目次

看護師が解説!子宮がん①子宮がんの原因はHPV?原因と症状を解説

子宮がん②子宮がんの原因はHPV?原因と症状を解説

子宮がんは多くの人にとって遠い存在と思われがちですが、実は女性であれば誰にでもリスクがあります。現在、日本では毎年数万人の女性が子宮がんと診断されています。
多くの方が「まさか自分が」と思われたはずです。子宮がんは予防や早期発見が可能な病気です。

今回から5回にわたって、看護師の視点から子宮がんの治療についてお伝えしていきます。

1回目は、子宮がんの原因と症状についてお伝えします。
子宮がんについて知識を深めることがあなた自身の生活を守る第一歩となればうれしく思います。

この記事の目次

1. 子宮がんの種類と違い

子宮がんには発生しやすい場所の異なる子宮頸がん子宮体がんといわれる2つの種類があります。

子宮の構造

1) 子宮頸がん ― 膣と子宮をつなぐ場所である子宮頸部のがん ―

子宮頸部は、膣から子宮につながる入口の役割を果たしている部分です。

この子宮頸部には扁平上皮(膣粘膜上皮)細胞と円柱上皮(頸管腺上皮)細胞という異なるタイプの細胞が交わる境界部分があります。
この部分は成長や環境に応じて細胞の変異が起きやすい構造となっているため、異常な細胞が増え始めるとがん化する可能性が高くなります。

2) 子宮体がん ― 赤ちゃんが育つ場所である子宮体部のがん ―

子宮体部は、子宮の大部分を占め、赤ちゃんが育つ場所の役割を果たしている部分です。

子宮体部の内側には、子宮内膜と呼ばれる膜があります。子宮内膜は女性ホルモンであるエストロゲンの働きによって内膜の細胞を増減させて毎月内膜の厚さを変化させています。妊娠が成立すると胎児はこの内膜に着床して成長を始めます。もしも妊娠が起こらなかった場合、この内膜は毎月剥がれ落ちて月経として体外に排出されます。

女性ホルモンのバランスが崩れると子宮内膜の細胞が異常に増えやすくなり、その結果 がん化する可能性が高くなります。

そして、子宮頸がんと子宮体がんは発生しやすい場所が異なるだけではなく、好発年齢や発生する原因、症状も異なります。

子宮

2. 子宮がんの好発年齢

子宮頸がん30~40歳代といわれていますが、20代や60歳代以降の罹患も少なくありません。
25~34歳の女性の悪性腫瘍では、この子宮頸がんが最も多いとされている
子宮体がん50~60歳代といわれていますが、30~40歳代にかけての罹患が増え、若年化が進んでいる。
子宮

3. 子宮がんの原因と症状

1) 子宮頸がん

(1) 原因

子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染が起こりやすい状況にある人が罹患しやすいといわれています。

①ヒトパピローマウイルス(HPV)

HPVは200種類以上の型があります。
性交渉や皮膚の傷から感染を起こしますが、ほとんどの型は自分の免疫力や治療によって治ります。

ただし、子宮頸がんなど がんを引き起こす型が、少なくとも14種類あるといわれています。
そのうち、子宮頸がんの発症リスクが高いといわれているものは、HPV16型とHPV18型、HPV52型、HPV58型です。
1.で説明しました、子宮頸部の細胞の境界部分に感染すると、がん化する可能性が高くなります。

子宮頸がんの発症リスクの高いHPVに感染する原因は、主に性交渉です。
性交渉の経験があるすべての女性は感染リスクを持っています。
しかし、HPVに感染したすべての女性ががんになるわけではありません。ほとんどは一時的な感染で、ウイルスは自然に消えます。

やだし、ウイルスが消えずに数年から数十年の間 からだの中に留まり、がん化することがあります。
これが子宮頸がんの原因となります。

この記事を書くにあたり調べていて知ったこと子宮頸がんの患者さんには、「性交渉の経験が早かった」、「男性経験が豊富」と周囲から見られて、精神的にも大きな苦痛を感じてしまわれる方が少なくありません。このようなことが起きた理由は、ある疫学研究で、子宮頸がんの危険因子に「性交渉の相手が多い」、「性交渉開始年齢が低い」と挙げられているからです。先ほど説明しましたように、性交渉の経験がある方は誰にでもHPV感染は起こり得ることです。また、生涯 ただ一人の男性と性交渉をしている方の中にも、子宮頸がんになる方は少なくありません。つまり、子宮頸がんになられた患者さんの中には、性交渉の開始年齢が早くもなく、相手の数も多くない方がたくさんいらっしゃいます。それにも関わらず、情報の意味を取り違えることによって、周囲の人々から傷つけられることは、本当に残念なことだなと思いました。

 ②喫煙

喫煙や受動喫煙と子宮頸がんの関連性は、肺がんに次いで高いといわれています。

タバコを吸うとからだの免疫力が低下します。
HPVに感染した場合、からだの免疫力が弱まり、長期間ウイルスがからだの中に留まりやすくなります。

さらに、タバコにはニコチンやタールなどの有害物質が含まれています。これらの物質は血液を通って子宮頸部に到達して細胞にダメージを与え、がん化しやすい環境を作ってしまいます。

(2) 症状

初期の段階では性交時の接触出血がみられることもありますが、自覚症状はほとんどないといわれています。
そのため自治体や会社の子宮頸がん検診や婦人科での診察などで、はじめて診断されるケースも少なくありません。
進行すると、不正性器出血や悪臭を伴うおりもの、痛み(腰痛や坐骨神経痛、下肢痛)、排尿困難などが生じます。

2) 子宮体がん

(1) 原因

子宮体がんは女性ホルモンであるエストロゲンが深く関係しています。

エストロゲンは、女性らしいからだを作り、月経や妊娠をサポートするホルモンです。しかし、エストロゲンが長期間にわたって過剰に分泌されると、子宮内膜が異常に増殖し、がん化の可能性が高まります。

①肥満

脂肪組織はエストロゲンを生成するため、肥満の方はエストロゲンの量が増えやすくなります。

②糖尿病や高血圧

糖尿病は血糖値を調整するインスリンというホルモンが関係する病気です。インスリンが正常に働かないことで、からだの中で炎症が起こりやすくなります。慢性的な炎症やホルモンの乱れが、エストロゲンの過剰分泌を引き起こします。

高血圧も血管や心臓に負担が増えることで炎症が起こりやすくなります。からだの中で炎症が長引くとストレスホルモンの分泌が増えて、ホルモンの調整を乱して、エストロゲンの作用に影響を及ぼします。

③閉経後

閉経後は、もう一つの女性ホルモンであるプロゲステロンが減少するため、エストロゲンが過剰な状態となり、子宮内膜が増殖しやすくなります。

④妊娠・出産経験がない、月経不順や排卵障害がある

妊娠するとエストロゲンの作用が一時的に止まり、子宮内膜が増殖しににくくなります。
そのため、妊娠経験がない、または月経不順や排卵障害がある場合、エストロゲンの影響を長期間受けやすくなります。

(4) 症状

最もよくみられる症状は、不正性器出血です。
閉経後の出血のほか閉経前では月経と無関係な出血、月経時の出血量が多い、おりものに血が混じるなどの症状が見られます。また月経不順、下腹部の痛み、排尿時の痛みなどが出ることもあります。

4. まとめ

  • 子宮がんは子宮頸がんと子宮体がんの2種類があり、それぞれ好発年齢、原因、症状が異なります。
  • 子宮頸がんは30~40歳代に罹患しやすく、原因はHPV感染や喫煙で、初期の段階では症状はほとんどないといわれています。
  • 子宮体がんは50~60歳代に罹患しやすく、女性ホルモンのバランスが崩れることが原因で、症状は不正性器出血が最も多くみられます。

女性の健康推進室ヘルスケアラボ(厚生労働省研究班監修)では、子宮がんのセルフチェックができるホームページがあります。参考にしてみてください。

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子宮がんは予防可能で、早期発見が非常に有効な病気です。

次回は、子宮がんの予防についてお伝えします。

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この記事を書いた人

看護師:山田かおり 経歴〉 看護師経験 32年(内分泌代謝・循環器内科病棟、外科混合病棟、高齢者施設で勤務) 看護教員養成研修 修了  認定看護師教育課程(認知症看護) 修了  医療安全管理者養成研修 修了  認定看護管理者制度 ファーストレベル・セカンドレベル教育課程 修了 〈講座〉  認知症ケアに関する講座 多数  未来をつくるkaigoカフェ 「つづけるカフェ」隔月開催(現在休止中)

ヤマダ カオリ

〈プロフィール〉
親に勧められ、自分が希望する心理学への道をあきらめ、看護学校に入学し、病院に就職する。周りの同期のように看護が楽しいと感じられず、私のしたいこととは違うと思い続け、「看護師は向いていない」と悩みながら3年間 病院で勤務後、退職する。事務職に転職しようとパソコンや簿記を学ぶが、25歳では事務職への転職は難しく、生活のために看護師に復帰する。

復帰後はマンネリ化した機能別業務に、再度「看護師は向いていない」と感じる日々が続いていた頃、関連病院で病床数増床のため看護師を募集していることを知り、心機一転すれば看護の楽しさがわかるのではと思い、異動を希望し、上京する。上京した病院で、自宅で最期を迎えたいと希望する患者や家族への退院指導の難しさと充実感を知り、新人教育担当として新人看護師が日々成長していく姿に励まされ、5S活動やQCサークル活動を通じて業務改善に手ごたえを感じるなど、看護師を続けたいと思えるようになった。それからは、自分の興味の赴くままに学びを深め、特に認知症に関する知識や技術を身につけ、「その人の行動の意味することは何か、生活歴を通して気づく看護の楽しさ」を伝えたいと思うようになった。
現在は、「看護が楽しい」と感じる仲間を増やしたくて、看護学校で看護教員をしている。

〈経歴〉
看護師経験 32年(内分泌代謝・循環器内科病棟、外科混合病棟、高齢者施設で勤務)
看護教員養成研修 修了
認定看護師教育課程(認知症看護) 修了
医療安全管理者養成研修 修了
認定看護管理者制度 ファーストレベル・セカンドレベル教育課程 修了

〈講座〉
認知症ケアに関する講座 多数
未来をつくるkaigoカフェ 「つづけるカフェ」隔月開催(現在休止中)

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