
帯状疱疹を経験された方は、「いつまたあの痛みやジクジクした不快感が戻ってくるのか」、「もう二度とあの痛みを味わいたくない」と切実に感じていらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、再発の背景や日常生活でできるケアや予防法、健康管理についてお伝えします。
この記事の目次
1. なぜ再発するのか
帯状疱疹は水痘(水ぼうそう)にかかった後、神経の奥底に潜み続け、免疫力の低下などをきっかけに再活性化することで発疹や痛みを引き起こします。一度治っても再発の可能性はあり、健康な人でも数%、体の抵抗力が落ちている人では5〜6%に上がると報告されています。また、初発で神経痛が長引いた人は、局所の神経が弱っているため同じ部位に再発しやすいとされています。
再発の引き金となる要因は次のようなものがあります。
1) 年齢
加齢は自然な免疫低下を伴います。60代以降では特に注意が必要です。
2) 強いストレス
人間関係や仕事、介護などの長期的なストレスは、免疫機能を鈍らせます。
3) 睡眠不足
夜更かしや不規則な睡眠は、体の回復力を大きく削ります。
4) 持病や服薬
糖尿病、がん、自己免疫疾患などの慢性疾患や、免疫抑制薬・ステロイドの使用も要因になります。
5) 生活習慣の乱れ
偏食、運動不足、喫煙、過度な飲酒は免疫力を蝕みます。
これらの要因は一つ一つは小さく見えても、積み重なればウイルスを抑える力を弱めてしまいます。
2. 帯状疱疹後の生活ケア:免疫を支える生活習慣をつくる
1) 肌のケアを忘れずに
帯状疱疹を体験された方の多くが、衣類の摩擦や乾燥、シャワーの水圧などが痛みを引き起こしたり、一時的に発疹部位の感覚が戻ってきたりしたことがあると言われます。治癒後も、肌の保湿を続けて皮膚を柔らかく保ち、刺激の強い入浴剤や香料つきの石鹸・ボディソープはできるだけ避け、ぬるま湯を使うとよいでしょう。また、皮膚が敏感な間は、柔らかい素材の寝具や衣類を選び、摩擦を最小限にしましょう。
2) 睡眠は最高の免疫薬
からだは眠っている間に細胞の修復作業を行っています。特に深いノンレム睡眠では、免疫細胞が活発に働き、ウイルスや細菌に備えます。毎日7~8時間の睡眠を目安にとれるよう工夫しましょう。
「寝つきが悪い」という方は、寝る前にスマホやパソコンの画面を見ない、ぬるめのお湯で体を温める、部屋を暗く静かにするなどを試してみてください。また昼間に短めの昼寝(20〜30分程度)を取り入れると、免疫力の向上だけでなく、ストレス軽減にもつながります。
3) 食事で体の防衛力を支える
免疫細胞は食べたもので作られます。たんぱく質(肉・魚・豆・乳製品など)は、体内での抗体や免疫細胞の材料を確保する必要があります。また、ビタミンB群(特にB6、B12)は免疫調節に関係し、亜鉛はウイルスに対する細胞内の防御にかかわります。
例えば、納豆や鶏胸肉、卵、緑黄色野菜、ナッツ類、魚介類などをバランスよく食べることで、からだの防衛力を支えることができます。さらに、腸内環境を整える食物繊維や発酵食品(ヨーグルト、味噌、漬物など)も、免疫の調節に役立つため積極的に取り入れましょう。
4) 運動は軽くても続けること
筋肉は免疫機能と深く関係しています。激しい運動は免疫を低下させることがあるため必要ありません。
毎日の散歩やジョギング、ゆったりとしたストレッチやヨガ、軽い筋トレは、免疫を適度に刺激し効果があるといわれています。ポイントは“続けられること”です。3日坊主より、毎日10分でも継続するほうが免疫には有効です。
5) ストレスとの距離をとる
ストレスは免疫抑制を引き起こす最大の要因です。毎日の中に深呼吸や瞑想、あるいはお気に入りの趣味の時間をしっかり設けて、ストレスホルモンが高まる前に解放することが重要です。
例えば、寝る前の数分間、目を閉じてゆっくり息を吸い、吐くときに「リラックス」と唱えるだけでも、自律神経が整いやすくなります。好きな音楽を聴いたり、軽いアロマやハーブティーを取り入れたりすることもおすすめです。心のゆとりは、体の防衛力にもつながります。
3. 医療のサポートを上手に取り入れる:ワクチンと健康管理
生活習慣を整えることに加え、医療のサポートを上手に取り入れることは再発予防につながります。
1) ワクチン接種
ワクチン接種は再発予防にも有用とされます。接種の時期や種類は、医師と相談して決めましょう。
2) 健康管理
体調の変化を「こんなことくらい」と放置しないことが大切です。日常の小さな異変も、再発の芽を摘むチャンスです。血糖値や血圧、体重の管理はもちろん、血液検査で免疫や栄養状態を定期的に確認すると安心です。
慢性疾患を持つ方は、主治医と継続的に情報を共有しましょう。信頼できる医師との関係づくりは、再発を防ぐ長期的な土台になります。
3) 帯状疱疹後神経痛(PHN)への配慮と対応
帯状疱疹が治った後に残る帯状疱疹後神経痛(PHN)は再発とは異なるものの我慢しても改善しにくく、むしろ悪化することがあり、生活の質(QOL)を大きく左右する可能性があります。この「痛みが長引く」こと自体も大きな不安となります。
鎮痛薬や神経障害性疼痛治療薬を用いることで痛みそのものを軽減する効果があります。また、外用薬や理学療法、低周波療法など痛みを軽減する方法はいろいろとあり、これらを組み合わせることで痛みを緩和することができます。痛みを我慢し続けることは、気分の落ち込みや不眠、運動不足につながります。早めに受診し、医師と痛みの付き合い方を相談してください。
4. 帯状疱疹の「前兆」に気づくために
帯状疱疹はチクチク・ピリピリとした軽い痛みや、触るとピリッとするような違和感、あるいは軽いかゆみなど、必ず皮膚に前兆が現れます。これらの皮膚症状を経験しているからこそ、こうした前兆に気づくことができます。サインに気づいたら、ためらわずに病院を受診しましょう。
72時間以内に抗ウイルス薬(アシクロビルなど)を開始することで発症を抑えるだけでなく、神経痛の予防にもつながります。「いつもと違う」と感じた自分の感覚を大切にし、行動することで、予後を大きく改善できます。
5. まとめ
・免疫力の低下などをきっかけに、帯状疱疹は再発する可能性があります。
・免疫力低下の要因は様々あります。免疫力低下の要因を減らせるように生活習慣を改善することは、帯状疱疹の再発予防につながります。
・以前経験した帯状疱疹の前兆を感じたら、すぐに病院を受診しましょう。
この記事を書いた人
ヤマダ カオリ
〈プロフィール〉
親に勧められ、自分が希望する心理学への道をあきらめ、看護学校に入学し、病院に就職する。周りの同期のように看護が楽しいと感じられず、私のしたいこととは違うと思い続け、「看護師は向いていない」と悩みながら3年間 病院で勤務後、退職する。事務職に転職しようとパソコンや簿記を学ぶが、25歳では事務職への転職は難しく、生活のために看護師に復帰する。
復帰後はマンネリ化した機能別業務に、再度「看護師は向いていない」と感じる日々が続いていた頃、関連病院で病床数増床のため看護師を募集していることを知り、心機一転すれば看護の楽しさがわかるのではと思い、異動を希望し、上京する。上京した病院で、自宅で最期を迎えたいと希望する患者や家族への退院指導の難しさと充実感を知り、新人教育担当として新人看護師が日々成長していく姿に励まされ、5S活動やQCサークル活動を通じて業務改善に手ごたえを感じるなど、看護師を続けたいと思えるようになった。それからは、自分の興味の赴くままに学びを深め、特に認知症に関する知識や技術を身につけ、「その人の行動の意味することは何か、生活歴を通して気づく看護の楽しさ」を伝えたいと思うようになった。
現在は、「看護が楽しい」と感じる仲間を増やしたくて、看護学校で看護教員をしている。
〈経歴〉
看護師経験 32年(内分泌代謝・循環器内科病棟、外科混合病棟、高齢者施設で勤務)
看護教員養成研修 修了
認定看護師教育課程(認知症看護) 修了
医療安全管理者養成研修 修了
認定看護管理者制度 ファーストレベル・セカンドレベル教育課程 修了
〈講座〉
認知症ケアに関する講座 多数
未来をつくるkaigoカフェ 「つづけるカフェ」隔月開催(現在休止中)