帯状疱疹は、免疫力の低下をきっかけに発症することが多い病気です。しかし、適切な予防法を実践することで、発症リスクを下げることはできます。この記事では、帯状疱疹の予防に効果的なワクチンや生活習慣について紹介します。
この記事の目次
1. 帯状疱疹の原因と感染経路を知ろう
帯状疱疹は、水痘(水ぼうそう)に一度罹ったことがある方に発症する可能性がある病気です。水痘帯状疱疹ウイルスは、水痘が治った後もからだのどこかで潜伏しています。帯状疱疹と水痘は密接に関連していますが、帯状疱疹そのものは水痘の再発ではありません。
潜伏していたウイルスは免疫力が低下したり、ストレスがかかったりしたときに再活性化して、帯状疱疹として現れます。そのため、人から人へうつることは基本的にはありません。ただし、帯状疱疹の水疱に直接触れると、水痘に罹ったことがない方は水痘に罹ることがあります。特に、乳児や妊婦、免疫力が低下している方などは重症化する可能性があるため注意が必要です。このように、帯状疱疹は自分のからだの中に潜むウイルスが原因で発症する病気ですが、接触によって他者に水痘をうつす可能性がある点を知っておいてください。
帯状疱疹は加齢やストレス、病気などが原因で免疫力が低下すると、50歳以降に発症するケースが増加します。症状が重くなると、痛みが長く続く帯状疱疹後神経痛などの合併症を引き起こすこともあります。
発症を予防するためには、免疫力を保ち、ウイルスの再活性化を防ぐことが大切です。
2. ワクチンで発症リスクを下げる
帯状疱疹を予防する有効な方法のひとつが、ワクチン接種です。臨床試験で帯状疱疹の発症する確率が大幅に減少することが証明されています。
現在、日本では「生ワクチン」と「組換えワクチン」の2種類が使用できます。
1) 接種対象者
帯状疱疹ワクチンは、50歳以上の方に接種が推奨されています。特に、自己免疫疾患や免疫不全症を既往に持っている方、抗がん剤治療やステロイド治療など免疫力が低下しやすい治療を行っている方の接種による予防効果が期待されています。
その他、以下のような方は接種が勧められない場合があります。
・妊娠中の方
・ワクチンに含まれている成分にアレルギーのある方
・免疫不全の状態にある方
接種を希望する場合は、必ず医師に相談し、適切な判断のもとで接種を受けましょう。
2) ワクチンの種類と違い
現在、日本で帯状疱疹予防に使用できる「生ワクチン(乾燥弱毒生水痘ワクチン)」と「組換えワクチン」のどちらも、帯状疱疹や帯状疱疹後神経痛などの合併症を予防する効果が認められています。
(1) 生ワクチンと組換えワクチンの違い
① 生ワクチン
弱毒化した水痘帯状疱疹ウイルスを使用し、免疫をつける方法です。主に、水痘にかかったことのない子どもや若年成人の水痘予防に使われます。ワクチン接種は1回の皮下注射で済みます。
② 組換えワクチン(シングリックス®)
水痘帯状疱疹ウイルスの一部のたんぱく質を使用し、免疫をつける方法です。高齢者や免疫抑制状態の方にも比較的安全とされています。2か月以上の間隔を開けて、2回筋肉内に接種します。ただし、病気や治療によっては、医師の判断で接種間隔を1か月まで短縮することがあります。
(2) 接種後の副反応
一般的なワクチンであるインフルエンザワクチンと同じように、注射部位の疼痛や発赤、疼痛が副反応としてみられます。
帯状疱疹ワクチン特有のものとして、注射部位の発疹や水疱のほか、筋肉痛や疲労感、頭痛などがあります。いずれも通常1~2日内に最も強く現れ、3~5日程度で治まります。ごくまれに、アナフィラキシーなどの重篤な副反応が報告されることもあるため、接種後の体調変化には注意が必要です。
(3) 接種後の効果
接種後、数週間で免疫を高め、帯状疱疹の予防効果を発揮します。
このように効果は長期間に渡ることが確認されていますが、ストレスや不規則な生活を避け、健康的な生活習慣を心がけて免疫力を維持することが大切です。
(4) 定期接種について
2025年度(令和7年度)から、65歳以上の方を対象に帯状疱疹ワクチンの定期接種が始まりました。定期接種は住民票のある市区町村で実施されます。接種を受けられる場所や費用は、お住まいの市区町村に問い合わせてください。
3. 生活習慣を整えて免疫力アップ
帯状疱疹を予防するためには、毎日の生活習慣を少しずつ改善していくことも大切です。無理なくできることから始めて、健康を保つための習慣を作っていきましょう。
1) 毎晩、7~8時間の睡眠を心がける
睡眠不足は免疫力を低下させ、帯状疱疹のリスクを高める可能性があります。毎日できるだけ同じ時間に眠るようにして、寝室はリラックスできる空間に整えましょう。就寝前1時間はリラックスした時間を持ち、電子機器を避けるなど、良質な睡眠を取る工夫をしましょう。
2) 栄養バランスのとれた食事を心がける
免疫力を高めるために、次の栄養素を意識して取り入れましょう。
(1) ビタミンC
免疫力を強化し、細菌やウイルスに対する抵抗力を高めるため、野菜や果物(例えば、オレンジやピーマン)を積極的に摂取しましょう。
(2) ビタミンD
免疫機能をサポートするために、日光浴やビタミンDを豊富に含む食品(例えば、魚や卵)を摂ることが推奨されます。
(3) 亜鉛
免疫系を活性化する役割があり、肉、魚、ナッツ類、全粒穀物などに多く含まれています。
3) 体を少しでも動かす
運動は免疫系を強化し、ストレスを軽減する効果があります。
体を動かすことが苦手な方は、最初は5~10分でもかまいません。時間が短くても、できることから無理なく楽しみながら、毎日続けることが大切です。外を歩くことが億劫であれば、テレビを観ながら家の中を歩くことでもかまいません。深呼吸をしながら首を左右にゆっくり回すなど軽いストレッチでもいいでしょう。
4) ストレスを上手に解消する
ストレスは免疫力の大敵です。深呼吸をしたり、好きな音楽を聴いたり、少しの時間でもリラックスすることで気持ちが楽になります。毎日、ちょっとした「ほっとする時間」を持つように心がけましょう。
5) タバコを減らす、飲酒を控える
タバコの煙に含まれる化学物質は、免疫系を抑制し、感染症にかかりやすくなります。また、飲酒は免疫力を低下させます。タバコも飲酒も適量を守りましょう。
6) 定期的な健康診断を受ける
糖尿病や高血圧などの生活習慣病は免疫力に影響を与えることがあります。年に一度は健康診断を受けましょう。健康診断を受けることで、自分の体の状態を知ることができ、必要に応じて医師の相談を受けることも大切です。
4. まとめ
・帯状疱疹はワクチン接種と健康的な生活習慣を心がけることで予防が可能です。
・ワクチンは生ワクチンと組換えワクチンの2種類があります。年齢や対体調に応じた選択が必要です。
・2025年度(令和7年度)から、65歳以上を対象とした定期接種が始まっています。
・毎日の習慣を少しずつ整えることで、免疫力を維持し、健康を守ることができます。
この記事を書いた人
ヤマダ カオリ
〈プロフィール〉
親に勧められ、自分が希望する心理学への道をあきらめ、看護学校に入学し、病院に就職する。周りの同期のように看護が楽しいと感じられず、私のしたいこととは違うと思い続け、「看護師は向いていない」と悩みながら3年間 病院で勤務後、退職する。事務職に転職しようとパソコンや簿記を学ぶが、25歳では事務職への転職は難しく、生活のために看護師に復帰する。
復帰後はマンネリ化した機能別業務に、再度「看護師は向いていない」と感じる日々が続いていた頃、関連病院で病床数増床のため看護師を募集していることを知り、心機一転すれば看護の楽しさがわかるのではと思い、異動を希望し、上京する。上京した病院で、自宅で最期を迎えたいと希望する患者や家族への退院指導の難しさと充実感を知り、新人教育担当として新人看護師が日々成長していく姿に励まされ、5S活動やQCサークル活動を通じて業務改善に手ごたえを感じるなど、看護師を続けたいと思えるようになった。それからは、自分の興味の赴くままに学びを深め、特に認知症に関する知識や技術を身につけ、「その人の行動の意味することは何か、生活歴を通して気づく看護の楽しさ」を伝えたいと思うようになった。
現在は、「看護が楽しい」と感じる仲間を増やしたくて、看護学校で看護教員をしている。
〈経歴〉
看護師経験 32年(内分泌代謝・循環器内科病棟、外科混合病棟、高齢者施設で勤務)
看護教員養成研修 修了
認定看護師教育課程(認知症看護) 修了
医療安全管理者養成研修 修了
認定看護管理者制度 ファーストレベル・セカンドレベル教育課程 修了
〈講座〉
認知症ケアに関する講座 多数
未来をつくるkaigoカフェ 「つづけるカフェ」隔月開催(現在休止中)