
「腰が痛いけど我慢できるから様子を見よう…」と考えている人は多いと思います。しかし、その腰痛、ほんとうに大丈夫ですか?
次第に足のしびれや痛みが強くなり受診した結果『脊柱管狭窄症』と診断される人は少なくありません。今や65歳以上の10人にひとりが脊柱管狭窄症と言われていますので、もはや他人事ではありませんね。
この症状は、長年腰椎に負担をかけてきた結果ですが、これからどうするかで今後の生活が分かれてきます。
そこで今回は、脊柱管狭窄症の原因と予防策をお伝えしていきます。
この記事の目次
1.脊柱管狭窄症とは?
脊柱管は背骨・椎間板・関節・靭帯などで囲まれた神経が通るトンネルのようなものですが、長年の経過により周囲の組織が変形すると脊柱管が狭くなります。
脊柱管が狭くなると、中を走る神経が圧迫されて腰痛、下肢のしびれや痛み、力が抜けたような感じが症状として現れてきます。これが『脊柱管狭窄症』です。
脊柱管狭窄症は安静時にはほとんど痛みを感じませんが、症状としてはどのようなものがあるのでしょうか?
①腰部から足の先にかけて痛み・しびれ
背骨を反らしたり歩く時、脊柱管に挟まれた神経が圧迫されてお尻から足先にかけて痛みやしびれが出現します。
②立つ時、歩く時に痛みが増す
立ち上がる時には背骨が伸びて脊柱管が狭くなるため、神経が圧迫されて腰痛や足先にかけてしびれが増強します。逆に座った時には痛みやしびれが緩和されます。
③間欠跛行
間欠跛行とは歩く時に痛みが増強されるため、休憩をしては再び歩き始める歩行です。200m歩いただけでも痛みやしびれが出るため長い距離を歩けなくなってしまいます。
このような痛みは前かがみになると楽になるため、シルバーカー、買い物カートのような姿勢を支えるものがあると痛みなく歩くことが出来ます。
脊柱管狭窄症に至るまでには原因となる腰椎の病気がありますので説明します。
3.脊柱管狭窄症を起こしやすい病気
①変形性腰椎症
長年、腰に負担をかけた結果、軟骨がすり減り椎間板が変性します。次第に腰椎が変形し腰痛、足のしびれが出現する病気です。重いものを持つ仕事、不適切な姿勢を繰り返すことで発症します。
②腰椎ヘルニア
椎骨の間でクッションの役割を果たしている椎間板に負担がかかることで椎間板の中心にあるゼリー状の組織が脊柱管内に飛び出した状態です。これにより坐骨神経につながる神経根が障害され、お尻や太ももの後ろ、足先に痛みやしびれといった神経痛の症状が出現します。
中腰で重たいものを持ったり、前かがみの姿勢が多い職業の方は椎間板に負担をかけるため発症しやすいと言われています。
③腰椎分離症・腰椎すべり症
(腰椎分離症)
脊柱の疲労骨折のことをいいます。腰を大きく反らせる動きや体をひねるテニスやゴルフを長年行っていると腰椎の一部に疲労骨折を起こしている場合があります。長年骨にひびが入っている状態でも何かのきっかけで骨が割れてしまった時、腰椎分離症と診断されます。
若い時は神経痛は起きにくいですが高齢になるにつれて神経を圧迫するため痛みやしびれが強くなります。
(腰椎すべり症)
すべり症も同様、長年の腰椎の負担が原因です。腰椎がずれることで脊柱管が狭くなり神経根が圧迫されて痛みが出現します。立ったり歩いたりするとお尻から太ももにかけてしびれや痛みが出現します。少し休むとまた歩くことが出来るようになります。
いずれも若い時は神経痛が起きにくいですが、高齢になるにつれて神経を圧迫するため痛みやしびれが強くなります。
原因を知り早めに対策をすることが大切になります。
4.脊柱管狭窄症の治療と予防策
脊柱管狭窄症はレントゲンを撮るだけでは診断がつきにくいためMRIで神経や椎間板などの組織を詳細に確認し、CT検査でトンネルの狭窄を確かめていきます。
さらに診断を確定するために神経をブロックする注射や造影剤を注入して行う検査を追加し、確定した結果にもとずいて治療が開始されます。
①保存療法
皮膚を切る、注射をするなど体を傷つけずに腰痛や下肢の痛み、しびれを緩和する方法です。
(薬物療法)
①消炎鎮痛剤(痛み止め)
②腰椎筋弛緩薬(筋肉を緩めてコリをとる)
③プロスタグランジン製剤(神経の血行を改善)
④ビタミンB12製剤(末梢神経の栄養成分)
(リハビリ療法)
①骨盤けん引:首や腰をゆっくりと引っ張り、伸ばしていきます。脊柱の隙間を広げて骨
圧迫を軽減する治療法です。
②電気治療:低周波、高周波の電波を利用して行う治療法です。神経や筋肉に直接作用し血液の流れを改善し痛みを緩和します。
③温熱療法:温かい熱を当てて筋肉の緊張をほぐし、痛みを緩和する治療法です。
ホットパック・パラフィン療法・赤外線療法・超音波療法などがあります。
※パラフィン療法とは温めて液体にしたパラフィンに患部を浸す治療法です。
④マッサージ:手のひらで摩る・揉む・圧迫など、物理的な刺激を通して血液循環を促進します。痛みの緩和、リラクゼーション効果があります。
(ブロック治療)
痛みのある個所に局所麻酔などを注射して痛みを緩和する治療法です。即効性がありますが効果は数時間~数週間なので完全に痛みがなくなるまで複数回行う必要があります。
①手術
保存療法を行っても痛みやしびれが改善しない場合は医師と相談し手術を選択します。手術は大きく二つに分けられます。
②除圧術
神経が圧迫されている部分の圧力を取り除く方法です。脊柱がグラグラせず安定している場合に適用されます。脊椎管を広げて神経の通り道を確保する手術方法です。
③除圧固定術
除圧術で神経の圧迫を取り除いた後に、金属などで固定する手術法です。腰椎すべり症など脊椎が不安定な場合に行われる手術方法です。
いずれも術後は一時的に痛みやしびれが生じ、筋力低下が起こる可能性があります。また、傷口からの感染や金属を固定した隣接の腰椎への負担が増すことで痛みが現れることがあります。医師から十分に説明を聞いて慎重に判断することが大切です。
5.まとめ
10人にひとりが発症している脊柱管狭窄症ですが、原因と対策を知ることで、痛みのない生活を送ることが可能になります。
痛みがあるということは、神経が異常を知らせているサインですから、まずは放置せずに原因を確かめ、早めに対処することが大切です。
神経は体の各器官と連携し、全身の機能に大きく関わっていますので「たかが腰痛これくらい大丈夫かな?」と放置しないで早めに対処していきましょう。
参考資料
シンセルクリニックコラム
日本赤十字愛知医療センター名古屋第二病院
日本整形医学会
この記事を書いた人
福井三賀子
<プロフィール>
小児内科、外科、整形外科の外来と病棟勤務で看護の基本を学ぶ。
同病院の夜間救急ではアルコール中毒、火傷、外傷性ショックや吐血、脳疾患など多くの救急医療を経験。
結婚後は介護保険サービス事業所で勤務しながらケアマネジャーの資格を取得。6年間在宅支援をするなかで、利用者の緊急事態に家族の立ち場で関わる。
在宅支援をしている時に、介護者である娘や妻の介護によるストレスが社会的な問題に発展していることに気づき、心の仕組みついて学びを深めると同時に更年期の女性について探求を始める。
現在は施設看護師として入居者の健康維持に努めながら50代女性対象の執筆活動やお話会、講座を開講している。
<経歴>
看護師経験20年。
外来、病棟(小児・内科・外科・整形・救急外来)
介護保険(デイサービス・訪問入浴・訪問看護・老人保健施設・特別養護老人ホーム)
介護支援専門員6年
<資格>
看護師/NLPマスタープロテクショナー/プロコミニュケーター
<活動>
講座「更年期は黄金期」
ブログ「幸せな更年期への道のり」
メルマガ「50代女性が自律するためのブログ」
スタンドFMラジオ「幸せな更年期への道のり」
動画配信YouTube「看護師mikakoの更年期チャンネル」