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リースバックとは? をわかりやすく解説!
リースバックとは、簡単にいうと「不動産を売却して、そのまま賃料(リース代)を払うことで住み続けられる制度」、つまり、家を売っても住める(要家賃)という制度です。
一般的には自宅を不動産会社などに売却して、売却した相手先と自宅の賃貸借契約を結びます。
自宅を「売却」しても自宅を「賃借」するので自宅を借り続けることができます。
このリースバックをすると、不動産の「売却」により売却代金というまとまった資金を受け取ることができ、なおかつ「賃借」により住み慣れた自宅に住み続けることができます。
さらに、売却した自宅を買い戻せる(再購入できる)特約をつけることができる場合もあります。
ここからはリースバックサービスを提供している不動産会社に自宅を売却した場合を例として説明していきます。
リースバックのメリットとは?
リースバックのメリットは主に4つあります。
- 売却後も自宅に住み続けられる
- 「所有していること」のリスクを削減できる
- 空き家対策になる
- 近所の人に気づかれない
1.売却後も自宅に住み続けられる
まとまった資金を手に入れるために自宅を売却すると、通常は別の家を探して引っ越しなくてはなりません。
しかし高齢になるほど、新居を購入するために住宅ローンを組んだり、賃貸住宅を借りたりするのは難しくなっていくのが現状です。
リースバックなら購入した不動産会社と賃貸借契約を締結することで、自宅を売却した後も同じ家に住み続けられます。
2.「所有していること」のリスクを削減できる
自宅を所有していると、価格下落や修繕、災害による建物の損壊などのリスクがあります。
また、変動金利の住宅ローンが残っている場合は、金利上昇で返済額が増加するかもしれません。
特に災害などは不動産の資産価値を大きく目減りさせてしまう可能性がありますが、リースバックで自宅を売却すれば、名義が不動産会社になるので、これらのリスクは不動産会社が負うことになります。
3.空き家対策になる
今お住いの方が逝去され、その後継続的に住む方がいなくなってしまう場合は住宅が空き家になってしまいます。
住む予定のないご家族が相続してしまい処分に困るケースなどは、リースバックを活用すると名義が不動産会社になるため、生前に親がリースバックをしておくことで子は「住まない家」を相続する必要がなく、空き家の対策としても注目されています。
近所の人に気づかれない
リースバックは家のオーナーが変わるだけで、住む人は変わらないため、売却の事実がご近所に知られることがありません。
リースバックのデメリットとは?
ここまでリースバックのメリットを書いてきました。
それでは、リースバックにはどんなデメリットが考えられるでしょうか?
リースバックで考えられるデメリットは主に3つあげられます。
- ずっと住み続けられない可能性もある
- 自宅の名義が変わる
- 売却価格が市場価格よりも安くなる
ずっと住み続けられない可能性もある
リースバックの多くは賃貸契約期間が定められている「定期借家契約」で賃貸借契約を締結しますが、「定期借家契約」の場合は最初に何年間の契約と決めてしまうので、その期間を超えてずっと住み続けられる保証はありません。
貸主と借主の合意があれば再契約は可能ですが、貸主である不動産会社の事情で再契約ができず、売却から数年後には引っ越しを迫られる可能性もあります。
リースバックでも賃貸借契約の期間を越えて家に住み続けたい場合は、定期借家契約ではなく、普通借家契約を締結してくれる不動産会社を選ぶと良いでしょう。
自宅の名義が変わる
リースバックで自宅を売却すると、自宅の名義は不動産会社等に変更になります。
名義が自分ではないということは、価格下落や災害などのリスクは無くなりますが、自分の好きなようにはできなくなります。
たとえば、「リフォームや建て替えをしたい」と思っても、買い取った不動産会社の許可なく行うことはできません。
売却価格が市場価格よりも安くなる
リースバックは基本的に自宅の売却価格が市場価格よりも安くなります。
市場価格よりも安くなる理由は、貸主である不動産会社が売主(借主)の家賃滞納リスクや買い戻しに応じるために自由に売買できない制約などを抱えているからです。
また、リースバックの賃料はその不動産の売却価格を基準に決定されているため、仮に高く売却できたとしても、その場合は管理費、修繕費、固定資産税を考慮して計算されるため、家賃が高くなる傾向があります。
リースバックを活用した事例
老後の生活資金を調達
戸建てにお住いのAさんは、現在70歳。
お子様は既に独立されており数年前に体調を悪くし、その後は年金生活をしながら自宅で療養されています。
現在ご自宅の住宅ローンは完済していますが、手元に現金は少なく、今後の生活資金面で不安がありました。
また、いつ持病が悪化するかわからない状況であり、入院や施設入所となった場合の資金面や将来的に自宅が空き家になってしまう点も心配していました。
そこで、リースバックを活用して自宅に住み続けながらもまとまった資金を調達することで、今後の生活資金や入院費等の心配を解消することができました。
相続対策
戸建てにお住いのBさんは、現在80歳(持病をお持ち)。
2人の子どもはそれぞれ離れたところに住んでいます。
二人とも結婚して家族がいるため、Bさんの自宅を相続するつもりはないようです。
財産は自宅と自分1人で生活していけるぐらいの預貯金のみでしたので、Bさんが亡くなった後、財産を分けるときに困ってしまうのでは、と心配していました。
また、ご自身の年齢や持病も気にされており、なるべく早く解決したいご希望でした。
そこで、リースバックを活用して、分割できない財産である不動産を現金化することで、Bさんが亡くなった後の心配を解消することができました。
早く解決したいご希望も叶えることができ、Bさんも二人のお子様も安心されておりました。
まとめ
リースバックについて見てきましたが、自分の家はどれくらいで売れるのかなど、まだまだ疑問に思うことも多いと思います。
そういった場合、リースバックを対応している会社にご相談いただき、メリットデメリットをきちんと理解した上で利用をご検討いただければと思います。
お子さんが将来的にも実家に戻る予定はないだろうというおうちですと、配偶者が介護施設に入るタイミングがお住まいをどうするのか考えてみるひとつの契機になるようです。
ただ、建物や土地の名義人(共有名義の場合、そのうちのひとりでも)が認知症になっていると、不動産の売却、リースバックは選択肢に入れることができませんし、賃貸に出すことすら難しいです。
不動産が負動産になる前に、ご本人、ご家族がどうしたいのかの方針を決め、それに備えておくのはとても大切です。
この記事を書いた人
安川 寛嗣(やすかわ ひろし)
<プロフィール>
東京・札幌・大阪・広島・福岡・沖縄に拠点を展開するみつ葉グループに所属。
福岡オフィスの相続事業部のマネージャーを務め、九州全域の相続・信託業務に携わっております。
グループ全体で約1500件の相続に関する相談対応実績を誇り、お客様第一主義を徹底して対応しております。