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前回の「疲れの種類と原因」では、疲れは休息が必要なことを知らせるサインであり、疲れの原因はストレスであるとお伝えしました。
日本リカバリー協会が全国10万人に調査した結果、「疲れている人」は8割にのぼるというデータがあります。この記事を読んでいる方も、日々疲れを感じているかもしれません。
では疲れを感じた時に、皆さまはどのようなケアをしているでしょうか。
疲労が蓄積すると自律神経の乱れや免疫力の低下、ホルモンバランスの乱れにより体調を崩す可能性があります。この記事では、疲れた心と体のケアをおこなうことで、毎日を健康に過ごす方法をご紹介します。
この記事の目次
1.疲労の蓄積が病気の原因になる
1)ストレッサーとストレス
厚生労働省のホームページに掲載している「セルフメンタルヘルス」では、ストレスの原因となる刺激や出来事(ストレッサー)を以下にまとめています。
外因性 | 物理的ストレッサー | 温熱、寒冷、気圧などの気象の変化 |
| 化学的ストレッサー | 食品添加物、薬品、アルコール、たばこ、 金属(皮膚のアレルギーや体内に溜まると慢性疲労や不眠 イライラなどを引き起こす) 酸素欠乏、栄養不足 |
| 生物的ストレッサー | 細菌・ウイルス・真菌・寄生虫・花粉 |
| 環境的ストレッサー | 騒音、照明、空気汚染、振動 |
| 社会的ストレッサー | 多忙、残業、夜勤、重い責任、借金 |
| 人間関係ストレッサー | 職場や家族・親戚・近所・友人のトラブル |
内因性 | 身体的ストレッサー | 病気、けが、不規則な生活、睡眠不足、疲労 |
| 心理的ストレッサー | 家族などの病気や死、失恋、解雇、倒産、挫折 |
| 情緒的ストレッサー | 寂しさ、怒り、憎しみ |
2)ストレスによる疾患
①心身症(しんしんしょう)
ストレス反応が慢性化すると、心が原因で体に起こる病気である「心身症」になる可能性があります。心身症の原因がすべてストレスにあるわけではありません。疾患の発症と経過にストレスが関係しているかどうかを見極める必要があります。
《心身症の例》
呼吸器系 | (原因が明らかではない高血圧)、起立性低血圧症、冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞)など |
消化器系 | 胃・十二指腸潰瘍、慢性胃炎、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、(心理的なストレスが原因で嘔吐する)など |
内分泌・代謝系 | 神経性食欲不振症、神経性過食症、甲状腺機能亢進症など |
神経・筋肉系 | 筋収縮性頭痛、(自分の意思とは無関係に首が曲がったり傾いたりする)、(手が震えて字を書くことができない)、片頭痛など |
皮膚科領域 | 慢性、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症など |
整形外科領域 | 慢性関節リウマチ、腰痛症など |
眼科領域 | 眼精疲労、原発性緑内障など |
産婦人科領域 | 更年期障害、機能性子宮出血、月経前症候群など |
耳鼻咽喉科領域 | 耳鳴り、めまい症(メニエール病など)、心因性難聴など |
歯科・口腔外科領域 | 顎関節症、口腔乾燥症、(顔や口の中の痛み)など |
②気分障害
気分障害にはうつ病と躁うつ病があります。
代表的疾病であるうつ病とは、心や体の働きが極端に低下し日常生活に差し支えるような状態に陥る病気のことです。
うつ病にかかると、憂うつ、物悲しい、悲観的、イライラなどの強い抑うつ的な気分や、物事に対しての意欲低下などの特徴的な精神症状が出ます。
睡眠障害や食欲不振という体の症状も多くの人に起こります。
③不安障害
ストレスが心に現れる影響で心身にさまざまな症状を引き起こす病気です。
単なる心配性との違いは、耐えがたいような強度の不安が終始つきまとい、日常生活や社会生活にも支障をきたすほど強いという点です。
2.疲れが溜まった時の体の反応
動物はストレスに直面した時に、「戦うか、逃げるか、すくむか」の反応をします。この反応のためには、脳や筋肉に酸素やエネルギーをすばやく供給する必要があります。
そのため、呼吸数や心拍数・血糖値を増やし血圧を上昇させます。
痛みを和らげ筋肉を緊張させてより早く動けるような準備をします。
このような反応は脳や内臓が自律神経系(主に交感神経)や内分泌系(ホルモン)、免疫系を調整し起こしています。ストレスを受けてからしばらくすると、体は元の状態に戻ろうとします。
ところが、ストレス状態が続くと交感神経と副交感神経のバランスが崩れ、ホルモンはストレス状態に対する防御力が限界を超えてしまったり、免疫の働きが弱まったりします。
ストレス状態が続くと以起こりやすくなること。
- 細菌・ウイルス・悪性新生物などへの免疫力が低下する
- 大脳(海馬)の萎縮など脳に障害を与える
- セロトニンの分泌を妨げる(不足すると緊張し、焦りやすくなる)
- ドパミンが不足する(不足すると楽しいと感じにくくなる)
- ノルアドレナリンが不足する(不足すると意欲の低下・興味の消失につながる)
①~⑤のような体のはたらきが起こると、ご自身で感じる変化として、体の怠さや気力がわかない、肩がこる、目が疲れやすい、眠りが浅い、胸が痛くなる、便秘や下痢をするなどの心身の不調が現れる可能性があります。
ストレスを受けた時適切に対処することでストレスを軽減することと、ストレスを慢性化させないことが重要です。
3.日常生活の中のストレス
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ここでは普段どのようなストレッサーにさらされているのかをご紹介します。
仕事や職場に対してのストレス
厚生労働省が行っている「労働者健康状況調査」によると、「仕事や職業生活でストレスを感じている」労働者の割合は60.9%(2012年)となっており、働く人の約6割がストレスを感じながら仕事をしていると言えます。
暑さや寒さ、騒音や振動などのストレス
満員電車での人混みや、オフィスで使用するパソコンの光などにも気がつかないうちにストレスを感じています。
スマホやパソコンの長時間の使用は、筋肉が緊張し続ける原因となります。筋肉の緊張状態が続くと、体は大きなストレスを感じ、自律神経が乱れる原因となります。
たばこの煙や食べ物のにおい
あまりピンとこない方もいらっしゃるかもしれませんが、たばこの煙やにおいの強い食べ物などもストレッサーになる場合があります。意図せず他人にストレスを与えている可能性があります。
4.疲れた心と体のセルフケア
ストレスと疲労には自律神経とホルモン、免疫力が関係していることをお伝えしました。
では自律神経やホルモンバランスを整え、免疫力を高めるにはどのようなセルフケアがあるのかをご紹介します
1)寝る前にストレッチをする
交感神経を活発にしたい朝は、ラジオ体操のような運動が有効ですが、リラックスして副交感神経を優位にしたい夜はストレッチがおすすめです。
アロマオイルを焚いたり、ヒーリング音楽を流したりするなど、心身ともに解放されるムードづくりも大切です。
2)寝室をリビングにしない
寝室はあくまでも寝るための場所です。
寝室でテレビを観たり、ゲームをしたり、読書をするのはやめましょう。
「寝室に入ったら眠る」という意識づけをすることで、安眠できるようになります。
これは睡眠障害の人にも有効な方法です。
3)生きがいをもつ
仕事や義務だけの毎日を送っていると、気持ちの張りが失われていくことがあります。
「これがあるからこそ、頑張れる」と思える趣味や生きがいは必要です。
ガーデニングや散歩などでもよいので週末の楽しみを持つことをおすすめします。
4)規則正しい生活をする
脳は免疫系、神経系、内分泌系が密接に連携することで機能します。
その働きを整えるために重要なのは規則正しい生活です。
太陽とともに起き、午後11時には眠る生活がベストだと考えられています。
早寝早起きは免疫力を回復させ、ホルモンバランスを整えます。
5)朝は熱いシャワーや運動から
慢性的な疲労を訴える人は自律神経の働きが乱れがちです。
起床後に熱いシャワーを浴びる、少し強めの運動をすることで交感神経が活発になります。
疲れているときはリラックスすることに偏りがちですが、朝は体を刺激してリズムをつくることが大切です。
6)午前中に嫌なことを、15時以降は楽しいことをする
1日のリズムをつくるには、午前中に嫌な仕事や面倒な用事を終わらせ、15時以降は頑張り過ぎず、できるだけ楽しく過ごすようにしましょう。
夕方以降に気が滅入ることをすると、寝つきが悪くなる場合もあります。
嫌なことを早めに済ませることは、安眠のための1つの方法です
7)明るすぎ、暑すぎ、寒すぎに注意する
寝る前の明るすぎる照明、スマホやパソコンの画面の光は、視神経を通じて交感神経を優位にします。
寝る前は間接照明にして読書をしたり、ホットタオルなどで目を温めたりすると副交感神経が優位になり自律神経が整います。
また不快な室温は自律神経に負担をかけるためエアコンなどで適温に調節しましょう。
関西福祉大学「心と体の疲れをスッキリ解消!」参照
5.まとめ
普段の生活の中にストレスとなることは多くあります。ストレスを受けた時に、自分の体調の変化を感じ、疲れていると気づくことが大切です。
慢性疲労症候群は自律神経やホルモン、免疫が関わっているという研究や文献は多く、日ごろから体調管理をして、慢性疲労をそのままにしないことも予防になるのではないでしょうか。
今回ご紹介した心と体のセルフケアが、疲労を溜めず、日々健やかに過ごすための一助になれば幸いです。
この記事を書いた人
清水明日香
プロフィール
看護師経験23年。総合病院(消化器外科・内科、整形外科)、リハビリテーション病院(地域包括支援病棟)、老人施設で勤務。
現在は精神科訪問看護師として月に約100件の訪問をしている。
精神科訪問看護では、薬物療法などの治療が継続して受けられるようにする支援、ご利用者様やご家族の悩みや困りごとを一緒に明確にし、解決する方法を考え、行動できるように支援している。
ウェルネスナースとして女性が健康でいるための情報を発信している。
執筆・講座
「いつも疲れを感じている40代女性がセルフケアを身につけ元気を取り戻すためのお話会」/ウェルネス講座
「自分で心とからだを元気にするためのブログ」/note