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看護師が解説!慢性疲労症候群①慢性疲労症候群ってなに?
休憩や睡眠をとっても、とれない疲れがあります。頑張ろうとしても、思うように体が動かないこともあります。そのような症状が続く時は慢性疲労症候群という病気かもし…
「だるい」「朝起きられない」「休日にゴロゴロしても休んだ気がせず、疲れが残っている」といった状態が続いている方は多いのではないでしょうか。
疲労の回復には努めていても、疲労とは何かを考えることは少ないかもしれません。
疲労には種類があり、原因も明らかになってきています。
疲れを感じる時はどんな時なのか、なぜ疲れるのかを知ると早めの対策ができるようになり、慢性的な疲労を予防することにつながります。
この記事の目次
はじめに
日本リカバリー協会が全国10万人に調査した「日本の疲労状況2023」では、20~79歳の「疲れている人」が7234.4万人と約8割に上ると発表しています。
疲労の原因がストレスであるということは、多くの方が知るところだと思います。しかし生きていく上でストレスは避けられず、疲労は溜まります。
1つ目の記事でご紹介したように、疲労の蓄積は慢性疲労症候群に移行する可能性があります。
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疲労は「痛み」や「発熱」と並ぶ、体が発する3大アラームの1つです。
疲労を感じることは必要であり、その時に休めるかどうかが大切です。
この記事では疲労について知り、自分の体調を確認する目安についてお伝えします。
疲れとは何か
疲労は健康を保つために必要な信号
疲労とは、肉体的にも精神的にも自分の限界を超えた仕事や出来事に直面した時に、回復のための休息を必要としている状態です。
・朝起きるのがつらい
・全身がだるく何をするのもおっくう
・気力がない、やる気が出ない
・集中力が続かない
・考えがまとまらない
・いつも、たまらなく眠い
・食欲がない
・肌が荒れて化粧のりが悪い
・目が疲れる
・腰痛に悩まされている
・肩がこる
このような「体」と「心」のパフォーマンスが低下している時が「疲れている」といえるでしょう。
疲労は、「痛み」や「発熱」と同じように、人間が体を健康に保つために必要な危険信号です。
疲れを感じている時に「まだ大丈夫」と、疲れをそのままにすると重大な病気につながることもあります。
疲労には2つの種類がある
①生理的疲労
「もうダメだ。明日は起きられないかも」
と思っていても、一晩ぐっすり眠れば元気になる。もしくは2~3日のんびり過ごせば次第に元気になるのが生理的に起こる普通の疲れです。
疲労で受けたダメージを心身も、睡眠や休息によってきちんと回復しています。
②病的な疲労
長時間眠っても、週末の休みを寝て過ごしても、いつもすっきりしない。仕事が気になる、心配事で眠れない日々が続くなど、心身に異常が生じているのに「私は元気」と疑わないような状態は病的な疲れです。
いつか倒れてしまう可能性があり危険です。
疲労の原因となる5つのストレス
①人間関係や仕事上で感じる精神的なストレス
職場や家庭、友人関係の人づき合いの中で感じる不協和音や、仕事のプレッシャーなどから生じるストレス
②過重労働などによる身体的なストレス
残業などの過重労働やスポーツのオーバートレーニングなど、体を酷使することで起こる身体面のストレス
③紫外線や騒音などによる物理的なストレス
細胞内のタンパク質や遺伝子を傷つける強い紫外線や騒音、季節ごとの厚さや寒さなどの物理的なストレス
④化学物質や残留農薬などの化学的なストレス
新築住宅で問題になりがちなホルムアルデヒドのような化学物質や、野菜の残留農薬のような化学物質によるストレス
⑤ウイルスや細菌などの生物学的なストレス
かぜやインフルエンザ、O-157、寄生虫などの人間をおびやかす様々なウイルスや細菌感染によってもたらされるストレス
この5つのストレスが絡み合い、体内の神経系や免疫系、ホルモンなどの内分泌系のバランスが崩れると疲労を感じるようになります。
疲れている時の体の反応
自律神経の乱れ
自律神経は「交感神経」と「副交感神経」に分けられ、それぞれが異なる働きをします。
交感神経は、活動する時に働く神経で、副交感神経は、休憩やリラックスする時に働く神経です。
交感神経と副交感神経の働きは1日の中でリズムがあり、時間帯によって変化しているのも特徴です。
仕事や学校などで活動する日中は交感神経が優位になり、休息や睡眠に向かう夜は副交感神経が優位になります。
このように交感神経と副交感神経はその時々の状況に応じて交互に働き、全身の状態が最適になるように微調整しています。
ところが疲労の原因となる5つのストレスが同時期に重なると、自律神経のバランスが乱れ、この微調整がうまくいかなくなります。
交感神経が夜になっても働き副交感神経が休んだままになってしまうと、不眠や、いくら寝ても疲れが回復しない状態になることもあります。
免疫力の低下
下の図は睡眠時間が短いほど風邪にかかりやすいことを示しています。
18~55歳の健康な男女164名の7日間の睡眠時間を記録し、1日あたりの平均睡眠時間でグループ分けを行った。その後、風邪ウイルスを鼻に投与し、風邪の発症率を比べた。
出典: Prather AA, et al. Sleep. 2015; 38:1353-9.
細菌やウイルスに対する免疫力は睡眠中に保たれ、強化されます。
睡眠不足が続くと免疫力が落ちてしまいます。そのため風邪などの感染症にかかりやすくなってしまいます。
睡眠時間だけではなく眠りの質も免疫力に影響します。
十分な時間眠っていても、眠りが浅くて夜中に何回も起きるなど睡眠の質が悪いと免疫力の低下を招いてしまいます。
セロトニンの低下
免疫力が低下すると、体の中にあるウイルスが活性化します。
体の中のウイルスが活性化すると、体を守るために必要な物質(インターフェロンなどの免疫物質)を大量に作り始めます。
しかしストレスがかかり続けると自律神経(交感神経・副交感神経)の働きは乱れたままです。
そのため睡眠の質の低下が続き免疫力が上がらず、ウイルスはさらに活性化し、免疫物質を過剰に作るという流れを繰り返すことにつながります。
体を守るための免疫物質は、ウイルスが増えるのを抑える働きをしています。
しかしウイルスが増え続けると、脳内でも免疫物質が作られ、脳の働きに悪影響を及ぼす可能性があります。
例えば免疫物質のインターフェロンは、神経伝達物質のセロトニンの働きを妨げます。
セロトニンは脳の興奮を抑え、心身をリラックスさせる効果があります。
セロトニンの働きが妨げられると、抑うつや体中に痛みがおこることがあります。
ホルモンの乱れ
脳・甲状腺・膵臓・卵巣・精巣などの臓器からホルモンが作られます。
ホルモンは生命の維持や体が正常な機能を保つ働きがあります。
もう少し簡単にいうと、内臓の働きを調節する物質がホルモンです。
ストレスを受けると体を守るために分泌(ぶんぴつ)されるホルモンがあります。
しかし長い間ストレスを受け続けると、ホルモン分泌のバランスが乱れ、無気力になったり、眠れなくなったりと心身の不調をまねくことがあります。
疲れのチェックリスト
下の表は、疲労度を自己診断するためのチェックリストです。
各項目の白い点数欄に、「全くない」から「非常に強い」まで当てはまる点数を記入します。
記入が終わったら同じ系列の点数を合計すると、身体的、精神的それぞれの疲労度合いがわかります。
両方を足すと総合評価がわかります。
「疲れたな」と感じたら、このようなリストを使って疲れ具合をチェックしてみることもできます。
おわりに
ストレスには5つの種類があり、ストレスによって自律神経や免疫力、ホルモンに影響があり疲れの原因になるということをご紹介しました。
また疲労を感じるということは、体を健康に保つためのアラームであり休む必要があります。
疲労を感じた時にはどのような対処方法があるのかを、次回詳しくお伝えします。
この記事を書いた人
清水明日香
プロフィール
看護師経験23年。総合病院(消化器外科・内科、整形外科)、リハビリテーション病院(地域包括支援病棟)、老人施設で勤務。
現在は精神科訪問看護師として月に約100件の訪問をしている。
精神科訪問看護では、薬物療法などの治療が継続して受けられるようにする支援、ご利用者様やご家族の悩みや困りごとを一緒に明確にし、解決する方法を考え、行動できるように支援している。
ウェルネスナースとして女性が健康でいるための情報を発信している。
執筆・講座
「いつも疲れを感じている40代女性がセルフケアを身につけ元気を取り戻すためのお話会」/ウェルネス講座
「自分で心とからだを元気にするためのブログ」/note