前回のコラムでご紹介した歯周病の原因菌(Pg菌)はとても厄介な存在です。
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この菌は酸素を嫌うため、歯周ポケットの奥に多く見られます。
増殖するために血液に含まれるたんぱく質やアミノ酸、鉄といったものを必要とします。
それが原因で歯茎に炎症を起こし、血液がにじみ出る状態を作ります。
よく歯周病と口臭の問題が取り上げられますが、このPg菌がたんぱく質を餌としていることも関係があるようです。
血液を栄養にするのであれば、歯磨きをするときに血が出ないようにしたほうが良いでのは?と思う方もいますが、この考えは危険です。
Pg菌への対策は「歯と歯茎をよく磨き歯石を作らないこと」や、Pg菌は酸素に弱いため「歯磨きで歯垢をかき出して酸素に触れる状態を作っておくこと」が大切ですので、日々のハミガキは継続して行いましょう。
この記事の目次
歯周病菌が糖尿病を引き起こすワケ
一見全く関係の無いように見える病気ですが、カラダというものはすべてが連動的に動いているため、実は密接に関係しています。
以前のコラムでPg菌が歯茎に炎症を起こし、カラダの中へ侵入すると記載しましたが、血管の中に菌が侵入してしまうと、炎症を引き起こすTNF-αという物質が作られます。
この物質は血糖値を下げるインスリンの働きを阻害するため、結果として血糖値が高い状態が続いてしまい、糖尿病を引き起こす原因となるわけです。
現に歯周病のコントロールを行った結果、HbA1c(糖尿病の診断指標)が下がったという報告もあります。
また逆のパターンもあり、糖尿病が原因で歯周病リスクが高くなることも報告されています。
糖尿病や歯周病はどちらも血液や血管に関連する病気ですが、こういった疾患は他の病気の引き金になりうるため、予防と対策が非常に重要です。
ガンとの関連性の仕組みはまだはっきりとはわかっていませんが、食道がん細胞の中からPg菌と同じくレッドコンプレックスに指定されているT.denticola(Td菌)が多く見つかったことが報告されています。
これらの菌への対策が求められる中、近年、ウコンに含まれるクルクミンにPg菌のはたらきを抑制する効果があることが発見されました。
化学的に生成された成分ではなく、植物由来の成分で予防ができるのは非常に安心感があります。
オーラルケアは栄養の基本
栄養の基本は、多種多様な食材からさまざまな栄養を摂ることにありますが、歯周病によって歯がなくなると、噛み切れないものが出てくるため、嗜好性の変化や偏りが生じ、食の多様性が失われます。
歯の1本や2本抜けただけで…と思わないでください。
1本でも抜けてしまい、それをそのままにしておくと歯並びが崩れ、噛み合わせが悪くなります。
するとうまく食材が噛み切れなくなったり、食塊形成がうまくいかずにむせてしまったりして、食事が楽しいものでなくなってしまいます。
こうしたことが原因か定かではありませんが、歯がない状態が長く続くと認知症発症リスクが高まることが分かっています。
健康維持は食事が基本ではありますが、オーラルケアを怠るとその食事に影響を及ぼします。
おいしく楽しく食事を楽しむためにも、毎日の歯周病予防を習慣にしましょう。
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≪参考文献≫
①花澤ら Porphyromonas gingivalis 線毛 ―その病原性因子としての機能―
②京都大学 大学院医学研究科 微生物感染症学分野
③厚生労働省 e-ヘルスネット
④社団法人岩見沢歯科医師会
⑤TOKYO FM ホンダスマイルミッション
⑥ドクターズファイル 泉井秀介先生
⑦小川智久 口腔細菌がおよぼす全身への影響
⑧テーマパーク8020
⑨医療法人徳真会グループ コラム
この記事を書いた人
沢目 晃誠(さわめ こうせい)
■保有資格
・管理栄養士
・調理師
■プロフィール
高校で調理師免許を取得した後、栄養学に興味を持ち管理栄養士養成大学へ入学。
卒業後、手指消毒用アルコールや石鹸,健康食品メーカーのサラヤ株式会社にて営業職を経験。
現在は食品部門の商品開発に従事。商品に関連する情報発信も行っている。