人気司法書士の村山澄江先生が実際に対応したトラブルケースをモデルに、解決法のヒントをお届けします。
※実際に登場する人物・所属・家族関係などはすべて架空のものです。
「判断能力の低下した祖母の成年後見人を、司法書士に依頼したいんです」
孫が急激に判断能力の低下した祖母を心配して…
これは、88歳の女性の孫である20代男性Iさんからの依頼でした。
「祖母は一人暮らしで、アパート経営をするほど元気で暮らしていたのですが、昨年の夏に家の中で転倒し、ぐったりしているところを地域の見守りをしていたケアマネージャーが発見し、緊急搬送されて入院したんです。
入院後、急激に判断能力が低下し、孫である私の顔もよくわからない状態になってしまって…」
祖母は財産もある程度持ち、管理していたアパートは6世帯の規模。ついこの間まで元気に生活をしていたのにも関わらず、入院したことで急激に判断能力が低下してしまい、財産管理もアパート管理も困難な状態になってしまったそうです。
司法書士が成年後見人に就任
精神上の障がい、例えば、知的障がいや精神障がい、認知症などによって判断能力が欠けている人については、成年後見人を申立てることができます。
成年後見人は、本人の利益を考えながら、本人の代理で貯金通帳の保管や管理、不動産の維持・管理契約などの法律行為を行います。また、不利益な契約を結ばされるなどした際には、本人に代わってその契約を取り消すこともできます。
今回のケースでは、孫のIさんの仕事が激務で後見人業務をする余裕がなかったため、司法書士を候補者にして、成年後見人を家庭裁判所へ申立て、司法書士が成年後見人に就任しました。
成年後見人となった今、Iさんの祖母の財産管理とアパート経営をできるかぎり本人の意思を確認しながら任務を遂行しています。
祖母の心配をしていたIさんも、一安心していたようでした。
今回のケースのように、いつ家族の判断能力が著しく低下したり、欠けたりするかわかりません。不動産の管理が絡む場合は、成年後見人を立てないと、管理や売却ができない可能性が高いです。
平成30年の最高裁判所事務総局家庭局の統計によれば、成年後見人として親族が選任されたケースは約23.2%で、司法書士や弁護士などの親族以外は約76.8%でした。※
もし家族にこのようなトラブルが起きた際には、成年後見人を申し立てるしかないのですが、「知らない人に財産を管理されるのは嫌」という場合は、“元気なうちに”できる対策、例えば、任意後見契約や家族信託契約などを検討しましょう。
(出典:最高裁判所事務総局家庭局 成年後見関係事件の概況 ―平成30年1月~12月-)
成年後見人について家庭裁判所への申し出手続きは、ご家族など特段の資格がなくても可能です。
ただ、書類の取り揃えや記述などそれなりにお手間、お時間がかかることもあり、手続きの代行を承る場合もございます。(実務の依頼は、お客様ご了承の上で有料となります)
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解説してくれたのは司法書士 村山澄江先生
村山澄江(むらやますみえ) 先生 プロフィール
民事信託・成年後見の専門家、司法書士
公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート会員
簡裁訴訟代理関係業務認定会員
1979年名古屋生まれ。早稲田大学卒業。
2003年司法書士試験合格。
成年後見の相談者数300件以上。
民事信託と成年後見の専門家として全国でセミナー等行っている。