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子どもの感染症(発熱・けいれん)
子どもは大人に比べて、びっくりするぐらい感染症にかかり、熱を出します。
その時何が起きていて、どのように対処すべきか分からないと不安ではないでしょうか。
子どもの感染症について、基本的なことをまとめました。
①子どもが感染症にかかりやすい理由
6ヵ月まではお母さんからお腹の中でもらった免疫物質で感染症になりにくいと言われています。
しかし、6カ月を過ぎると減ってくるため感染症にかかりやすくなります。
また子どもの体の機能は未熟です。
そのため大人よりも感染症にかかります。
さらに保育園などに入園し、集団生活が始まると色々なウイルスや細菌に触れて、さらに感染症にかかります。
子どもが感染症にかかると子ども自身もつらい上に、大人も大変です。
出来ればかからない方が良いと思われるかもしれません。
しかし、私たちの体は感染症にかかることで免疫力を獲得していきます。
例えばインフルエンザに感染したら、体はインフルエンザのウイルスを記憶します。
次に感染した時に、体は覚えているため前よりも素早く防御態勢に入ってくれるため軽症で済むようになります。
病気になりながら、私たちの体は強くなっていきます。
そのため、必ずしも感染症にかかることは悪いことではありません。
②発熱と熱性けいれん
子どもの症状で最も頻度が高く、分かりやすいものが「発熱」です。
子どもは自分で症状をうまく説明出来ません。例えばおでこを触ったり、体温計で測ったりすることで「いつもより温かいな」と比較的簡単に気づくことが出来ます。
では子どもの「発熱」は何度かご存じでしょうか?
大人の発熱は37.5℃以上と言われています。
子どもも37.5℃以上と言われていますが、平熱より1℃以上高いことも子どもにとっては発熱になります。
子どもの体温調整機能は未熟であるために、「部屋が暑い」「厚着をしている」「元気に遊んでいる」等のことですぐに体温が上がってしまいます。
また、汗をかく機能も未熟で熱を逃がして体温を下げることが難しく、体に熱がこもってしまうことがあります。
そのため、中には平熱が37.5℃に近い子どももいます。
(1)子どもがかかりやすい熱が出る感染症
・かぜ症候群
・突発性湿疹
・RSウイルス感染症
・伝染性紅斑(りんご病)
・インフルエンザ
・麻疹(はしか)
・風疹(3日はしか)
・流行性耳下腺炎(おたふくかぜ・ムンプス)
・水痘(みずぼうそう)
・咽頭結膜熟(プール熱)
・溶連菌感染症
・手足口病
・ロタウィルス感染症(ウイルス性胃腸炎)
・ヘルパンギーナ
聞きなじみが無い名前が多いでしょうか?
大人もかかることはありますが、子どもがかかることの多い感染症です。
夏や冬などかかりやすい時期がある感染症もあれば、年中通してかかる感染症も多くあります。
感染力が強いため、保育園で1人でも発生するとあっという間に広がります。
(2)熱性けいれん
38℃以上の発熱がある時に起こりやすくなります。特に熱の上がり始めにみられます。
子どもへ声をかけても反応が無くなります。
そして子どもの意志と関係なく体や手足がビクビクしたり、力が入ってピーンと固くなったりします。
また白目をむいたり、呼吸が浅くなるため唇が紫色になったりします。通常は5分以内で治まります。
対処の方法は、昔と今では違います。
「口の中に指を入れて舌を噛まないようにする」
けいれんを起こした時、そのように対応した方が良いと聞いたことはありませんか?
指以外でスプーン、タオルなどを口に入れると聞いたことあるかもしれません。
今ではけいれんを起こしても舌を噛むことはないと分かっています。
そのため、先ほど挙げたことは逆に危ないのでやらない方が良いとされています。
指を入れてしまうと指を噛まれてしまいケガをしてしまったり、スプーンなど固いものは歯が折れたりするかもしれません。
また口の中に物を入れると窒息してしまう可能性があり危険です。
今では、けいれんが起きた場合、まずは平らなで安全な場所に寝かせ、服を緩め呼吸を楽にするよう言われています。
そして、横向きに寝かせます。
横向きにする理由は吐いた時に吐瀉物が詰まって窒息しないようにするためです。
右・左のどちらを下にしても問題ありません。髪留めなど尖って危なそうなものは取り外します。
熱性けいれん
・熱の上がりはじめにみられる
・通常は5分以内におさまる
・平らで安全な場所に寝かせる
・服をゆるめ呼吸を楽にしてあげる
・横向きに寝かせる(左右どちらでも可)
初めて子どもが熱性けいれんを起こしたら、「様子見ていいのかな?」「救急車、呼んで良いのかな?」「どうすればいいのかな?」と迷って、パニックになってしまう方の方が多いのではないでしょうか。
5分以上けいれんが続いた場合、救急車を呼んだ方が良いとされますが、けいれんしている子どもを目の前にしていると5分はとても長く感じるでしょう。
慌てずに落ち着いて対応することが難しいかもしれません。そんな時は救急車をすぐに呼んでも問題ありません。
また、余裕があれば熱性けいれんが起きた時、どんなけいれんが、どのくらいの時間続いたかをスマホなどで撮影しておくと、どんな状況であったかを医師に伝えやすくなります。
余裕がある時はかかりつけ病院や厚生労働省子ども医療電話相談「#8000」に電話して、救急車を呼ぶか受診するかなど相談しても良いです。
③発熱した時の観察ポイント
- 機嫌の良し悪し
- 普段の様子
- 1つの症状ではなくて全体的に捉える
子どもは自分で症状を伝えることが出来ない代わりに、体全体で教えてくれます。
最も体調を言葉の代わりで教えてくれるものが「機嫌」です。
38℃の熱が出ていても機嫌良く遊んでいたり、嘔吐があってもけろっとしていたりする場合はそこまで緊急性は高くありません。
微熱であっても、ぐったりとしていたり機嫌が悪くずっと泣いていたりする場合は注意が必要です。
【小児医療①子どもの体調観察チェックポイント】で詳しく書いています。
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④ホームケア
発熱で受診した場合、解熱剤(熱さまし)を処方されることが多いでしょう。
処方された薬は自己判断で中止したりせず飲むことが基本です。ただ熱を上げることで体の防御力を上げるため、必ずしも解熱剤を飲んで熱を下げた方が良いというわけではありません。熱を下げることで却って症状が長引くこともあります。
38℃以上の熱が出ていても、子どもは機嫌が良く遊んでいることもあります。
その場合は様子を見てもいいかもしれません。薬に関して、例えば抗生物質など必ず飲み切らなければいけない薬もあれば、様子を見ながら症状に合わせて飲める薬もあります。必ず、医師に相談した上で、飲ませてあげてください。
熱が出ている時や嘔吐・下痢をしている時は脱水になる可能性があるため、水分をなるべく小まめにとるようにします。授乳中であれば母乳やミルク、もしくは乳児用経口補水液やイオン飲料、麦茶や湯冷ましなどを小まめに与えます。嘔吐している時、嘔吐直後だとすぐに吐いてしまうこともあるので1時間程度は与えずに様子を見てください。5~10mlから少しずつあげていきます。ペットボトルの蓋が5~7ml程度とされています。ペットボトルの蓋1~2杯分から与えていくと良いです。嘔吐をしなくなれば欲しがるだけ与えても大丈夫です。またイオン飲料は糖分を多く含むため、与えすぎには注意が必要です。
⑤まとめ
子どもが大人と同じくらいの免疫力に近づくのは6歳頃と言われています。6カ月頃からは感染症にかかりやすくなるため、長期間子どもの感染症と付き合っていくことになります。不安がいっぱいだと思います。
子どもにも個人差があり、かぜを全く引かない子もいれば、毎月様々な感染症にかかる子もいます。症状も個人差があります。
「こんな時はどうすればいいの?」
本やインターネットで調べても、限界があります。かかりつけ病院、信頼できるコミュニティでオンライン・オフラインどちらでも構いません。相談して実体験を聞くことで「こうすればいいんだ!」と知識が積みあがっていきます。そして、その知識や体験は自信になり不安が払しょくされていきます。
抱え込まずに、そういった場所で相談してみてくださいね。
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この記事を書いた人
山本みどり
【プロフィール】
看護師経験。大学病院のNICU(新生児集中治療室)で勤務後、精神科、訪問看護を経験。
現在は小児発達ケア専門訪問看護ステーションで発達障がいと診断された子どもやそのご家族へ小児発達ケアを行っている。発達ケアを通して、子どもとご家族が安心して過ごせるように支援をしている。
食から身体のことを整えたいと思い、プライベートでは中医学・薬膳を学んでいる。
【経歴】
看護師/Webライター
看護師歴6年 NICU、精神科、訪問看護(成人・精神特化・小児発達ケア)
家政婦やベビーシッターとしても働いている