最近、よく耳にするようになった「適応障害」ですがご家族や友人、同僚や部下など身近な人が適応障害になったとき、どのような対応が正しいのでしょうか。
「どんな風に対応したらいいのか分からない」と悩む人も多いと思います。
この記事では、適応障害の人の接し方でいい例と悪い例についてご紹介していきたいと思います。
この記事の目次
1.適応障害の人に接するときのポイント3つ
適応障害の人に接する場合、病気だからといって今までと対応を変える必要はありません。
むしろ、対応を変えることで自分は周りの人に迷惑をかけていると思い込み、迷惑をかけないようにと頑張りすぎる可能性があります。
普段と変わらない接し方を心がけるとともに、以下のポイントも参考にすることをおすすめします。
①質問よりも共感することを優先する
友人や身内の人が適応障害になったとき、理解したいと思うがゆえに質問をします。
質問を繰り返すことで、相手は詮索されていると勘違いすることがあり話さなくなる可能性があります。
過去の記憶を思い出すことで不快な感情や感覚も一緒に想起され、出来事に対する思い込みが強くなる場合があります。
相手が話したいことを、気が済むまで聞くことで気分が楽になり気持ちが前向きになります。
話の合間に「うんうん」と相槌を打つことや、「そうだね」と話を聞く姿勢でいると相手は安心してもっと話すことができます。
②干渉よりも見守る
適応障害の人は、人間関係が苦手な人や思い込みが強い人が多く、周りから必要以上の声掛けを負担に感じる場合があります。
「こんな風にしたら楽にできるのに」など言いたくなる場合もありますが、受け止め方によっては干渉されていると捉える場合もあり、拒否されることもあります。
気にかけつつ適度な距離を取り、表情や言動を見ながら声をかけていきましょう。
③いつでもサポートできる体制をとる
適応障害の人は周りの人に気を遣うことが多い反面、自分の体調の変化に気付かないことがあります。
仕事では、業務量の分担など協力する必要があります。
職場で一緒に働くスタッフで業務量の調整をするなどの声掛けや、家族で家事の分担をその都度、話し合う時間を大切にしましょう。
2.適応障害の人へかけてはいけない言葉
適応障害だからといって、特別扱いをする必要はありませんが言葉を選ぶ必要はあります。
特に注意する言葉は次の通りです。
①「甘えじゃないの」「気持ちの問題でしょ」
適応障害で苦しんでいても、普通の人と同じように生活しています。
心の不調は理解されにくく「甘え」や「怠け」と勘違いされ、周囲の人からの誤解や偏見を招くことがあり心無い言葉や態度を取られることもいまだに多いようです。
本人は、周りとの違和感を持ちながらも取り繕い、日々一生懸命取り組み、心身ともに身をすり減らし追いつめられている状況である場合が多いです。
②「もっと大変なひともいるよ」「どこも一緒だよ」
適応障害の人は、心身ともに不調を抱えながらも努力をしようとしています。
そのため、他人との比較は病状を悪化させる可能性が高く注意が必要です。
また、転職や他の職場で働くことを決めた人に対して可能性を狭めるような発言は、頑張ろうとしている人のやる気を削いでしまう可能性があります。
ひとりひとり苦しいなかでも、努力していることは事実です。
「もしかしたら、うまくいくかも・・・」と希望を持っている人の可能性を否定するような言動は避けるようにしましょう。
③「元気を出して頑張って」
「早く元気になってほしい」という気持ちからつい励ましの言葉をかけてしまいます。
適応障害の人は、すでに頑張りすぎているからこそストレスが限界まできて症状がでています。
何気なくかけた言葉でも「もっと頑張らなければならない」と解釈してプレッシャーとなってしまうため声掛けをする際には気を付ける必要があります。
④「これからどうするの?」
適応障害で休んでいる人は、人間関係や環境の変化に心身ともに疲れているため今は休むことが優先されます。
まわりの人は心配でつい今後のことを聞きたくなりますが、本人にとってはこれからのことを想像することは不安であり、負担となります。
まずはストレスから離れてゆっくり休むことが優先されるため見守りましょう。
3.適応障害の人にかけてあげてほしい4つの言葉
友達や親しい人が適応障害と診断され、なにか力になりたいけど、どんな言葉をかけていいのか分からないと悩むこともあると思います。
ここでは、適応障害のひとにかけてあげたい言葉について説明していきたいと思います。
①「悩んでいることがあれば、いつでも話聞くよ」
適応障害の人は、1人で抱え込む傾向があるため誰にも相談できずに苦しんでいることがあります。
身近な人からのこうした声掛けは、「自分はひとりじゃない」といった安心感につながります。
話を聞くときは、質問やアドバイスを避けて、相手の話したいことに耳を傾けて共感する姿勢をとることがポイントです。
②「ゆっくり休んだらいいよ」
適応障害は心の不調が原因で発症する病気です。
外見からはどこが不調なのか分からず、周りのひとから理解されないことも多く、更に自分自身も病気だと認識していない場合があります。
本人も、「これは甘えじゃないのか」「周りに迷惑をかけてしまう」などと自ら追い込んでしまうことも多々見られるケースです。
周囲の人から「休んでいい」「もっとゆっくりでいい」という言葉かけをすることで気持ちを緩めるよう促すことも必要です。
③「よく頑張ったね」
適応障害になりやすい人の特徴はまじめで頑張りすぎる傾向があります。
「もっと頑張らないとダメだ」「何をやってもうまくいかない」「詰めが甘い」などと自分を追い込みすぎることでストレスを強くしてしまうことがあります。
自分はどれだけ頑張っても、認めない場合があるので他の人が頑張っていることを本人へ伝えることで気付く場合があります。
「すごいね」「さすがだね」「やるね」などの声掛けもおすすめです。
④「手伝うからいつでも言ってね」
適応障害の人は、1人で抱え込んで頑張りすぎる傾向があるため、周りの人に助けを求めることが苦手な人が多いです。
普段から、表情や言動に注意するとともにいつでも手伝えることを伝えておくと安心感につながります。
4.まとめ
適応障害の人との接し方の基本は、干渉しすぎず否定的な言葉を避けることが大切です。
気を遣いすぎる性格上、他の人と違う対応をすると周囲の対応や評価を気にする傾向があるため注意が必要です。
適応障害は、頑張りすぎた結果、心と体に不調を起こしていますが、真面目な性格ゆえに基本的には頑張っていたい人が多いです。
その気持ちを否定しないように対応することは、難しいと思いますがそっと見守ることがポイントです。
適度な距離をとりつつ、表情や言動を見て世間話をしながら話を聞くことが適応障害の人と良好な関係性が築いていける秘訣となります。
この記事を書いた人
大竹 加代子
大阪在住。身内の死をきっかけに、よりよい生き方を社会に広めたいと思い看護師となる。
整形外科・外科・脳外科・内科・循環器の急性期病棟を経て、回復期リハビリテーション病棟・地域包括ケア病棟へ勤務・現在に至る。
現役看護師として医療に携わる一方、こころの健康が身体の健康に及ぼす影響を実感し、こころと身体の健康を取り扱う看護師Wellnessナースとしてメンタルケア・認知科学の学びをすすめながら、適応障害の人のための電話相談やセミナー開催に向け取り組んでいる。
《経歴》
看護師歴25年
プロコミュニケーター
NLPマスタープラクティショナー
一般社団法人 日本ナースオーブ所属 Wellnessナース
保険外訪問看護 看取り対話師
《執筆》
株式会社 ELAN 様
看護師が解説!高齢者の骨折予防
看護師監修 介護側の食事指導
note 女性の適応障害に適応するブログ
《講座》
Wellnessチャートで賢くやせる/ウェルネス講座