いつも元気な子どもが高い熱を出すと、親は心配してすぐに医療機関を受診することがあります。
核家族の現代では、子どもが熱を出した時の対処法を知らない両親も多く、軽い風邪とわかるとホッと胸をなでおろす親御さんも多いですね。
子どもは大人に比べると皮膚が薄いために体温は常に37.0度前後あります。
また、体温調節が未熟なため体温が上がりやすいのが特徴です。
その特徴を踏まえて、子どもが発熱した時にどうすればよいかを、お伝えします。
この記事の目次
1. 子どもの体温について
人の体温はおおよそ36.5度前後に維持されるように体温中枢がコントロールしています。
夏の暑い時には体温が上がりすぎないように呼吸を早くしたり毛細血管を拡張したりしながら熱を外に出そうとする機能がはたらきます。
反対に寒い時には熱が外に出ないように毛細血管が縮もうとするために手足は冷たくなります。
寒さで体が震えるのは筋肉を震わせて体が体温を上げようとしているからです。
そして、体温調節で忘れてはならないのが、汗をかくという機能です。
子どもは大人より体は小さいのですが、汗腺は大人と同じ数だけあります。
汗腺の密度も大人より高くなりますので、大量の汗をかいてしまうことがあります。
体温調節の未熟な子どもは、環境や運動によって熱がこもりやすいため、状態をみながら熱を放出させることが必要です。
活発なお子さんはすぐに汗をかきやすいので、薄着や素足にするなど工夫が必要になります。
衣服は通気性の良い素材、汗を吸収しやすい素材を選び、動きやすいデザインのものを選ぶようにしましょう。
2.様子をみて良い発熱と受診した方が良い発熱について
①様子をみて良い発熱について
子どもが急に熱を出すと親は慌ててしまいますが、ほとんどの場合が様子をみていれば次第に回復していきます。以下の観察ポイントを参考に経過を見ていきましょう。
- 1)観察ポイント
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- 38.0℃以下の発熱
- ぐったりしていない
- 水分が摂れている
- 機嫌が良い
- 軽い咳が出ている
- ゼイゼイ、ヒューヒューと呼吸が苦しい様子がない
このような状態であれば自宅で看病していれば次第に回復していきます。
2)対応について
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- 熱が上がる時には寒気がします。着るもの、掛物で調整して寒気を予防します。逆に熱の下がる時は汗を大量にかきますので、おしぼりタオルで顔や体を拭いて着替えをしましょう。
- 発熱の経過をみながら首の後ろやわきの下を冷やします。首の後ろは氷枕、わきの下は小さな冷却材をタオルでくるんだものが便利です。
- すぐに食事を摂れなくても心配はないですが、水分はこまめに摂るようにします。麦茶やイオン飲料などのど越しの良いものを勧めましょう。
- 発熱の初日は体力温存のためにも入浴は控えたほうが良いですが、熱が安定し水分や食事が摂れるのであれば入浴やシャワー浴はかまいません。たくさん汗をかいた後は清潔にすることが大切です。
②受診をした方が良い発熱について
このような症状がある場合は受診をします。
- ぐったりしている
- ゼーゼー、ヒューヒューと呼吸が苦しそうにしている
- 水分を受け付けない
- 下痢や嘔吐がある
子どもは高熱を出すと、けいれん(ひきつけ)を起こす場合があります。
神経が十分に働かず体が突っ張り、ピクピクした後にぐったりします。
呼びかけしても反応が鈍い場合もあるため、親は慌ててしまうと思いますが、まずは衣服を緩めて平らな場所に寝かせるようにして意識状態を確認します。
こうしたひきつけ(けいれん)は5分程度で治まる場合もありますが、念のために受診をする方が安心です。
意識が低下する場合は迷わず救急車を呼びましょう。
※けいれんがどのような状態で何分くらい続いたかを携帯電話の動画機能で撮影すると、救急隊や医師への報告に役に立ちます。
3. 体温の正しい測り方
体温は体の深部が一番正確な温度ですが、測定するには難しいために口の中で測定するものや、わきの下で測定するものが一般的になります。
家庭で子どもの体温を測定する時は、電子体温計が良いでしょう。
体温を測る時のポイント
- 汗をかいている場合もあるためわきの下をタオルやガーゼで拭きます
- わきの中央に体温計の先を当て、30℃の角度にして、わきをしっかり閉じます
- そのまま動かさないようにします。乳児や幼児は手で押さえてしっかりわきを閉じるようにします
- 最初のブザー音は予測値のため、10分そのままにして実測値を確認します
子どもの体温は1日中同じではなく、朝は低めで夕方は高くなります。
普段の元気な時から1日4回、朝、昼、夕 寝る前に体温を測定して記録をつけていると、比べることができます。平熱より1℃以上高ければ熱があると考えて良いでしょう。
4. 解熱剤について
現代はインターネットやゲーム、習い事などをする子どもが多くなり私は「子どもは風の子」と言われた時代を懐かしく思うことがあります。
当時は子どもが熱を出すと、母親が看病するのが当たり前の時代でしたが、今は軽い風邪であってもすぐに病院へ行き抗生剤を服用して熱を冷ます、というのが一般的になってしまいました。
医師で書籍も書かれている亀山静雄氏はこのようにおっしゃっています。
解熱剤は熱を下げて早く治す薬ではありません。治るのを邪魔する薬です。鼻水、軽い咳、38℃から39℃の熱は看病しましょう。
年に1~2回は40℃出る強い病原体がおります。
ふだん軽い風邪を自分で乗り切れない子どもは強い病原体が来たら入院です。
軽いうちに薬を飲むと薬づけになります。37℃が自分で治せると、次に38℃が治せると次は39℃というように全部の風邪を自分で治せるようになるのです。
私は子どもが熱を出した時、いつもこの先生の言葉を思い出していました。
今は頑張って病原体と戦っているのだと、子どもを励まし、のど越しの良い水分を与えてゆっくりと体を休めるようにさせていました。
強い咳が出れば肺炎にならないと教えられましたので、安心して看病することが出来ました。
もちろん状態によって抗生剤などの薬が必要な時もありますが、こうした考え方もあるということを参考にしていただけたらと思います。
5. まとめ
本来、熱というのは悪いから出るというのではなく、病原体と戦うための生態防衛です。
親は子どもが病原体と戦いやすいように、汗をかいたら身体を拭いて着替えをする、不足した水分を補う、というように子どもに備わった機能を邪魔しないことが大切なのではないでしょうか。
現代、忘れ去られようとしている「子どもは風の子」の意味を考えると、子どもの体の特徴を理解することが、子どもが熱を出した時に慌てない秘訣ではないかと思います。
参考書籍/亀山静夫著 「体質の良い子に育てましょう」
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この記事を書いた人
福井三賀子
<プロフィール>
小児内科、外科、整形外科の外来と病棟勤務で看護の基本を学ぶ。
同病院の夜間救急ではアルコール中毒、火傷、外傷性ショックや吐血、脳疾患など多くの救急医療を経験。
結婚後は介護保険サービス事業所で勤務しながらケアマネジャーの資格を取得。6年間在宅支援をするなかで、利用者の緊急事態に家族の立ち場で関わる。
在宅支援をしている時に、介護者である娘や妻の介護によるストレスが社会的な問題に発展していることに気づき、心の仕組みついて学びを深めると同時に更年期の女性について探求を始める。
現在は施設看護師として入居者の健康維持に努めながら50代女性対象の執筆活動やお話会、講座を開講している。
<経歴>
看護師経験20年。
外来、病棟(小児・内科・外科・整形・救急外来)
介護保険(デイサービス・訪問入浴・訪問看護・老人保健施設・特別養護老人ホーム)
介護支援専門員6年
<資格>
看護師/NLPマスタープロテクショナー/プロコミニュケーター
<活動>
講座「更年期は黄金期」
ブログ「幸せな更年期への道のり」
メルマガ「50代女性が自律するためのブログ」
スタンドFMラジオ「幸せな更年期への道のり」