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子宮がん⑤-子宮がん治療後の生活はどうする?~安心して過ごすために~

ピンクの花

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子宮がんの治療を終えた後、「これから何に気をつけて生活をしたらよいのだろう」と悩まれる方もいらっしゃるのではないでしょうか。身体も心もいたわっていただきたいですし、安心して過ごしていただきたいなと思います。

 この記事では治療後の経過管理や日常生活のセルフケアに加え、性生活についての配慮や考え方のヒントをお届けします。

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この記事の目次

1.最低5年間はフォローアップ受診を

治療後少なくても5年間は、術後の後遺症や合併症、転移や再発などのトラブルを早期に発見するため、受診による経過観察が必要です。受診時には、尿検査や血液検査、レントゲンやCTなどの画像検査、内診などが行われます。

受診の頻度は、経過年数によって変わります。治療後2~3年までは再発や転移などがみられることが多いため1~3か月に一度、3年目以降3~6か月に一度というように次第に減っていきます。

治療後、小さな体の変化や異常をとらえては、がんが転移したのではないか、再発ではないかと疑い悩むものです。心配事は一人で抱え込まずに、受診の時に医師や看護師へ相談し、早めに解決したほうが心の安定につながります。受診前日には質問したいこと、気になることをメモしておき、納得がいくまで相談しましょう。

【このような時は迷わず受診しましょう】

 退院後、急に身体の不調に襲われることがあります。退院時に、どのような症状があれば病院に連絡したらよいか、緊急の連絡先や受診方法を確認しておきましょう。

症状がある時は悩んでいないで、病院へ連絡して、症状を告げ、受診した方がよいかどうか尋ねるようにしてください。特に次のような場合は、迷わずに行動してください。

2.退院後に起こりやすい身体のトラブルと対処法

治療後にみられる出血やおりものが増えると、がんの再発や転移ではないかと心配になるかと思います。手術をした場合、傷が完全に癒えるまで1~2か月はかかります。心配はいりませんが、気になるようなら受診をしてください。

その他、手術後は排尿障害やむくみが起こりやすい傾向にあります。

排尿障害

子宮頸がんで広汎子宮全摘出術を受けた場合は、膀胱周辺の神経が傷ついて、尿が出にくくなることがあります。また、放射線治療を行う場合は、膀胱の筋肉が硬くなるため、同じく尿が出にくくなります。

尿が出にくくなると膀胱に尿が溜まり続け、膀胱炎や腎盂炎を起こしやすくなります。そのため、一定の時間がきたらトイレに行き、下腹部に力を入れたり、両手で下腹部をゆっくり押したりして尿を出し切ります。また、水分をしっかり摂って、膀胱内の細菌を尿で洗い流すことも大切です。症状が改善しない場合は、泌尿器科の受診を勧められるでしょう。時間がかかっても機能は回復し、自力排尿ができるようになります。気にしすぎると膀胱は余計に過敏になって、さらに尿が出にくくなるため、ゆったりとした気持ちで過ごすことが大切です。

むくみ(リンパ浮腫)

リンパ節郭清や放射線治療で片足または両足、下腹部や会陰部、太ももの付け根にリンパ液が溜まることをむくみ(リンパ浮腫)といいます。いったん症状が現れると、急激に悪化し、治りづらいことが特徴です。子宮がんの手術では4人に1人はむくみが起こると言われています。手術後早い時期に起こるだけではなく、10年くらい経過してからむくみが起きる方もいます。

むくんだ皮膚に傷がつくと炎症を起こし、入院が必要となることもあります。現在、このむくみを予防する方法はないため、リンパ液が流れやすいように身体を動かしたり、皮膚を清潔に保ったり、傷をつくらないようにするなど次のような日常生活での工夫が必要です。

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その他、むくみの程度や皮膚の状態から医師が医療用弾性ストッキングの着用を指示することがあります。着用方法は看護師が指導してくれます。

オススメ関連リンク:「自宅でカンタン・尿でわかるので痛くない」検査キット

3.治療後の健康を維持する日常生活のヒント

ストレス発散編

治療後は、女性器の機能を失った喪失感や副作用や後遺症、今後起こるかもしれない再発や転移の不安感がストレスの原因になります。ストレスは目に見えるものではありませんが、身体や心、行動に症状として現れてきます。

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ストレス発散のためには、自分なりのストレス解消法を見つけ、ストレスを自覚した時「これをする」と決めておくと、ストレス発散が上手に行えるようになります。

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この他、ストレスを軽減しリラックスする方法として注目されているのが「笑う」ことです。「笑う」と、免疫細胞の一種であるNK(ナチュラルキラー)細胞が活性化されて免疫力を高め、不安やストレスを軽減する効果があると医学研究で確認されています。作り笑顔でもNK細胞が活性化するため、口角をあげて笑顔の表情をつくってみること意識してみましょう。

毛布の上にいる猫

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性生活編

子宮や卵巣を切除しても膣があれば、今までどおりの性生活は可能です。子宮頸部やその周辺を切除する子宮全摘出術を受けた場合、膣の傷口が回復していれば術後6週間もたつと性生活は可能といわれています。放射線治療で膣が萎縮した場合は組織が硬くなり性交痛が生じることがありますが、市販の潤滑剤を使用して痛みを和らげることができます。

ただし、「もう子宮がない」「こどもを産めないのに性生活に意味があるのか」という喪失感からくる拒否反応や「このままでは夫婦生活が破綻するのでは」という焦燥感、「もし傷口が開いたら」「性生活でがんが再発するのでは」という恐怖や不安など、精神的理由から性行為への関心が薄くなってしまう傾向にあるといわれています。また、男性も女性に遠慮し、言えなかったり戸惑っていたりしているかもしれません。

精神的なダメージが癒されるように、パートナーと時間をかけて話し合い、お互いに素直な答えを導き出すことが大切です。

4.万が一の再発や転移に備えて知っておきたいこと

子宮がんなどの婦人科系のがんは、術後2~3年の再発や転移が最も多いといわれています。万が一の再発や転移していた時早めに対応してほしいため、再発や転移を疑う自覚症状を説明します。

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 これら5つの症状、その他少しでも気になる症状があれば自己判断しないで、必ず受診をし、再発や転移ではないことを確認しておきましょう。

5.まとめ

・5年間は定期的な経過観察を続け、小さな身体の変化も医師に相談し解決するようにしましょう。

・排尿障害やむくみなどの症状は、日常生活の工夫や適切なケアを行うことが大切です。わからないことは医師や看護師に相談しましょう。

・いろいろな不安はあるかと思いますが、笑顔を意識して、適度な運動やリラックス法を取り入れて、心地よく生活できるようにしていきましょう。

この記事を書いた人

看護師:山田かおり 経歴〉 看護師経験 32年(内分泌代謝・循環器内科病棟、外科混合病棟、高齢者施設で勤務) 看護教員養成研修 修了  認定看護師教育課程(認知症看護) 修了  医療安全管理者養成研修 修了  認定看護管理者制度 ファーストレベル・セカンドレベル教育課程 修了 〈講座〉  認知症ケアに関する講座 多数  未来をつくるkaigoカフェ 「つづけるカフェ」隔月開催(現在休止中)

ヤマダ カオリ

〈プロフィール〉
親に勧められ、自分が希望する心理学への道をあきらめ、看護学校に入学し、病院に就職する。周りの同期のように看護が楽しいと感じられず、私のしたいこととは違うと思い続け、「看護師は向いていない」と悩みながら3年間 病院で勤務後、退職する。事務職に転職しようとパソコンや簿記を学ぶが、25歳では事務職への転職は難しく、生活のために看護師に復帰する。

復帰後はマンネリ化した機能別業務に、再度「看護師は向いていない」と感じる日々が続いていた頃、関連病院で病床数増床のため看護師を募集していることを知り、心機一転すれば看護の楽しさがわかるのではと思い、異動を希望し、上京する。上京した病院で、自宅で最期を迎えたいと希望する患者や家族への退院指導の難しさと充実感を知り、新人教育担当として新人看護師が日々成長していく姿に励まされ、5S活動やQCサークル活動を通じて業務改善に手ごたえを感じるなど、看護師を続けたいと思えるようになった。それからは、自分の興味の赴くままに学びを深め、特に認知症に関する知識や技術を身につけ、「その人の行動の意味することは何か、生活歴を通して気づく看護の楽しさ」を伝えたいと思うようになった。
現在は、「看護が楽しい」と感じる仲間を増やしたくて、看護学校で看護教員をしている。

〈経歴〉
看護師経験 32年(内分泌代謝・循環器内科病棟、外科混合病棟、高齢者施設で勤務)
看護教員養成研修 修了
認定看護師教育課程(認知症看護) 修了
医療安全管理者養成研修 修了
認定看護管理者制度 ファーストレベル・セカンドレベル教育課程 修了

〈講座〉
認知症ケアに関する講座 多数
未来をつくるkaigoカフェ 「つづけるカフェ」隔月開催(現在休止中)

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