目次

身近に悲しんでいる人がいるあなたへ ―「何かをしてあげる」よりも「ただ、ともにある」

緑の丘

AI 生成コンテンツは誤りを含む可能性があります。

あなたの身近に大切な人を亡くされた方がいたら、あなたはどのような言葉をかけるでしょう。あるいは、どんな行動をとるでしょうか。死別の悲しみは人によって異なり、よかれと思った言動が、かえって相手を傷つけることも少なくありません。「悲しみに寄り添う」とはどういうことか改めで考えてみましょう。

この記事の目次

1.寄り添うとは

看護や介護の場でよく『患者さんに寄り添う』という言葉が使われます。

私自身も使ってきましたが、「本当に寄り添えているのか」「そもそも寄り添うってどういうこと」と、時折思うのです。

「悲しみに寄り添う」とは、相手の苦しみを理解しようと努め、そばにいて支えることです。けれども、それは決して簡単な事ではありません。

悲嘆の中にいる人の隣に居続けることは、想像以上に精神的エネルギーを消耗します。

また、どれだけ共感しようとしても、その体験を完全に理解することはできません。

「つらいね、わかるよ」と軽々しく言うことで、「簡単にわかるなんて言わないで」と感じさせてしまう場合があります。

重要なのは、相手の悲しみを完全に理解できなくても、理解しようとし続ける姿勢を持つことです。

そのうえで人が大切な人を亡くしたとき、どのような反応を示すのかを知っておくと、より適切に寄り添えるでしょう。屋内, テーブル, 小さい, 座る が含まれている画像

AI 生成コンテンツは誤りを含む可能性があります。

2.大切な人を亡くす体験とは

イギリスの精神科医ジョン・ボウルビィは、死別の悲嘆過程を4つの段階に分けて説明しています。

①ショック・無感覚な段階

 大切な人を亡くした直後で、現実が受止められず、頭が真っ白になる。

②亡くなった人を思慕し捜し求める段階

 大切な人の死を受け容れ始めるが完全に受け容れられず、「会いたい」気持ちが強まる。

③混乱と絶望の段階

 大切な人の死を現実として実感し、深い悲しみや怒り、孤独感が生じ「なぜ自分だけが残されたのか」と人生の意味を見失う。

④様々な程度の再建の段階

 亡くなった人を心に抱きながら、少しずつ日常生活を取り戻し、思い出と共に新しい人生を歩き出す。

 

ただし、これらは直線的に進むのではなく、行ったり来たりしながら、それぞれのペースで時間をかけて進みます。挿絵 が含まれている画像

AI 生成コンテンツは誤りを含む可能性があります。

3.悲しみからの回復

では、死別を経験した人は、どのように回復していくのでしょうか。

死別へのコーピングに関する二重過程モデルという考え方があります。

コーピングとは、ストレスに対処するための具体的な行動や方法のことです。

二重過程モデルは喪失志向と回復志向があり、この2つの志向を行き来しながら回復へと向かうと説明されています。

喪失志向は、亡くなった人のことを考えて悲しみに浸る時間を示します。

回復志向は、生活を整え、仕事や家事に取り組み、前に進もうとする時間です。

大切な人を亡くしたとき、直後は常に悲しみの中にあるでしょう。

しかし、時間の経過と共に悲しみに浸っているだけでなく、立ち直りの時間が出てきます。

それは、お腹がすいてご飯を食べているときに「おいしい」と感じる瞬間だったりします。温かいお風呂に入ったときの「気持ちいい」かも知れません。

少し気持ちが緩み、次の瞬間には亡くなった人を思い出す。

そんな繰り返しの中で、回復志向の時間が少しずつ増えていくのです。

このように「悲しいとき」と「前に進むとき」を行き来する揺らぎこそが、自然で健康的な回復過程とされています。

4.「してあげる」ではなく「ともにいる」こと

では、悲しみの中にいる人に対して、周囲の私たちにできることは何でしょうか。

冒頭で「寄り添う」とは、共感的な態度でそばにいて支えることといいました。

先ずは、何か特別なことを「してあげよう」と思わず、普段通りに「ただそばににいること」から始めてみましょう。

言葉が見つからないときには無理に話さなくてもよいのです。

静かにそばにいて、相手が話し始めたら耳を傾ける。これだけで十分なこともあります。

言葉をかけるときには、相手の反応をよく見て言葉を選びましょう。

同じ言葉でも、受け取り方は人それぞれです。

正しい言葉ではなくても、誠実な気持ちがあれば、あなたを大切に思っている気持ちは伝わると思います。

寄り添いの気持ちを伝えるための言葉を紹介します。

・「おつらかったですね」…感情に共感する言葉で、相手の心を否定しません。

・「何も言葉が見つかりません。でも、そばにいます」…無理に励まさず、ただ「いる」ことを伝えます。

・「どうかご無理なさらず、ご自分のペースで」…回復を急がさない姿勢を示します。

・「お気持ち、少しだけでも話せそうなときがあれば、いつでも聞かせてくださいね」…話す、話さないの選択を相手に委ねています。

「◯◯さん(故人)との思い出を、よかったら教えてください」…故人の存在を大切に扱うことになり、遺された人の癒しになります。

次に控えたい言葉を紹介します。

「時間が経てば忘れるよ」…忘れたいわけではなく、「忘れたくない」こともあります。

「もう泣かないで」…感情を押し殺させる言葉になりやすいです。

「あなたがしっかりしないと」…支えるどころか、プレッシャーになる可能性があります。

「きっと天国で見守ってるよ」…宗教観の違いや受け取り方によっては反発や痛みを与えることがあります。
背景パターン

AI 生成コンテンツは誤りを含む可能性があります。

5.自分自身も大切に

身近な人が悲嘆に暮れていたら、何とか力になりたいと思いますよね。

その人が、あなたにとって大切な人であればなおさらです。

悲しみが痛いほどわかって、同じように辛くなることもあるかも知れません。

これは「共感疲労」と呼ばれ、共感するあまり知らない間に心が疲れてしまうのです。

眠れない、気力が湧かない、集中できないなど、生活に支障が出ることもあります。

相手を支えるためにも、先ずはご自身の心身の健康を整えて、適切な距離をたもって寄り添うことが大切です。

必要に応じて専門職にバトンを渡す勇気を持つことが、相手と自分を守ることにもなります。
森の中の花

AI 生成コンテンツは誤りを含む可能性があります。

まとめ

死別の悲しみは、人それぞれ異なる形で現れます。理解しきれない悲しみを前に戸惑うのは当然のことです。その戸惑いを隠さず、誠実に「そばに居続ける」ことこそが、相手を支える大きな力になります。支える自分のことも大切にしながら、長く寄り添える関係を作っていきたいものです。

引用・参考文献

武井優子・嶋田洋徳・鈴木伸一 2011 喪失体験からの回復過程における認知と対処行動の変化 Japanese Journal of Counseling Science, ,44,50-59

死別の悲嘆を癒す遺族ケアのあり方 (医療新聞社)

公益社団法 人日本心理学会

NPO法人リヴオン

この記事を書いた人

看護師:青木容子 看護師経験30年 (病院勤務通算8年、身体障害者施設3年、訪問看護15年、そのほか新生児訪問指導など) 現在は特別養護老人ホームなどで勤務する傍らCANNUS新長田を運営中。 紙屋克子氏らから、NICD:意識障害・寝たきり(廃用症候群)患者への生活行動回復看護を、黒岩恭子氏からは黒岩メソッドを学び、実践するとともにそれらの普及を目指している。

看護師:青木 容子
〈プロフィール〉

看護師経験30年

(病院勤務通算8年、身体障害者施設3年、訪問看護15年、そのほか新生児訪問指導など)

現在は特別養護老人ホームなどで勤務する傍らCANNUS新長田を運営中。

紙屋克子氏らから、NICD:意識障害・寝たきり(廃用症候群)患者への生活行動回復看護を、黒岩恭子氏からは黒岩メソッドを学び、実践するとともにそれらの普及を目指している。

よろしければシェアをお願いします
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
この記事の目次