なんだか肌がヒリヒリする…でも見た目は虫刺されみたいだし大丈夫かな?
「帯状疱疹(たいじょうほうしん)」は80歳までに3人に1人がかかるといわれるほど身近な病気です。最近は20代から40代に急増していて、注意が必要です。発見が遅れたり、放置したりすると、合併症や後遺症に悩まされることもあります。
この記事では、帯状疱疹を早期に発見し、適切に対応するための知識を、私自身の体験を交えながらわかりやすくお伝えします。
この記事の目次
1. 水痘(水ぼうそう)と帯状疱疹の違い
帯状疱疹を引き起こすウイルスは、「水痘帯状疱疹ウイルス」というウイルスです。子どもの頃に罹った水痘のウイルスが治った後も神経の根元に潜伏し続け、免疫力が低下したときに再活性化して帯状疱疹として発症します。
水痘と帯状疱疹は、同じウイルスが原因ですが、発症するタイミングと症状が異なります。水痘は主に子どもがかかる病気で、冬に多く、発疹が全身に広がり、かゆみや発熱を伴います。一方、帯状疱疹は主に大人がかかる病気で、夏に多く、体の片側に帯状に現れる痛みと水ぶくれが特徴です。
2. 帯状疱疹の特徴的な症状
1) 痛み
皮膚症状が現れる数日前から罹患部位に、ヒリヒリ、チクチク、ピリピリなどと表現される「前駆痛」が現れます。その後、前駆痛を感じる部位に沿って赤い小さな発疹が帯状に現れ、水ぶくれができます。
この部位は、からだの知覚神経の走行に一致して、からだの左右どちらか片側に現れます。多くは胸、背中などの上半身に現れますが、年齢とともに額や目の周りに出現する確率が高くなります。
2)皮膚症状
皮膚症状が現れると痛みは徐々に強くなり、ピリピリ、ジンジン、ズキズキ、チカチカ、キリキリなどと表現される痛みに変わり、夜も眠れないほど激しい場合があります。その他、かゆみやモゾモゾとした違和感、しびれ、発熱、倦怠感などの症状を生じることもあります。
水ぶくれは数日内に破れて、10~15日ほどでかさぶたに変わり、約1か月で正常な皮膚に戻り治癒します。
3)顔周辺に出た場合の注意
先ほど、発疹や水ぶくれの多くは胸、背中などの上半身に現れ、年齢とともに額や目の周りに出現する確率が高くなると書きました。その中で、額や目の周りといった顔に出た場合は合併症に注意が必要です
①顔や頭に発症した場合
顔や頭の表面の痛みや発疹以外に発熱や強い頭痛がある場合は、帯状疱疹髄膜炎や脳炎を引き起こしている可能性があります。また、脳血管の知覚に炎症が生じると脳梗塞を起こすリスクも高まります。強い頭痛がある場合は、すぐに病院に相談しましょう。
② 目の周りに発症した場合
目の上から鼻にかけての部分に症状が現れると結膜炎やブドウ膜炎、動眼筋麻痺が起こることがあり、視力が低下して回復しないこともあるといわれています。
③ 耳の周りに発症した場合
顔面神経に炎症が及ぶと、めまいや耳鳴り、難聴、顔面神経麻痺が起こることがあります。
~私の経験~
私はこれまでに2回、帯状疱疹にかかったことがあります。
1回目は30歳頃、長期研修で勉強に追われていた時でした。左の腰あたりがチクチクし、虫刺されと思い、虫刺されの薬を塗って様子を見ました。1週間経っても痛みが引かないので、鏡を見ると赤い帯状の発疹が…。すぐ病院を受診しましたが、治療のタイミングを逃し、皮膚症状が治っても3か月程度痛みが続きました。痛み止めを飲みながらの研修は本当にきつかったです。痛みで集中力が途切れてレポート提出も一苦労だったことを覚えています。あの時、なぜ鏡を見なかったかな、見ていたら早く受診できていたのに…と思いました。
2回目は50歳頃、職場の人間関係でストレスが続いていた時でした。左のこめかみにズキズキと痛みが続いた後、水ぶくれが現れ、「これは帯状疱疹だ!」とすぐに気づきました。病院を受診し、抗ウイルス剤とビタミン剤が処方されました。今回は後遺症もなく、無事に回復しました。しかし、顔に帯状疱疹ができて、難聴になったり、視力が低下したりした方を知っていたので、耳の聞こえはどうか、目はいつもと変わらず見えるか、顔はゆがんでいないか、毎日気がかりでした。
今思えば、どちらもストレスと睡眠不足が重なっていました。からだは正直です。帯状疱疹は「もう無理してはダメ」というからだからのサインだったのかもしれません。ストレスや睡眠不足が思っている以上に免疫力に影響し、日頃から自分のからだとこころに耳を傾ける大切さを、身をもって学びました。
4)症状の経過と後遺症
帯状疱疹は、発症から2〜4週間で回復します。
しかしまれに、皮膚症状が治った後も「帯状疱疹後神経痛」という難治性の後遺症が残ることがあります。慢性的な痛みが数か月~数年、あるいは一生続くことがあります。夜中に痛みで目が覚めてしまったり、仕事で同じ姿勢でいることがつらくなったり、掃除や洗濯など体を動かす作業で痛みが出たり。痛みが続くことで、イライラしたり、落ち込んだり。痛みのコントロールができないことへの不安や疲れから、生活の質に大きな影響を及ぼします。
最近の研究では、発疹が出てから3日以内に受診し治療を開始すると、帯状疱疹後神経痛を予防できるという報告もあり、早期発見・早期治療が効果的であることがわかっています。
3. 帯状疱疹かもしれない?早期発見のためのチェックリスト
帯状疱疹は発疹が出てから3日以内に治療を始めることが、後遺症を防ぐカギになります。このチェックリストを見て、少しでも「あれ?」と感じたら、迷わず皮膚科や内科を受診しましょう。
- 2~3項目以上あてはまる場合は帯状疱疹の可能性があります。特に、皮膚症状と片側に集中する痛みがある場合は、早めに受診しましょう。
【年齢別の注意点】
20~40代:ストレスや睡眠不足、長時間労働などが誘因となりやすいです。若年層でも発症が増えています。
50代:更年期の影響や生活の変化に伴う免疫力の低下がリスクになります。予防接種の検討もおすすめです。
60代以上:合併症や後遺症のリスクが高まるため、特に早期発見と治療が大切です。
まとめ
・帯状疱疹は、水痘に罹ったことがある方は誰もが罹る可能性のある病気ですが、早期発見と治療で後遺症を防ぐことができます。
・「皮膚にヒリヒリ、チクチク違和感がある」、「体の片側だけに痛みがある」など、いつもと違うと感じたら、すぐに病院を受診しましょう。
この記事を書いた人
ヤマダ カオリ
〈プロフィール〉
親に勧められ、自分が希望する心理学への道をあきらめ、看護学校に入学し、病院に就職する。周りの同期のように看護が楽しいと感じられず、私のしたいこととは違うと思い続け、「看護師は向いていない」と悩みながら3年間 病院で勤務後、退職する。事務職に転職しようとパソコンや簿記を学ぶが、25歳では事務職への転職は難しく、生活のために看護師に復帰する。
復帰後はマンネリ化した機能別業務に、再度「看護師は向いていない」と感じる日々が続いていた頃、関連病院で病床数増床のため看護師を募集していることを知り、心機一転すれば看護の楽しさがわかるのではと思い、異動を希望し、上京する。上京した病院で、自宅で最期を迎えたいと希望する患者や家族への退院指導の難しさと充実感を知り、新人教育担当として新人看護師が日々成長していく姿に励まされ、5S活動やQCサークル活動を通じて業務改善に手ごたえを感じるなど、看護師を続けたいと思えるようになった。それからは、自分の興味の赴くままに学びを深め、特に認知症に関する知識や技術を身につけ、「その人の行動の意味することは何か、生活歴を通して気づく看護の楽しさ」を伝えたいと思うようになった。
現在は、「看護が楽しい」と感じる仲間を増やしたくて、看護学校で看護教員をしている。
〈経歴〉
看護師経験 32年(内分泌代謝・循環器内科病棟、外科混合病棟、高齢者施設で勤務)
看護教員養成研修 修了
認定看護師教育課程(認知症看護) 修了
医療安全管理者養成研修 修了
認定看護管理者制度 ファーストレベル・セカンドレベル教育課程 修了
〈講座〉
認知症ケアに関する講座 多数
未来をつくるkaigoカフェ 「つづけるカフェ」隔月開催(現在休止中)