災害が起きたとき、「食べ物は足りるだろうか」「水は確保できるだろうか」といったことが思い浮かぶ一方で、排泄のことは後回しにされがちです。
しかし、日常的におむつを使用している方がいる場合、トイレが使えない、おむつを替えるプライバシーが保たれない状況は「少し不便」という言葉では片づけられません。我慢が続いたり、交換のタイミングを逃したりすることで、本人だけではなく、介助する方の負担も増えてしまいます。
この記事では、災害時に起こりやすいおむつの困りごとを整理したうえで、今の生活の延長でできる準備のポイントをお伝えします。
この記事の目次
1. 災害時におむつを使っている人の困りごと
災害時は命に関わることが優先されるため、排泄の問題は後回しにされやすく、困っていても言い出すことをためらう人が少なくありません。周囲が切迫した状況にあるほど、「こんなことで声を上げてよいのだろうか」と感じてしまうこともあります。
しかし、紙パンツやおむつを日常的に使っている人にとって、排泄の困りごとは生活を続けられるかどうかに直結する問題です。
ここでは、災害時におむつを使用している人がどのような困りごとが起きやすいか、1)~4)に分けて整理します。
1) おむつ関連の物品が手に入らない
食料や飲料水は優先的に配布される一方で、介護用品や排泄用品はなかなか届かない傾向にあります。そして、もし届いたとしても、「普段使用しているサイズのおむつが届かなくて、普段より漏れて大変だった」、「届いた数が少なくて必要な人に行き渡らなくて、おむつ交換の回数を減らしたら、かぶれて大変だった」という話を聞いたことがあります。
2) 交換できる環境が整っていない
避難所や在宅避難では、プライバシーが確保できる場所や十分な照明がなく、おむつ交換がしづらいことがあります。
3) 排泄後の清潔保持が難しい
災害時は水や衛生用品が限られます。おむつ交換時におしり清潔が保てなかったり、手洗いが十分できない状態が続いたりすると、皮膚のかぶれや感染症のリスクが高まります。
4) 使用済みおむつの処理に困る
使用済みおむつの「捨てる場所がない」「回収されない」「保管方法に困る」といった問題は、衛生面だけではなく、臭気が漂うことで生活全体のストレスにつながります。
これらの困りごとが重なると、本人だけではなく、介助する方にとっても、からだやこころに無理を抱えやすくなります。その結果、体調を崩しやすくなることもあります。
2. できるだけ困らないために、今準備しておきたいこと
災害時の備えについて、内閣府などの防災資料には「災害直後は支援がすぐに届かないことを前提に、最低3日分の生活を自力で維持できる備えが必要」と示されています。おむつに関しても同様に、最低3日分の備えが必要です。
ただし、特別な防災用品を新たにそろえるのではなく、今使い慣れているものを基準に準備することが現実的です。「ローリングストック」という日常備蓄は、この考え方に合った備え方といえます。
ここでは、災害時におむつ交換で困らないために、今できる範囲で準備しておきたいものを挙げていきます。
1) おむつ交換に必要なもの(3日分の目安)
1回のおむつ交換で「おむつ交換+清潔にする(着替え)+捨てる」ができるように準備しておくと、交換がしやくなります。まずは今使っているものが3日分揃っているかを確認してみましょう。
2) 清潔を保つために、あると便利なもの
① 皮膚保護用クリーム・白色ワセリン
災害時は、交換したくてもできないことが多く、皮膚トラブルを起こりやすくなります。撥水効果のある皮膚保護用クリームや白色ワセリンを準備しておくと、おむつかぶれの予防に役立ちます。
② アルコール手指消毒剤
災害時は、使える水が限られることが多く、手洗いが十分にできなくなります。おむつ交換の前後に手指消毒ができるよう、アルコール手指消毒剤を準備しておくと安心です。
3) 使用済みおむつを安全に扱うためのもの
① 仮置き用の蓋つき容器または大きめのゴミ袋
使用済みおむつはすぐに捨てられないことが多く、ニオイや衛生面の問題を防ぐことが必要です。
蓋つき容器や大きめのゴミ袋の口をしっかりしばることでニオイ対策ができ、おむつ交換をためらわずに行いやすくなります。
また、使用済みおむつの置き場を決めておくことも大切です。
② 新聞紙または吸水シート
使用済みおむつを包んだり、①の蓋つき容器や大きめのゴミ袋の底に敷いておいたりすることで、水分やニオイを抑えることができます。
4) おむつ交換をしやすくするもの
① レジャーシートまたは防水シート
床や布団などを汚さずにおむつ交換を行うために役立ちます。また、限られたスペースでも、清潔な交換場所を確保しやすくなります。
② ヘッドライト
夜間や停電時でも両手を空けて作業できるため、おむつ交換がしやすくなります。懐中電灯よりも安定して照らせる利点があります。
3. おむつが足りないときの代用方法
おむつがない、または足りなくなった場合でも、身近にあるものを使って一時的に対応する方法を知っておくと数日しのぐことが可能です。ここでは応急的な代用方法を紹介します(あくまで応急対応であり、おむつが手に入り次第、通常のおむつに戻すことを前提にしています)。
1) 用意するもの
・レジ袋 大きめ1枚
・タオル 2~4枚(尿量に応じて調整)
・下着 2枚(固定用)
2) 手順
3) 注意事項
・濡れたらすぐに交換が原則です。おむつよりも交換回数は多くなります。
・蒸れや皮膚トラブルを防ぐため、交換時はおしり拭きで清拭を行い、皮膚保護材を使用します。
4. 災害時、困りごとを深刻化させないために
ここまで、災害時のおむつ交換に関する備えや対応についてお伝えしました。災害時はどうしても「仕方がない」「今は我慢するしかない」と思ってしまいがちですが、限られた環境の中でもできることを行いながら生活を続けていくことが大切になります。最後に、災害時の排泄を考える上で大切にしておきたい視点を整理します。
1) おむつや排泄用品は、早めに具体的に支援要請する
おむつや尿取りパッド、清潔用品は、そのうち届くだろうと待ち続けてもなかなか届きません。民生委員や避難所を運営している方、巡回している行政職員や救護班などに、何度もおむつが必要なことを伝えてください。その際、ただ「おむつが必要です」と伝えるのではなく、「大人用の紙パンツかおむつ型か、サイズ、1日の使用枚数」まで伝えると支援につながりやすくなります。
2) 水分摂取を控えない
「トイレが大変」「迷惑をかけたくない」と思って、水分を控えることは危険です。水分を控えることで、脱水、尿路感染、血栓、意識障害などにつながる恐れがあるため、物資が限られている中でも少量ずつ、こまめに摂取することを意識してください。
3) 介助者だけが抱え込まない
災害時は、「困っていることを言えない」こと自体が大きなリスクになります。介助する方自身も被災者で心身ともに余裕がなくなっています。「少し手を借りたい」「一時的に見てほしい」と伝えることは決してわがままではありません。家族や周囲に伝えることも大切です。
5. まとめ
・災害時の備えは今使っているおむつや関連用品を基準に、3日分を目安に整えるとよいでしょう。
・おむつが不足した場合も、身近なものを使った応急的な対応を知ることで数日間しのぐことができます。
・介助者は困りごとを一人で抱え込まないで、早めに周囲や支援先に伝えることが大切です。
この記事を書いた人
ヤマダ カオリ
〈プロフィール〉
親に勧められ、自分が希望する心理学への道をあきらめ、看護学校に入学し、病院に就職する。周りの同期のように看護が楽しいと感じられず、私のしたいこととは違うと思い続け、「看護師は向いていない」と悩みながら3年間 病院で勤務後、退職する。事務職に転職しようとパソコンや簿記を学ぶが、25歳では事務職への転職は難しく、生活のために看護師に復帰する。
復帰後はマンネリ化した機能別業務に、再度「看護師は向いていない」と感じる日々が続いていた頃、関連病院で病床数増床のため看護師を募集していることを知り、心機一転すれば看護の楽しさがわかるのではと思い、異動を希望し、上京する。上京した病院で、自宅で最期を迎えたいと希望する患者や家族への退院指導の難しさと充実感を知り、新人教育担当として新人看護師が日々成長していく姿に励まされ、5S活動やQCサークル活動を通じて業務改善に手ごたえを感じるなど、看護師を続けたいと思えるようになった。それからは、自分の興味の赴くままに学びを深め、特に認知症に関する知識や技術を身につけ、「その人の行動の意味することは何か、生活歴を通して気づく看護の楽しさ」を伝えたいと思うようになった。
現在は、「看護が楽しい」と感じる仲間を増やしたくて、看護学校で看護教員をしている。
〈経歴〉
看護師経験 32年(内分泌代謝・循環器内科病棟、外科混合病棟、高齢者施設で勤務)
看護教員養成研修 修了
認定看護師教育課程(認知症看護) 修了
医療安全管理者養成研修 修了
認定看護管理者制度 ファーストレベル・セカンドレベル教育課程 修了
〈講座〉
認知症ケアに関する講座 多数
未来をつくるkaigoカフェ 「つづけるカフェ」隔月開催(現在休止中)