集団予防接種が原因でB型肝炎ウイルスに持続感染した方は、「B型肝炎訴訟」を提起することにより、給付金を受けとれる可能性があります。
無症状の方であっても給付金の対象になる場合があるので、ご自身が対象ではないかと少しでも心当たりのある方は、お早めに弁護士へご相談ください。
この記事では、B型肝炎訴訟の手続き・給付対象者・給付金額などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
この記事の目次
1、B型肝炎訴訟とは?
「B型肝炎訴訟」とは、国による集団予防接種によってB型肝炎ウイルスに持続感染した方が救済を受けるため、国に対して提起する損害賠償(国家賠償)請求訴訟です。
(1)予防接種禍に対する国家賠償請求訴訟
かつて行われていた国による集団予防接種では、注射器が使い回される不衛生な運用がなされていた時期がありました。
その結果、接種対象者の血液中に含まれていたB型肝炎ウイルスが注射針に付着し、それが他の接種対象者に注射されることで集団感染が発生したのです。
このような事態を受けて、全国各地でB型肝炎ウイルスの感染被害者が、国を相手に国家賠償請求訴訟を提起しました。
裁判所は、B型肝炎ウイルスの感染被害の責任を、集団予防接種の衛生管理に関する規制権限を行使しなかった国にあると認定し、原告団の請求を認めました。
最終的に国と原告団は和解金の支払いについて合意し、その際に交わされた基本合意書の内容をベースとして、現在ではB型肝炎ウイルスの感染被害者に対する給付金制度が設けられています。
給付金制度では、感染被害者が国から給付金を受け取るために「B型肝炎訴訟」を提起することが要求されています。
B型肝炎訴訟の中で、原告(感染被害者)が給付要件を立証することで、国が和解に応じ、その結果としてB型肝炎給付金が支払われるのです。
(2)B型肝炎訴訟の手続きの流れ
B型肝炎訴訟の大まかな手続きは、以下のとおりです。
①国家賠償請求訴訟の提起
裁判所にB型肝炎訴訟(国家賠償請求訴訟)を提起します。
B型肝炎訴訟は、原告自身の住所地を管轄する裁判所に提起することができます。
②給付要件の主張・立証
後述する和解対象者の類型(一次感染者・二次感染者・三次感染者・相続人)ごとに定められた給付要件を主張し、そのすべてを証拠によって立証します。
③国との和解が成立
給付要件をすべて立証することに成功した場合、国との間で裁判上の和解が成立します。
和解金額は、発症している具体的な症状に応じて決まっています(後述)。
④給付金の支払いを請求
和解調書の正本を「社会保険診療報酬支払基金」に提出すると、B型肝炎給付金の支払いを受けられます。
(参考:「特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等支給に関するもの」(社会保険診療報酬支払基金))
2、B型肝炎給付金の対象者は?
現行の制度上、B型肝炎給付金の対象者は「一次感染者」「二次感染者」「三次感染者」と、これらに該当する者の「相続人」です。
(1)一次感染者
一次感染者とは、集団予防接種によって直接B型肝炎ウイルスに持続感染した方を指します。
一次感染者の主な認定要件は、以下のとおりです。
- B型肝炎ウイルスに持続感染していること
- 満7歳になるまでに集団予防接種を受けていること
- 集団予防接種等における注射器の連続使用があったこと
- 母子感染でないこと
- その他、集団予防接種等以外の感染原因がないこと
(2)二次感染者(母子感染)
二次感染者とは、一次感染者からの母子感染によって、B型肝炎ウイルスに持続感染した方を指します。
二次感染者の主な認定要件は、以下のとおりです。
- 母親または父親が一次感染者であること
- 自身がB型肝炎ウイルスに持続感染していること
- 母子感染であること
(3)三次感染者
三次感染者とは、二次感染者(母子感染に限る)からの母子感染によって、B型肝炎ウイルスに持続感染した方を指します。
三次感染者の主な認定要件は、以下のとおりです。
- 祖母が一次感染者であること
- 母親または父親が、祖母からの二次母子感染者であること
- 自身がB型肝炎ウイルスに持続感染していること
- 母子感染あること
(4)一次感染者・二次感染者・三次感染者の相続人
一次感染者・二次感染者・三次感染者のいずれかに該当する方が、B型肝炎給付金を受給せずに亡くなった場合、給付金請求権は相続人の方に承継されます。
したがって、一次感染者・二次感染者・三次感染者の相続人に当たる方も、B型肝炎給付金を請求することができます。
3、B型肝炎訴訟で受け取ることのできる給付金額
(1)発症している具体的な症状
発症している症状が重ければ重いほど、給付金は高額となります。
なお、全く症状がない「無症候性キャリア」の方にも、一定の給付金が支給されます。
(2)発症から20年を経過したかどうか
旧民法には,「除斥期間」という不法行為に基づく損害賠償請求権の請求期限を意味する制度がありました。
本来であれば、除斥期間を経過した場合、国は感染被害者に生じた損害を賠償する責任を負いません。
B型肝炎給付金制度では、被害者救済の観点から、除斥期間を経過した感染被害者にも一定の給付金請求権を認めています。
ただし、除斥期間を経過していない感染被害者に比べると、給付金額は大幅に少なくなってしまうので要注意です。
<参考>
無症候性キャリア:集団予防接種を受けた日(二次感染者・三次感染者は出生時)から20年
肝がん・肝硬変・慢性B型肝炎:発症日から20年
死亡:死亡日から20年
(3)治療が継続中かどうか
肝硬変(軽度)と慢性B型肝炎については、治療が継続中の場合の方が、そうでない場合よりも給付金が高額となります。
以下の表に、パターン別の給付金額をまとめました。
| 除斥期間未経過 | 除斥期間経過済 |
---|
死亡・肝がん・肝硬変(重度) | 3,600万円 | 900万円 |
肝硬変(軽度) | 2,500万円 | 600万円(特定治療あり)
300万円(それ以外) |
慢性B型肝炎 | 1,250万円 | 300万円(特定治療あり)
150万円(それ以外) |
無症候性キャリア | 600万円 | 50万円 |
なお、一度B型肝炎訴訟で和解が成立した後に症状が進行した場合には、受給済みの金額との差額について、追加給付金を受給できます。
この場合、診断書等を社会保険診療報酬支払基金に提出すればよく、再びB型肝炎訴訟を提起する必要はありません。
4、まとめ
B型肝炎訴訟によって給付金を得るには、給付要件を証拠によって立証しなければなりません。
書面作成や証拠収集など、B型肝炎訴訟の準備には多大な労力を要しますが、弁護士に依頼すれば、ご本人の労力は大きく軽減されます。
あわせて読みたい
弟が認知症の母のお金を使い込んで…
人気司法書士の村山澄江先生が実際に対応したトラブルケースをモデルに、解決法のヒントをお届けします。※実際に登場する人物・所属・家族関係などはすべて架空のもので…
本記事監修:≪事務所 プロフィール≫
■事務所名:ベリーベスト法律事務所
当事務所は、北海道から沖縄まで国内60拠点以上を展開する法律事務所です。
個人のお客さまに向けては、交通事故、労働災害、B型肝炎給付金請求、遺産相続、離婚問題、刑事弁護、債務整理、労働問題、債権回収、消費者被害、外国人のビザ申請といった、幅広い分野の問題解決に取り組んでおります。
また、訴訟紛争、M&Aといった企業法務も対応しております。
「お客さまの最高のパートナーでありたい。」この理念を胸に、所員一丸となってお客さまの問題解決にあたってまいりますので、お困りのことがありましたらどうぞお気軽に当事務所までご相談ください。
関連リンク: https://bkan.vbest.jp/