現代社会では多くの人が不眠に悩まされています。
その一方で、世界中の人が睡眠の大切さに気が付き、様々な研究がなされるようになりました。
今では睡眠が人の健康や幸福に大きな影響をもたらすと言われています。
不眠で悩んでいる方は、まず前回の記事「私は不眠症なの?不眠の定義」をお読みください。
前回の記事
看護師がやさしく教える 不眠症①私は不眠症なの?不眠症の定義
健康相談のなかで多く聞かれる悩みに「不眠」があります。 「ぐっすり眠れない」 「夜中に何度も目が覚める」 「目覚めがスッキリしない」 とおっしゃる方は多く、「眠…
そこで「自分の睡眠を肯定し信頼してみよう」と思えた方は、ぜひ本記事に進んでください。
眠れないと感じていても、実は体はしっかり休まっているのです。
睡眠のパワーを知り、その恩恵をしっかり受け取りましょう。
この記事の目次
睡眠の役割
ヒトはなぜ眠るのか、考えたことはありますか?
それは「脳や心身のメンテナンス」を行うためと考えられています。
睡眠は、その日に生じた体内のあらゆる不具合・不調をリセットし、脳や内臓、自律神経系、ホルモン系、免疫系などのからだのあらゆる整備を行っています。
これにより、翌日はまた最高パフォーマンスを発揮できるように備えているのです。
睡眠はヒトが生きる上で、大変重要で積極的なメンテナンスの時間と言えます。
睡眠には一晩でニ層のリズムがあり「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」に分かれています。
ここではそれぞれの睡眠の役割についてお話していきます。
ノンレム睡眠
ノンレム睡眠は、入眠して最初におこる深い睡眠で「脳」を休める役割があります。
睡眠全体の中でもこの寝入りの90分が一番深い睡眠となり、昼間酷使した「脳」を集中的に休める時間です。
現代人にとって、この時間の睡眠の質を上げることは非常に重要と言われています。
・眠りが深い
・「脳」が休んでいる
・身体は少し緊張している(寝返りを打っている)
・成長ホルモンが分泌される
レム睡眠
入眠後のノンレム睡眠の後におこるのが一回目のレム睡眠です。
レム睡眠では脳の情報整理を行っており、夢をみるのもこの時間です。
眼球がまぶたの下で動いている様子が見られることがあり、これは脳が活性化している証拠といえます。
また、脳が動いているのに対し「身体」は休むように設定されています。
これは脳の情報整理中に、夢の情報がそのまま運動神経を通じて身体に伝わらないようにするためです。
よってレム睡眠時は脳が動きながら、「身体」を休める時間になっています。
・眠りが浅い
・脳は活発に活動している
・筋肉が緩み、「身体」が休んでいる
ニ層の睡眠リズムとそれぞれの役割についてお話しました。
次に、知っておきたい睡眠の効果についてお話します。
知っておきたい睡眠のパワー
ここでは睡眠の効果を「身体」「脳」「心」の3つに分けてお伝えしていきます。
身体を元気にする
①疲労回復と成長を促す
寝入り90分のノンレム睡眠では、一晩のなかで最も成長ホルモンが分泌されます。それにより細胞の修復、筋肉や骨の形成、脳神経の発達を促します。
また、レム睡眠時は身体の緊張を緩め筋肉を休ませています。反対にノンレム睡眠時は無意識的に寝返りを繰り返しており、日中に歪んだ身体を整えているとも言われています。
②免疫力を活性化する
からだの免疫システムは睡眠中に活性化されると言われています。
例えば、免疫機構の代表「ナチュラルキラー細胞」は主に睡眠時に身体中を巡ってパトロールをしています。
そこでがんや病原菌による細胞変化をみつけ保護する役割を担っています。
睡眠不足ではがんや風邪のリスクが高まったという研究結果もあります。
③生活習慣病を予防する
良質な睡眠は自律神経系やホルモンバランスを整え、様々な病気を予防することが分かっています。
逆に、睡眠不足により体内時計が乱れることで、様々な生活習慣病発症リスクがあがります。
例えば、高血圧、肥満、糖尿病の発症率は睡眠不足と大きく関連していると言われています。
脳を元気にする
①情報整理と記憶の定着を促す
脳は日中ずっと「情報のシャワー」を浴び疲弊しています。
そこで、寝ている間に、脳内の情報を整理・掃除・収納し、脳の疲労を取り除いています。
もう必要ないと判断した情報は捨て去り、古い情報や似た情報は整理・統合していきます。
そして明日以降に備え、脳に余白をつくって、新しい情報を入れるスペースを確保するのです。
また、記憶の定着には睡眠が欠かせません。
一度の学習では短期記憶ボックスに保存され消去される可能性があります。
本当に残したい情報は、毎日繰り返し学習することで、長期記憶ボックスに保存されるそうですよ。
②認知機能を高める
睡眠により脳内が整理されることで、認知機能が高まります。
人の話に集中し、素早い反応をとることができます。
また物事に対して適切な優先順位をつけ実行する力も高まります。
③創造性を発揮させる
レム睡眠時に起こる脳の様々な活動は、革新的なアイディアの宝庫です。
夢が想像を超えたファンタジーであるように、脳内では過去の様々な情報がランダムにつながり合い活性化します。
「一晩寝かせる」とはよく言ったものです。
睡眠は創造性を発揮し、複雑な問題を解決する能力を高めます。
心を元気にする
①感情マネジメントを行う
睡眠は日中に起こった不快な出来事と感情の繋がりを変換し、処理してくれる働きがあります。
その不快な出来事は過去の別の情報と結びつき、あの時はこうだったから決して不快に感じることはないのかもしれないと新たな気付きをもたらしてくれる可能性があります。
「嫌なことがあった時は一晩寝て待つ」を試してみるのもよいですね。
②ストレスや不安を和らげる
睡眠により自律神経系が整うことで、ストレスや不安を和らげることができます。
また質の高い睡眠はストレス耐性にも効果的です。
ここでは睡眠のパワーについて、
・身体を元気にする
・脳を元気にする
・心を元気にする
という3つの視点でお伝えしました。
睡眠のパワーを効果的に受け取るためには?
それでは、不眠に悩む方がこの睡眠のパワーを効果的に受け取るためには、何が必要でしょうか?
睡眠で大切なことは睡眠時間ではなく「リズム」です。
そして、その夜間の睡眠リズムを生み出すのは『体内時計』です。
この体内時計というのは、睡眠と覚醒のサイクルはもちろん、入眠を促すための体温や血圧調整、ホルモン分泌などに関わり、人間の生理機能のほとんどがこの『体内時計』によって動かされています。
この体内時計が実際の生活リズムと一致すると、とても快適な睡眠が得られるようになります。そして、睡眠のパワーを効果的に受け取ることができるようになるのです。
次回の記事は「体内時計を整えて安眠を確保しよう」というテーマでお送りします。
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この記事を書いた人
安富由紀子
<プロフィール>
看護師・保健師として、何千人という生活習慣病やその予備軍と診断された方の保健指導や健康教育に携わる。その中で心身共に健康であるためには、「自分が大切にしていることを知ること」「なりたい自分に向かうこと」が重要であることに気が付く。
現在では「健幸ビジョンコンサルタント」として既存の医療では解決できなかった“心から健康で幸せになる方法”を社会に啓蒙するため、個人や企業での健康相談、研修、コンサルティングを行っている。
<クレド>
①指導をしない
②徹底した対話と、感情や意思を引き出す関わり
③クライアント自身の思考や情報取得を尊重して主体性を育む関わり
<経歴>
看護師・保健師 専門は生活習慣病予防
(一社)日本ナースオーブ ウェルネスナース
(一社)日本看護コーチ協会 認定看護コーチ
<講座・執筆>
・治療選択ワークショップ主催・講師(株式会社ぷれしゃす様 )
「もしもあなたが乳がんになったら」
・エンディングノート作成講座・講師(株式会社ウィシュレーン様)
「延命治療、あなたの意志の伝え方~家族に重圧を残さないために」
・ウェルネス講座 講師(一般社団法人日本ナースオーブ様)