人気司法書士の村山澄江先生が実際に対応したトラブルケースをモデルに、解決法のヒントをお届けします。
※実際に登場する人物・所属・家族関係などはすべて架空のものです。
「仕事で大変お世話になった“師匠”とも呼ぶべき75歳の男性。暮らしが心配で…後見人になりたいんです」
お世話になった75歳の男性。自宅にモノがあふれて認知症も心配に
これは、知人の75歳の男性の任意後見人になりたいという42歳の女性Gさんからの依頼でした。
「知り合いの75歳の男性のお宅に、モノがあふれかえっているんです。
自分が若い頃からお世話になっていた方なので、なんとかしてあげたいんです」と依頼者。
Gさんにとってこの男性は、事業の師匠と弟子のような関係とのこと。もうかれこれ20年以上の付き合いがあるそうです。
この75歳の男性は大きな資産を持っている人でした。
年齢とともに家の中の片付けが億劫になっていたようで、捨てることが苦手なので、モノがあふれかえっている現状。
暮らしについては、ヘルパーに買い物や掃除などを依頼しているようでした。近頃は物忘れが目立つので、認知症などが心配でもありました。
このままでは、万が一、認知症になったときに財産管理をする人がいないと、Gさんは本気でこの男性のことを心配しているようでした。
「任意後見契約」を締結
相談者であるGさんの依頼通り、75歳の男性の同意を得て、二人の間で「任意後見契約」を締結しました。
任意後見契約とは、将来、認知症などで自分の判断能力が低下した場合に、自分の選んだ人と、後見人になってもらうことを約束しておく契約です。
認知症になると自分の財産の管理ができなくなり、いくらお金を持っていても、自分ではお金が使えない事態になってしまいます。
自分の判断能力が低下した場合に備えて、自分に代わって、財産管理や必要な契約締結等をしてもらう任意後見人を決めておくことができるのです。
任意後見人は、主に財産の管理と介護や生活面の手配を行います。
任意後見契約を締結するには、任意後見契約に関する法律により、公正証書で契約を交わす必要があります。
本人の意思をしっかりと確認し、契約の内容が法律に従ったきちんとしたものになるように、長年、法律的な仕事に従事し、深い知識と経験を持つ公証人が作成する公正証書によらなければならないと定められているのです。
公証役場に足を運んで作成しますが、自宅や病院などに出張してもらうこともできます。
締結の際には、75歳男性のヘルパーさん立会いの下、本人の意思確認を行いました。
ヘルパーさんは当初、Gさんが「財産目当て」なのではないかとあやしんでいたようでしたが、Gさんと対面し、納得していたようでした。
75歳男性とGさんの間で任意後見契約を無事に締結でき、現在、Gさんは、男性を見守りながら、いつかのときに備えています。
75歳男性の遺言も作成しましたが、Gさんに遺贈する内容は一切ありません。Gさんは、決して財産目当てではなく、真の意味で、大事に慕っているからこそ、自ら後見人に挙手したようでした。
家族や親族がいない人は、第三者に任意後見人になってもらうこともできます。
もちろん、慎重に選び、十分に信頼の置ける人と締結する必要がありますが、将来の安心材料となる有効な方法といえます。
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解説してくれたのは司法書士 村山澄江先生
村山澄江(むらやますみえ) 先生 プロフィール
民事信託・成年後見の専門家、司法書士
公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート会員
簡裁訴訟代理関係業務認定会員
1979年名古屋生まれ。早稲田大学卒業。
2003年司法書士試験合格。
成年後見の相談者数300件以上。
民事信託と成年後見の専門家として全国でセミナー等行っている。