前回の記事
看護師がわかりやすく解説! 救急医療③緊急搬送時の必要物品と費用について
緊急時は誰もが慌てているために、冷静に物事を判断できなくなります。それが家族であれば、なおさら大慌てとなってしまいます。 しかし、救急車で病院に搬送されたとな…
緊急受診でご家族が搬送された時に医師や看護師は患者様やご家族に納得して治療に臨んでほしいと思っています。しかし、救急医療の現場は生命の危機が迫っている方が多く、休む間もなく対応していますので慌ただしく時間が流れていきます。
医師や看護師に聞きたいことがあっても、どのタイミングで話をしたら良いかわからず、後から「もっと聞いておけば良かった」「確認したいことがあったのに」と後悔することもあるかと思います。
不安な気持ちのまま治療を受けてしまうと、後から気になりさらに不安が強くなってしまいます。
わからないこと、確認したいことは遠慮せずに聞くほうが良いですが、何を質問して良いかわからない、うまく伝えられないという方は案外多いものです。
今回は限られた時間の中で医師や看護師とのコミュニケーションが円滑に図れ、安心して治療が受けられるコツをお伝えしたいと思います。
この記事の目次
1.病院に到着した後の流れ
救急車で搬送された際は救命救急専用の入り口から処置室に移動されます。
待機している医師がすぐに診察を始め、必要に応じて注射や点滴など、応急処置が行われます。その後は必要な検査のため移動になります。
家族は処置室には入らず待合室で待機することになりますが、医師が診断して検査が行われる前には、これからどのような目的でどのような検査をするのかを医師が説明します。
その後、注意事項が看護師によって説明される流れがほとんどです。
これはインフォームドコンセントと言われ、患者や家族に検査についての一連の行為を理解し、納得して検査を受けて頂くために必ず必要なことになります。
また、検査によっては同意書が必要となるため家族など、代理の方が書類に署名を依頼されることもあります。
検査中は待合室で待機することになりますが、この間、看護師や検査技師が行き来する場面を目にすると思います。
検査が終わると、患者様の状態を説明するために診察室に案内されますが、この時に、医師から検査の結果とそれに対する治療法をどうするかという話があります。
普段の受診に比べると短い時間ですが、これが緊急受診の特徴と言えるかも知れません。
患者様に再受診や入院の必要があれば改めて看護師から説明を受けることになります。
2.医師や看護師と話をするタイミング
上記の流れを踏まえると医師と話をする時は、検査をする前の説明時、検査が終了した後の説明時になります。この二つのタイミングに病状について確認したいこと、今後の経過で知りたいことなど話ができると思われます。
看護師も補足説明に関わり、患者や家族の代弁者の役割を担いますので、病状について確認したいこと、今後の経過で知りたいことはこの時に質問すると良いでしょう。
そうは言っても救急外来の特性としてゆっくりと話が出来ないのが現状です。
医師が患者や家族に説明をするのは以下のタイミングになるため、あらかじめ次の二つに分けてメモ帳やノートに書いておくと整理できます。
医師が患者や家族に説明をするタイミング
- 検査前に聞いておくこと、確認すること。
- 検査が終わった後に聞いておくこと、確認すること。
あらかじめ次の二つに分けてメモ帳やノートに書いておくと整理でき、誤解や混乱を防げると思います。
次の項ではさらに具体的にしましたので参考にしてください。
3.医師に確認しておくと良いこと
①検査前に聞いておくこと、確認すること
医師や看護師には状態や検査についての説明責任があります。
あらかじめ、検査についての目的や注意事項は説明されますが、検査の内容は専門的なことになるため理解しにくい場合があります。
さらに、医師の表情、口元がマスクで見えにくいなど、淡々と話を進める医師を目の前にすると、緊張が先立ちせっかく「ほかに何か聞きたいことはありますか?」と医師が聞いても、何を質問して良いか何を話して良いかがわからなくなってしまいます。
検査前質問例
- 検査はどれくらいの時間がかかるのか
- その検査に痛みはあるのか
- 検査中、起こり得る合併症や副作用、後遺症について
- 合併症や後遺症について対処法はあるのか
- 他に選択できる検査があるのか
これらは聞きにくい内容ではありますが、説明されていないのであれば安心のために確認しておいた方が良いです。
あらかじめメモやノートに書いておくと良いですね。
②検査が終わった時に聞いておくこと、確認すること
必要な検査が終わると、レントゲン画像やCT画像、血液検査の結果などが診察室に集められます。
医師はその検査結果をもとにして患者と家族に検査結果からわかる病状の説明をして診断名を伝えます。
検査をしても原因がわかりにくい場合や一過性の症状の場合でもカルテに記載するために診断名がつきます。
このあと、治療をどうするか入院するかなど選択するための質問等がなされます。
この医師からの説明の合間に質問や確認する時間はあるため、あらかじめ書いておいた内容を質問すれば、安心して話を聞くことができると思います。
医師の返答はメモしておくと良いですが、すぐに理解できない時は後から看護師にも質問できますので安心です。看護師は説明をしながらメモがとれているかを見ていますから焦らずに説明を聞きましょう。
検査後質問例
- 診断名は何か
- なぜ、そのような状態になったのか
- 治療についての欠点
- 他の治療法はあるのか
- 使用する薬剤の作用と副作用
- 治療期間はどれくらいか(入院になった場合おおよその期間)
今後の治療は予後を決める大切なことになりますので、納得がいくまで質問をして、説明を聞くことをお勧めします。
4.まとめ
緊急搬送された時は、いつもの主治医と違う場合がほとんどです。
不安な気持ちや緊張がともなう緊急外来では、前もって確認したいことをメモやノートに書いておくと医師や看護師にも説明しやすく、互いのコミュニケーションを円滑にすることができます。
それでも伝えることが難しい場合は、メモやノートをそのまま渡しても良いと思います。
私も高齢の患者様のメモ書きを医師に伝えたことが何度かありますが、受診ではよくある光景です。
医療者も患者様やご家族が検査や治療方針について納得し理解されたうえで医療を受けて頂きたいと願っています。
日頃から緊急時に備えて、希望する治療や望むことを家族や周囲の人と話し合っておくことが大切です。
ただでさえ不安な緊急受診を安心できるようにするのが医療者の務めですので、気になること、不安なことは遠慮なく聞いてみてください。
次回は「話し合っておくと良いこと」についてお伝えします。
この記事を書いた人
福井三賀子
<プロフィール>
小児内科、外科、整形外科の外来と病棟勤務で看護の基本を学ぶ。
同病院の夜間救急ではアルコール中毒、火傷、外傷性ショックや吐血、脳疾患など多くの救急医療を経験。
結婚後は介護保険サービス事業所で勤務しながらケアマネジャーの資格を取得。6年間在宅支援をするなかで、利用者の緊急事態に家族の立ち場で関わる。
在宅支援をしている時に、介護者である娘や妻の介護によるストレスが社会的な問題に発展していることに気づき、心の仕組みついて学びを深めると同時に更年期の女性について探求を始める。
現在は施設看護師として入居者の健康維持に努めながら50代女性対象の執筆活動やお話会、講座を開講している。
<経歴>
看護師経験20年。
外来、病棟(小児・内科・外科・整形・救急外来)
介護保険(デイサービス・訪問入浴・訪問看護・老人保健施設・特別養護老人ホーム)
介護支援専門員6年
<資格>
看護師/NLPマスタープロテクショナー/プロコミニュケーター
<活動>
講座「更年期は黄金期」
ブログ「幸せな更年期への道のり」
メルマガ「50代女性が自律するためのブログ」
スタンドFMラジオ「幸せな更年期への道のり」