目次

≪看護師が解説≫ 知らなきゃ怖い!帯状疱疹の基本と原因を徹底解説

突然皮膚に激しい痛みと、帯状に現れる発疹や水ぶくれ。水痘 (みずぼうそう)に罹ったことがある人は発症する可能性がある「帯状疱疹(たいじょうほうしん)」。高齢者や免疫力が低下している人は発症するリスクが高く、早期発見と対応が大切な病気ですが、名前は聞いたことはあっても、どのような病気なのかご存じの方は少ないかもしれません。

この記事では、帯状疱疹はどのような病気なのか、なぜ起こるのか、どのような人が発症しやすいのか、わかりやすく解説したいと思います。

この記事の目次

1. 帯状疱疹の特徴

帯状疱疹は、水痘を引き起こすウイルスが原因で発症する皮膚の病気です。

子どもの頃に水痘を発症した後、ウイルスは神経の中に隠れて休んでいる状態になります。普段は免疫システムが守ってくれているため、ウイルスは静かにしています。しかし、免疫力が弱まったり、体調が崩れたりすると、静かに隠れていたウイルスが目を覚まし、活発に動き出します。これを再活性化といいます。目を覚ましたウイルスは神経に沿って皮膚に現れ、発疹を引き起こします。主に成人や高齢者に見られます。

帯状疱疹の最も特徴的な症状は、痛みと共に皮膚に現れる帯状の発疹です。帯状に症状が現れるため、「帯状疱疹」という名前がついています。発疹は体の片側、通常は胸部や腹部、顔面、背中などの神経に沿って現れます。最初に感じるのは痛みやかゆみ、そして数日後に赤い発疹や水ぶくれが現れます。最終的にはかさぶたができて治癒しますが、痛みが長期間残ることがあり、これが「帯状疱疹後神経痛」として知られる後遺症につながることがあります。

発症から治癒までの期間は一般的に2〜4週間で、発疹の治癒後も痛みが続く場合があります。特に免疫力が低下している高齢者や他の病気を持つ人には、この後遺症が深刻化することが多いため、早期の治療が重要です。

2. 帯状疱疹を引き起こすウイルス

水痘や帯状疱疹を引き起こすウイルスは、「水痘帯状疱疹ウイルス」と呼ばれるウイルスです。

1) 水痘帯状疱疹ウイルスとは?

水痘帯状疱疹ウイルスは、ヘルペスウイルス科に属するウイルスです。通常、水痘の症状が治まったあとも、背骨に近い神経に隠れて長期間眠っている状態で、再び活性化しない限り症状を引き起こすことはありません。日本人では15歳以上の方の9割以上がこの水痘帯状疱疹ウイルスの抗体を持っていて、ウイルスが体内に入ったことがあると考えられています。

2) 帯状疱疹はうつるの?

 帯状疱疹の発疹は徐々に水ぶくれに変化していきます。この水ぶくれの中には、ウイルスがたくさん詰まっています。そのため、発疹や水ぶくれの場所を直接触るとうつる(感染する)可能性が十分にあります。

水痘は通常一度かかると免疫を形成しているため再び罹ることはありません。しかし、水痘に罹ったことがない子どもや免疫力が低下している人(特に妊婦や新生児)が帯状疱疹の発疹や水ぶくれに触れると、水痘に罹るリスクが高くなります。

 感染しやすい期間は、「発疹や水ぶくれがかさぶたになるまで」といわれています。水痘に罹ったことのない人や免疫力が低下している人との接触は避けるようにしましょう。万が一、触ってしまった場合はしっかりと手洗いをすることで、感染リスクを減らすことができます。

3. 免疫力低下の影響

帯状疱疹の発症は免疫力の低下と密接に関連しています。

繰り返し帯状疱疹にかかる方は少ないものの、約6%の方は繰り返し帯状疱疹にかかるといわれています。一度帯状疱疹にかかったから大丈夫というわけではありません。日々の生活を健康的に送り、免疫力を保つことが大切な病気です。

1) 免疫システムの役割

免疫システムには、ウイルスや細菌などの異物を認識し、排除する働きがあります。特に、T細胞やB細胞と呼ばれる免疫細胞が中心的な役割を担い、体内に隠れているウイルスを常に監視しています。この監視により、水痘帯状疱疹ウイルスが神経に隠れていても、免疫システムが活発に機能していれば、再活性化を防ぐことができます。

2) 免疫力低下の原因

免疫力はさまざまな要因によって低下します。年齢やストレス、栄養不足、病気(特にがんやHIVなど)、免疫抑制薬の使用などがその主な原因です。これらの原因によって帯状疱疹の発症リスクが高まり、体内で静かに隠れていた水痘帯状疱疹ウイルスが再活性化し、帯状疱疹を引き起こすことがあるのです。

(1) 年齢

帯状疱疹は、特に60歳以上の高齢者に多く見られる病気です。年齢を重ねると免疫力が低下し、体内に潜伏している水痘帯状疱疹ウイルスが再活性化しやすくなるため、帯状疱疹のリスクが高まります。

(2) 免疫抑制状態

免疫抑制状態にある人(例えば、がんの治療中、HIV感染者、臓器移植後などで免疫抑制薬を服用している人など)は、帯状疱疹の発症リスクが高いです。免疫抑制状態では、体内で潜伏しているウイルスを抑える力が弱くなるため、再活性化しやすくなります。

(3) ストレスと生活習慣

ストレスや過労、睡眠不足などの生活習慣も免疫力を低下させ、帯状疱疹のリスクを高めます。特に長期間にわたるストレスや不規則な生活が続くと、免疫システムが弱まり、体内のウイルスが再活性化する可能性が増加します。

(4) その他の病気や薬物の使用

糖尿病や心臓病、喘息などの慢性疾患がある場合、またはステロイドや免疫抑制薬を使用している場合も、免疫力が低下し、帯状疱疹のリスクが高まります。

まとめ

・帯状疱疹は、水痘(みずぼうそう)と同じ水痘帯状疱疹ウイルスが原因で起こります。

・免疫力が低下することにより、体内に隠れていたウイルスが再活性化し、痛みや発疹を引き起こす帯状疱疹が発症します。

・高齢者や免疫抑制状態にある人は、帯状疱疹のリスクが高いといわれています。

帯状疱疹は早期に症状に気づき、適切な対応を取ることが大切です。また、免疫力を保つために、健康的な生活習慣を心がけることが予防につながります。

 次回は、帯状疱疹の症状についてお伝えいたします。

この記事を書いた人

看護師:山田かおり 経歴〉 看護師経験 32年(内分泌代謝・循環器内科病棟、外科混合病棟、高齢者施設で勤務) 看護教員養成研修 修了  認定看護師教育課程(認知症看護) 修了  医療安全管理者養成研修 修了  認定看護管理者制度 ファーストレベル・セカンドレベル教育課程 修了 〈講座〉  認知症ケアに関する講座 多数  未来をつくるkaigoカフェ 「つづけるカフェ」隔月開催(現在休止中)

ヤマダ カオリ

〈プロフィール〉
親に勧められ、自分が希望する心理学への道をあきらめ、看護学校に入学し、病院に就職する。周りの同期のように看護が楽しいと感じられず、私のしたいこととは違うと思い続け、「看護師は向いていない」と悩みながら3年間 病院で勤務後、退職する。事務職に転職しようとパソコンや簿記を学ぶが、25歳では事務職への転職は難しく、生活のために看護師に復帰する。

復帰後はマンネリ化した機能別業務に、再度「看護師は向いていない」と感じる日々が続いていた頃、関連病院で病床数増床のため看護師を募集していることを知り、心機一転すれば看護の楽しさがわかるのではと思い、異動を希望し、上京する。上京した病院で、自宅で最期を迎えたいと希望する患者や家族への退院指導の難しさと充実感を知り、新人教育担当として新人看護師が日々成長していく姿に励まされ、5S活動やQCサークル活動を通じて業務改善に手ごたえを感じるなど、看護師を続けたいと思えるようになった。それからは、自分の興味の赴くままに学びを深め、特に認知症に関する知識や技術を身につけ、「その人の行動の意味することは何か、生活歴を通して気づく看護の楽しさ」を伝えたいと思うようになった。
現在は、「看護が楽しい」と感じる仲間を増やしたくて、看護学校で看護教員をしている。

〈経歴〉
看護師経験 32年(内分泌代謝・循環器内科病棟、外科混合病棟、高齢者施設で勤務)
看護教員養成研修 修了
認定看護師教育課程(認知症看護) 修了
医療安全管理者養成研修 修了
認定看護管理者制度 ファーストレベル・セカンドレベル教育課程 修了

〈講座〉
認知症ケアに関する講座 多数
未来をつくるkaigoカフェ 「つづけるカフェ」隔月開催(現在休止中)

よろしければシェアをお願いします
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
この記事の目次