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看護師が解説!更年期症状①更年期に起こる身体の変化
更年期とは閉経前後の10年間を指します。一般的に45歳から55歳までが更年期にあたると言われています。 更年期になると、 「どんなことが起こるのだろう」「見て…
更年期の症状と言えば、真っ先に思い出すのがホットフラッシュではないでしょうか。
ホットフラッシュは上半身のほてりやのぼせ、発汗などを伴う更年期の代表的な症状です。
閉経前後の更年期はホルモンのバランスを整えようと身体も必死ですから、自律神経が乱れるのは当たり前のことです。
悩むよりまず、そのメカニズムを知り自分に合う対処法を見つけることが大切です。
今回は、ホットフラッシュの症状と、そのケアについてお伝えしていきます。
この記事の目次
ホットフラッシュはどのような症状か
私は以前の勤務先で記憶に残っている光景があります。更年期の女性の一人が、すれ違うたびに「あー暑い」「あー暑い」と言いながら業務をしている姿です。
涼しい時期でしたが首にタオルを巻いて、次々出てくる汗をぬぐっていました。
ホットフラッシュはこのように体の上半身が熱くなり顔がほてること、同時に多量の汗をかくのになかなか汗が引かない現象です。
体に熱を持つと脈が速くなるため、ドキドキが止まらないのですが、それが突然やってくるためにストレスを感じることもあります。
その症状は人それぞれに違いはありますが、衣服がぬれてしまうほど多量に汗をかく人もいるため、人前に出ることに抵抗を感じて外出が億劫になるかたも多いと思います。
このような症状はなぜ起こるのでしょうか。
ホットフラッシュのメカニズムについて
更年期は卵巣の機能が低下していくため、脳の指令に対して女性ホルモンのエストロゲンを分泌できなくなります。
そうすると、脳が混乱を起こしてしまい体温や血液循環を司る自律神経が乱れていきます。
体温調節が上手くいかないと血液循環が滞り下半身が冷え、その影響でむくみが出やすくなります。
そのため、心臓に近い上半身の血液循環が活発になり顔がほてり、心拍を感じやすくなるというわけです。
ホットフラッシュにより大量の汗をかくと、体の水分が失われていきます。
血液中の水分が減少すると、血液の循環障害が起こり、さらに心拍数が上がってしまいます。
また、脱水症状は尿量も減少するために膀胱炎のリスクが高まります。
こまめな水分補給とミネラルのバランスを保つことがホットフラッシュの予防にもつながりますね。
ホットフラッシュは自分でコントロールすることが難しく、突然起こるために苛立ちや焦りにつながることがあります。
また、こうした症状が続くと、仕事や私生活にも支障をきたしてしまいます。
それでは、このような症状はいったいいつまで続くのでしょうか。
次は、ホットフラッシュが起こる期間についてお伝えします。
ホットフラッシュはいつまで続くのか
ホットフラッシュはエストロゲンが減少した状態に体が順応することで次第に治まってきます。下記の表に示したようにその期間はおおよそ5年と言われています。
加齢に伴うエストロゲン欠乏症の変化
更年期は子どもが自立して家を離れたり、介護が始まったりとライフスタイルに変化を伴い、孤独になりやすい時期です。
こうした環境の変化と、エストロゲンの減少によるホルモンバランスの乱れが自律神経に影響され精神的に落ち込みやすくなります。
心の状態が不安定で感情的になりやすい人は、自律神経のバランスが乱れてホットフラッシュが長引く傾向があるかもしれません。
どうしてもつらい時には、すぐにできる簡単な対処方法がありますので次にご紹介します。
ホットフラッシュの対処法について
①腹式呼吸を行う
ホットフラッシュを感じたら涼しい場所に移動をしましょう。そして腹式呼吸を行います。
・お腹を膨らますイメージで鼻から息をゆっくりと吸い込みます。
・吐くときは10~15秒くらいかけて口から息を吐きだしてお腹をへこませます。
・これを数回繰り返すうちに少しずつ汗も引き、心拍数も落ち着いてきます。
ゆっくりと深い腹式呼吸は、心身をリラックスする効果があります。
忙しい時は神経が過敏になり交感神経優位でホットフラッシュを発症しやすくなるため副交感神経を優位にする必要があります。
道具を必要としない簡単な腹式呼吸を、ぜひ取り入れて下さいね。
私の知人はホットフラッシュ対策として携帯用の扇風機をカバンに入れていました。
仕事中や移動ができないときなどはとても便利だそうです。
②水やお茶を飲む
体が急に熱くなると同時に大量の汗をかきますので、その水分を補うためにも水分を補給が必要です。
お水やお茶で体の内部から熱を冷ますので効果的です。
このようなときは冷たい飲み物を選択しがちですが、冷たい飲み物を一気に流し込むと胃腸に負担がかかります。
お勧めは常温やぬるめのお水、ミネラルの含まれた麦茶です。
また、顔や首筋を濡れたタオルで拭くとスッキリして気持ち良いですね。
水場がないところではウエットティッシュが便利です。
③心地よい香りを嗅ぐ
アロマオイルでおなじみの香り成分は、その種類によって交感神経や自律神経に作用します。
ラベンダーやカモミールは呼吸を安定させて血圧を下げるリラックス効果が期待できます。
また、嗅覚は脳に近いため即効性があるという利点があります。
いつでも香りを嗅げるようにお気に入りの香りをハンカチやハンドタオルに数的落としておくと外出先でも安心ですね。
お気に入りの香りをぜひ、探してみてください。
*アロマオイルは多量に使用しすぎないようご注意ください。
たとえばラベンダーは多量の使用で血圧降下作用があるため、低血圧の方に使用すると眠気やだるさを引き起こす恐れがあります。 また、うつ状態の方の使用は控えるか事前にかかりつけ医に相談をしたほうが安心です。
なお、妊娠、授乳中の方や、ペットを飼っている場合避けたほうがいい種類などもありますので購入する際はご注意ください。
まとめ
ホットフラッシュは、エストロゲンが減少することで自律神経のバランスが乱れることが原因とされています。しかし、その背景には心理的なストレスも隠れているため症状も対処方法も人それぞれです。
気の合う仲間と時間を共にすることや自分に合ったリラクゼーション方法を見つけていくことで予防につながります。
ホットフラッシュは時期が来たら必ず治まる症状ですから、更年期だから仕方がないとあきらめずに上手に付き合っていきましょう。
次回は、更年期症状の治療についてお伝えします。
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この記事を書いた人
福井三賀子
<プロフィール>
小児内科、外科、整形外科の外来と病棟勤務で看護の基本を学ぶ。
同病院の夜間救急ではアルコール中毒、火傷、外傷性ショックや吐血、脳疾患など多くの救急医療を経験。
結婚後は介護保険サービス事業所で勤務しながらケアマネジャーの資格を取得。6年間在宅支援をするなかで、利用者の緊急事態に家族の立ち場で関わる。
在宅支援をしている時に、介護者である娘や妻の介護によるストレスが社会的な問題に発展していることに気づき、心の仕組みついて学びを深めると同時に更年期の女性について探求を始める。
現在は施設看護師として入居者の健康維持に努めながら50代女性対象の執筆活動やお話会、講座を開講している。
<経歴>
看護師経験20年。
外来、病棟(小児・内科・外科・整形・救急外来)
介護保険(デイサービス・訪問入浴・訪問看護・老人保健施設・特別養護老人ホーム)
介護支援専門員6年
<資格>
看護師/NLPマスタープロテクショナー/プロコミニュケーター
<活動>
講座「更年期は黄金期」
ブログ「幸せな更年期への道のり」
メルマガ「50代女性が自律するためのブログ」
スタンドFMラジオ「幸せな更年期への道のり」