こり、めまいなどの症状が出現します。
③湿度
夏は湿度が高いため汗が蒸発しにくく、体温調節がうまくできません。
体内には余分な水分が貯まりやすくなり、胃腸機能が低下することもあります。
冬になると乾燥するため、血管を収縮させ体の表面から水分が逃げないように働きます。
同じ環境が長く続くと、交感神経と副交感神経のバランスが崩れます。
このように自律神経を介して、疲労や不調が表面化するのが気象病です。
3.自律神経を整える暮らし
自律神経を整えるために、規則正しい生活習慣が重要です。
食事、運動、休息と睡眠、姿勢について順に説明します。
①食事
【何を食べる?】
腸は「第2の脳」とも言われるように、食事で腸が整うと脳(自律神経)も整います。
自律神経の安定には、ビタミン・ミネラル・タンパク質をバランスよく摂りましょう。
ビタミン類:神経の修復や脳のサポート、ストレス対抗ホルモンの合成などを担う身体の「潤滑油」です。
ミネラル: 神経を安定させ、身体の水分量を調節します。
大豆製品・乳製品・卵:精神を安定させる「セロトニン」の原料となるトリプトファンが豊富で、安眠にも効果的です。
嗜好品:アルコールは、睡眠の質を下げるため、嗜む程度にしましょう。
【どのように食べる?】
朝食で体内時計をリセットし、自律神経のスイッチを入れましょう。
腹八分目と、30回以上噛む「フレッチャーイズム」を意識することで副交感神経が働き消化がスムーズになります。
満腹中枢を刺激してダイエットにも良いです。
血糖の急上昇(血糖スパイク)を防ぐため、野菜 → 魚・肉 → 糖質(ご飯・パン)の順に食べるのが理想的です。
間食は
甘いものよりナッツや小魚がオススメです。
冷たい飲み物は内臓を冷やし自律神経を乱すため、常温や温かいものにしましょう。
②運動
定期的なウォーキング、ヨガ、ストレッチなどの有酸素運動は、交感神経と副交感神経の切り替えをスムーズにし、調整機能を高めます。
心臓や肺の動きを強化するとともに血行改善による冷え性改善や、ストレスホルモン「コルチゾール」を減らし、幸福ホルモン「セロトニン」の分泌を促すなど、心身へのメリットも多大です。
朝は布団の中で大きく「伸び」をして、活動モードのスイッチを入れます。
昼は階段利用や、立ち上がり時の「踵上げ10回」がおすすめです。ふくらはぎを鍛えると血流が良くなります。
夜は一駅歩いてリフレッシュしましょう。
無理なく日常に組み込むことが続けるコツです。運動後の深呼吸もお忘れなく。
③休息・睡眠
自律神経が乱れると睡眠の質が悪くなり、寝ても疲れがとれません。
入浴は、38〜40℃のぬるめのお湯にゆっくり浸かり、就寝2時間前までに済ませます。
就寝前は、脳を覚醒させる作用のあるブルーライトを発するスマホ・PCの使用を避けましょう。
暖色系の照明、読書やアロマ(ラベンダーやオレンジなど)はリラックスを促します。
布団に入ったら「ゆっくり吸ってゆっくり吐く」呼吸で副交感神経を高めましょう。
朝起きたら朝日を浴びることで体内時計がリセットできます。
時には休日に予定を入れない日を作りましょう。
自然の中で「何もしない時間」を過ごして脳を休ませることも大切です。
④姿勢
悪い姿勢は自律神経の大敵です。
猫背は呼吸を浅くし、背骨の歪みは自律神経の働きに影響を与えることがあります。
長時間のデスクワークやスマホ操作による悪い姿勢は、血行不良を招きさらなる歪みを作ります。
立位や座る際は、骨盤を立てる意識を持ち定期的にストレッチをしましょう。
足組みは骨盤の歪みにつながるため、なるべく両足を床につけるのが理想です。
作業する際はPCの高さや椅子の位置を見直せば、効率も上がるはずです。
また、歯のかみ合わせや食いしばりは、首・肩の緊張を招き、姿勢を崩す一因になります。
正しい姿勢は、深い呼吸を生み、自律神経を整えるための「器」づくりです。
4.季節ごとの気象病対策
日本には四季があり、居住地によっても気候は異なります。
季節ごとの特徴を知ることで先回りした対策が可能になります。
春:寒暖差と環境変化
寒暖差が激しく不調が出やすい季節です。気温の上昇に備え、すこしずつ身体を動かして「汗をかく練習」をしましょう。これは梅雨を上手に乗り切る力にもなります。
新生活のストレスを溜めないよう、リラックスする時間を設けましょう。
夏(梅雨): 湿気・冷房・台風
高湿度と室内外の温度差が身体に負担をかけます。
衣類などで調整し、しっかり水分をとって熱中症や脱水に備えましょう。
台風による気圧変動で頭痛などを起こしやすくなります。
つらい症状を我慢せず医師に相談して漢方薬などを活用するのもよいでしょう。
秋:秋バテと急な冷え込み
夏の疲れが出やすい時期です。
朝晩の冷え込みが厳しくなるため日中との気温差に備え、羽織るものでこまめに体温調節を行いましょう。
冬:血行不良とヒートショック
寒さで身体が強張り、血行が悪くなりやすい時期です。
ストレッチで血行を促しましょう。
入浴や夜間のトイレなど、室内外の温度差にも注意が必要です。
詳しくは【暑さ・寒さ・湿度が体に影響を与える「気象病」】も併せてお読み下さい。
まとめ
私たちの身体は常に気象の影響を受けています。天候を変えることはできませんが、自律神経を整えることで、自分自身のコンディションをより良く整えることは可能です。毎日を健やかに暮らすために、自律神経が健全であることは欠かせません。今回ご紹介した日々の小さな工夫を積み重ね、変化に負けない「しなやかな自律神経」を育んでいきましょう。
参考・引用資料
頭痛―る
日本気象協会
気象病ハンドブック:久手堅 司,誠文堂新光社,2022
この記事を書いた人
看護師:青木 容子
〈プロフィール〉
看護師経験30年
(病院勤務通算8年、身体障害者施設3年、訪問看護15年、そのほか新生児訪問指導など)
現在は特別養護老人ホームなどで勤務する傍らCANNUS新長田を運営中。
紙屋克子氏らから、NICD:意識障害・寝たきり(廃用症候群)患者への生活行動回復看護を、黒岩恭子氏からは黒岩メソッドを学び、実践するとともにそれらの普及を目指している。