新型コロナ感染症の流行は、インフルエンザをはじめとする他の感染症にも影響を与えてきました。
冬にかけて流行することが多かったインフルエンザですが、今では1年を通して感染が確認されることが多くなっています。
乳児の予防接種⑤では、インフルエンザと新型コロナ感染症についてお伝えします。
この記事の目次
1.インフルエンザについて
インフルエンザウイルスはA・B・C・Dと4つの型があります。
人に感染するのはA~C型で、主として流行するのはA型とB型です。
B型に比べA型の方が、強い症状が出ると言われています。
例年日本でのインフルエンザの流行開始は、12月下旬頃です。
1~3月にピークを迎え、4~5月に減少していくのが通常のパターンでした。
しかし、新型コロナ感染症が流行していた2020年~2021年にかけてのシーズンでは、人の行動が制限されたり個人の感染対策が徹底されていたため、大きな流行は認めませんでした。そのため、インフルエンザに対する免疫が低下していた2023年には、夏場でもインフルエンザの感染者が一定数あり、流行の開始も9月ごろと早まっていました。
(下の図の矢印の所です。)
潜伏期:1~4日
感染経路:飛沫感染、接触感染
症状:発熱、頭痛、全身のだるさ、筋肉や関節の痛み、のどの痛み、咳、鼻水など
インフルエンザは罹患しても、その多くは自然に回復します。
発症後48時間以内に抗インフルエンザ薬を飲むことで、発熱期間が短くなることが報告されています。
合併症には肺炎・気管支炎・脳症などがあります。
インフルエンザ脳症は流行状況により変動しますが、 年間の発症者数は100~300例です。
重篤な場合は、約15%に後遺症が残り、7~8%が死に至ると言われています。
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2.インフルエンザのワクチンについて
インフルエンザの予防接種は、任意接種(予防接種法に規定されておらず、個人の判断で接種するもの)になっています。
インフルエンザワクチンの効果は、接種2週間後から5ヶ月程度と言われています。
ワクチン接種によって、インフルエンザの感染を完全に予防することはできませんが、重症化や合併症の予防効果については証明されています。
インフルエンザのワクチンは、WHO(世界保健機関)の専門会議で、毎年次のシーズンのワクチンに用いる推奨株が選定されています。
ワクチンの有効期間が5ヶ月程度であることからも、インフルエンザの予防接種は毎年受ける必要があります。
接種回数は、6ヶ月以上13歳未満の子どもは2回接種が必要です。1回目接種から2~4週あけて2回目を接種します。4週間以上あいてしまっても2回目の接種は可能です。
副反応は、以下の通りです。
局所症状:注射部位の発赤、腫脹、疼痛
全身症状:発熱、寒気、頭痛、身体のだるさ、吐き気・嘔吐、食欲減退、関節痛・筋肉痛など
通常は2~3日で消失します。
また、極まれにショック、アナフィラキシー(全身性のアレルギー症状)、その他全身的な病気を引き起こすことがあります。
3.経鼻弱毒生インフルエンザワクチンについて
2023年3月、日本ではじめて点鼻タイプのインフルエンザワクチンが承認されました。
弱毒性生インフルエンザワクチンで「フルミスト点鼻薬」といい、使用開始は2024年9月からです。
鼻に噴霧されたインフルエンザワクチンが、鼻やのどで増殖し軽い感染状態を起こすことで、鼻咽頭局所と全身に免疫ができます。
既に実施されている米国では対象年齢が49歳以下となっていますが、注射によるワクチンと同等以上の効果が得られるのは小児であることが証明されています。
よって、日本での使用対象年齢は2歳から18歳まで(19歳未満)です。
接種回数は1回、左右の鼻に0.1mlを1噴霧します。
医師が必要と認めれば、他のワクチンとの同時接種も可能です。
鼻からワクチンを噴霧するだけなので、注射による身体的・精神的負担が大いに軽減されることが期待できます。
副反応は、鼻閉、鼻水、咽頭痛、鼻咽頭炎、発熱、頭痛、食欲減退、下痢、腹痛などがあります。
4.新型コロナウイルス感染症について
新型コロナウイルス感染症は、コロナウイルスに新しく加わった「重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2(SARS-CoV-2):新型コロナウイルス」による感染症です。
2020年1月に国内初の症例が確認された後、多数の変異株が確認されました。
2024年8月現在オミクロン株の1種、「KP.3」が主流になっています。
潜伏期:2~7日(現在の流行の主流であるオミクロン株)
感染経路:飛沫感染、接触感染
エアゾル感染(空気中に浮遊するウイルスを含むエアゾルを吸い込む)
症状:発熱、悪寒、咳、息切れ、呼吸困難、身体のだるさ、頭痛、味覚障害、嗅覚障害、
のどの痛み、鼻水・鼻づまり、吐き気・嘔吐、下痢など
新型コロナウイルスワクチンは、メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンです。ウイルスを構成するたんぱく質の遺伝情報をもとに、体内でたんぱく質を作り、そのたんぱく質に対する抗体が作られることにより免疫が獲得できます。
ワクチンの効果は、最近の流行の主流であるオミクロン株に対して、発症予防が2~3ヶ月、重症化予防については1年以上と報告されています。
流行株に合せたワクチンを追加接種することで、より予防効果が得られるとされてきました。
乳児と4歳までの幼児を対象としたワクチンは2022年10月に承認され、実施されてきました。定期接種は2024年3月で終了し、現在は任意接種となっています。
2024年8月現在、子どもの新型コロナワクチンに関する情報は発表されていません。
冬季にかけてインフルエンザ同様に流行が予想されます。
厚生労働省や各自治体からの案内などで情報収集してください。
ちなみに、インフルエンザワクチンと新型コロナウイルスワクチンは同時接種が可能です。
5.まとめ
これまで乳児の予防接種について、新しくなったワクチンなどを中心に5回シリーズでお伝えしてきました。
無数にあるといえる感染症の中で、予防接種によって防げる病気があります。
その効果と副反応についても十分理解した上で、大切な子どもの命を守るために予防接種を受けていただけたらと思います。
この記事が少しでも予防接種に関する情報収集の一助になれば幸いです。
厚生労働省新型コロナワクチンの有効性・安全性について
NIID 国立感染症研究所
日本小児科学会の「知っておきたいわくちん情報」
厚生労働省新型コロナワクチンQ&A
この記事を書いた人
看護師:青木 容子
〈プロフィール〉
看護師経験30年
(病院勤務通算8年、身体障害者施設3年、訪問看護15年、そのほか新生児訪問指導など)
現在は特別養護老人ホームなどで勤務する傍らCANNUS新長田を運営中。
紙屋克子氏らから、NICD:意識障害・寝たきり(廃用症候群)患者への生活行動回復看護を、黒岩恭子氏からは黒岩メソッドを学び、実践するとともにそれらの普及を目指している。
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