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看護師が解説!婦人科系症状④人に相談しづらい…女性器のかゆみを自分でチェック

婦人科系症状④人に相談しづらい…女性器のかゆみを自分でチェック

女性が自分のからだに起きた女性特有の症状を周りの人に相談することは、ハードルが高くありませんか。
また、どのような検査をされるのかわからなくて、病院に受診することも二の足を踏んでしまいがちです。

この記事は、女性が婦人科系の症状を自分でチェックすることで、早めに専門家の診断や治療を受ける手助けとなればと考え、書き始めました。

第4回目は、人には相談しづらい「女性器のかゆみ」について取り上げていきます。

前回までに取り上げてきました痛みや出血、異常な分泌物に比べ、かゆみはよほどのことがないと我慢してしまう方が多いのではないでしょうか。
しかし、かゆみという症状があるということは、何かしらのからだの不調があるという、大切なシグナルです。自分自身の、女性の健康を守るために、女性器のかゆみに関する知識を深めてみませんか。

この記事の目次

1. 女性器のかゆみの主な原因

かゆみによる不快感は日常生活に支障をきたすことがあるため、その原因を知り、対応することが大切です。
女性器のかゆみの原因はいろいろとあり、かゆみとともに発赤やおりものの変化などの症状がみられることもあります。主なものを4つ挙げてみました。

1) 感染によるもの

ウイルスや真菌、原虫、細菌に感染し、女性器にかゆみを生じます。

以下にそれぞれの病気やかゆみ以外の特徴、治療についてまとめてみました。

分類病気の名前かゆみ以外の特徴治療
ウイルス性器ヘルペス性行為から2~10日間後に発症する。
初感染は性行為によって感染する。
再発は腰仙髄神経節に潜伏したウイルスが活性化し症状が出る。
激痛を伴う潰瘍や全身倦怠感や38度以上の発熱を伴う
抗ウイルス薬の飲み薬
妊婦が分娩時に病変を認めた場合は、産道感染予防を目的に帝王切開を行う。
膣・外陰カンジダ症もともと膣外陰の常在菌であるため、発症時期は明確ではない。
性行為後、妊娠、糖尿病既往やステロイド薬服用、抗菌薬の服用歴がある場合発症しやすい
白色の酒粕状のおりもおのの増加、痛み、腫脹を伴う
抗真菌薬の膣上の使用またはクリーム薬を塗布
原虫膣トリコモナス症性行為から5日~1ヶ月間後に発症する
黄色から淡い灰色をした泡状の異臭を伴うおりものの増加、痛みを伴う
無症状の場合もある
抗菌薬の膣上の使用または飲み薬
細菌毛嚢炎
(モウノウエン)
皮膚炎
ムダ毛を処理した後や皮膚の湿潤状態が持続した時に起こる
毛穴に膿が溜まった発疹や腫れ、赤身、痛みを伴う
抗菌薬の飲み薬またはクリーム薬を塗布

2) アレルギーによるもの

 (1) 石けん(石けんやボディウォッシュ、シャワージェル)や洗剤類(洗濯洗剤、柔軟剤)

香料を合成する化学物質の影響によってアレルギー反応を引き起こすことがあります。アレルゲンに触れるとからだは免疫系を活性化し、かゆみ、発疹、赤みなどの症状を起こします。
女性器の皮膚はデリケートなため、アレルギー反応による症状が出やすい場所です。

 (2) 生理用品(ナプキンやタンポン)

香料だけではなく、生理用品の製造過程で使用される漂白剤の影響によってアレルギー反応を引き起こすことがあります。

(3) 避妊具類(コンドーム、潤滑剤)

コンドームの素材に使用されるラテックスによりアレルギー反応が起こることで、かゆみや発疹、場合によっては呼吸困難を生じることがあります。また、ラテックスが使われていないコンドームであっても化学物質に反応することがあると言われています。

(4) その他(プールの塩素、パートナーの体液)

プールで泳いだ後、皮膚表面に塩素が残っていることでかゆみを引き起こすことがあります。

それから、パートナーの唾液や精液、汗といった体液中のタンパク質が接触することによって、かゆみや発疹、赤みが生じることがあります。

3) ホルモンの変化によるもの

女性ホルモンの一つであるエストロゲンは、膣内を酸性に保つことで病原菌による感染を防いだり、潤滑性を維持したりする役割があります。一般の病原菌は酸性の環境では生存しにくいのですが、月経前や月経中、妊娠出産、更年期の時は酸性度が弱まり感染しやすくなったり、潤滑性が低下すると膣内が乾燥しやすくなったりすることでかゆみが生じやすくなります。

4) 皮膚の炎症や刺激によるもの

デリケートゾーンの洗浄のしすぎや通気性の悪い合成繊維の下着による湿潤状態の持続、性行為や締めつけの強い下着による摩擦による刺激は、かゆみの原因となります。

女性疾患

2. 日常生活とかゆみの関係

普段の生活習慣もかゆみに影響を及ぼします。
デリケートゾーンが蒸れて湿った状態が続くと細菌が繁殖しやすくなり、かゆみが起こりやすくなります。
日常生活とかゆみの関係は、前回の「いつもと違う!女性の予想外の分泌物を自分でチェック」の「日常生活とおりものの関係」を参考にしていただければ幸いです。

その他、日常生活の過ごし方では糖分の取り過ぎには注意が必要です。
真菌であるカンジダ菌は酵母の一種です。酵母は糖分をエネルギー源として利用して増殖します。
また、糖分の取り過ぎによって、腸内の善玉菌が減少し、腸内細菌バランスが崩れたり、免疫力が低下したりすることで、カンジダ菌が増え、かゆみが起こるリスクが高まります。

2015年 世界保健機関(WHO)が新しく発表した「成人および児童の糖類摂取量」のガイドラインでは、「2002年以来、1日当たりの糖類摂取量について、総エネルギー摂取量の10%未満に減らすことを推奨してきたが、新ガイドラインでは5%(成人で1日25gティースプーン6杯程度)未満に減らすこと」とされています。

ここでいう糖類とは、砂糖やエネルギードリンクに含まれているブドウ糖のことを指します。例えば、350mlのコーラには約10ティースプーン分、500mLのスポーツドリンクには約7.5ティースプーン分の糖類が含まれていると言われています。

ただし、このWHOのガイドラインは、世界的な肥満やう蝕の増加のリスクを背景に策定されています。
現在、若年女性の痩せの問題や高齢者の低栄養の問題、小児のう蝕が減少している日本の実情とは合っていないという文献もあります。糖分の取り過ぎの参考としてお伝えしました。

フレッシュ、ライム、氷

3. かゆみが続く場合 医師に相談するタイミング

1) 相談するタイミング

女性器のかゆみは最初に述べましたように、いろいろな原因で起こります
特に、初めてかゆみを感じた場合、婦人科または産婦人科に受診することが不安で、市販薬で対処してしまおうと考える方が多いのではないでしょうか。しかし、市販薬で対処しようとしても、どのような市販薬を購入したらよいか迷ったり、原因や症状に合っていないためにかゆみがひどくなったりする可能性もあります。特に妊娠中は薬の使用に注意が必要です。

2~3日間様子を見てもかゆみが収まらない場合やかゆみがひどくなった場合は病院を受診し、医師に相談することをお勧めします。

特に、次のような場合は早めに受診しましょう。

  • かゆみが激しい、またはかゆみが持続する
  • おりものの量や性状に変化がある
  • 痛みや晴れ、発赤、発疹、出血などの症状がある
  • 発熱やからだのだるさがある

2) 受診時に医師に伝えること

医師から適切な診断と治療を受けるために、次の内容を伝えられるように準備するとよいと思います

  • かゆみを感じ始めた時期や症状の強さや頻度
  •  性行為の有無や頻度
  • 市販薬を使用した場合は、その薬品名や使用した頻度
  • 服用中の薬があれば、その薬品名(おくすり手帳を見てもらうとよいでしょう)

4. まとめ

  • 女性器のかゆみは、感染やアレルギー、ホルモンの変化などいろいろな原因で起こります。
  • 日常生活とかゆみの関係は、おりものとの関係同様に食生活やストレス、衣類、衛生習慣の影響を受けています。
  • かゆみが2~3日以上続く場合は、婦人科または産婦人科を受診しましょう。

次回は、女性の尿トラブルについてお伝えします。

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この記事を書いた人

看護師:山田かおり 経歴〉 看護師経験 32年(内分泌代謝・循環器内科病棟、外科混合病棟、高齢者施設で勤務) 看護教員養成研修 修了  認定看護師教育課程(認知症看護) 修了  医療安全管理者養成研修 修了  認定看護管理者制度 ファーストレベル・セカンドレベル教育課程 修了 〈講座〉  認知症ケアに関する講座 多数  未来をつくるkaigoカフェ 「つづけるカフェ」隔月開催(現在休止中)

ヤマダ カオリ

〈プロフィール〉
親に勧められ、自分が希望する心理学への道をあきらめ、看護学校に入学し、病院に就職する。周りの同期のように看護が楽しいと感じられず、私のしたいこととは違うと思い続け、「看護師は向いていない」と悩みながら3年間 病院で勤務後、退職する。事務職に転職しようとパソコンや簿記を学ぶが、25歳では事務職への転職は難しく、生活のために看護師に復帰する。

復帰後はマンネリ化した機能別業務に、再度「看護師は向いていない」と感じる日々が続いていた頃、関連病院で病床数増床のため看護師を募集していることを知り、心機一転すれば看護の楽しさがわかるのではと思い、異動を希望し、上京する。上京した病院で、自宅で最期を迎えたいと希望する患者や家族への退院指導の難しさと充実感を知り、新人教育担当として新人看護師が日々成長していく姿に励まされ、5S活動やQCサークル活動を通じて業務改善に手ごたえを感じるなど、看護師を続けたいと思えるようになった。それからは、自分の興味の赴くままに学びを深め、特に認知症に関する知識や技術を身につけ、「その人の行動の意味することは何か、生活歴を通して気づく看護の楽しさ」を伝えたいと思うようになった。
現在は、「看護が楽しい」と感じる仲間を増やしたくて、看護学校で看護教員をしている。

〈経歴〉
看護師経験 32年(内分泌代謝・循環器内科病棟、外科混合病棟、高齢者施設で勤務)
看護教員養成研修 修了
認定看護師教育課程(認知症看護) 修了
医療安全管理者養成研修 修了
認定看護管理者制度 ファーストレベル・セカンドレベル教育課程 修了

〈講座〉
認知症ケアに関する講座 多数
未来をつくるkaigoカフェ 「つづけるカフェ」隔月開催(現在休止中)

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