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おひとりさまの終活②高齢者の収支

おひとりさまの終活を考える際に、お金の問題は欠かせません。そこで高齢者の収入と支出について見ていきましょう。

この記事の目次

高齢者の主な収入源=年金について

高齢者の生活を下支えしているのが、公的年金の老齢年金です。
老齢年金だけで暮らしていくことは大変ですが2か月に1度、銀行口座にお金が振り込まれる安心感は、高齢者にとって大変ありがたいものです。

厚生労働省「2022年国民生活基礎調査」から、年金を受給している高齢者世帯のうち、総所得に占める年金所得の割合が60% を超える世帯が74.4%あることが分かりました。さらにそのうち44%が年金のみで生活している実態が見えています。若い頃のような所得を得にくくなった高齢者にとっては、公的年金の老齢年金は主な収入源となっています。

公的年金・恩給を受給している高齢者世帯
<厚生労働省「2022年国民生活基礎調査」より>

夫婦世帯がおひとりさまになると収支はどうなるのか

現役の頃に加入していた年金制度によって受給する老齢年金の種類は違いますが、夫婦2人で受給していた年金額から比べるとおおよそ、5割~4割減となります。

夫が亡くなり妻ひとりの生活となった場合、生活費が半分になるわけではありません。
例えば、夫が厚生年金を受給したいた場合、妻の遺族厚生年金は夫の厚生年金の4分の3になります。
これに妻自身の老齢基礎年金も受給しますので、夫婦で受給していた時に比べて6割程度になることが多いでしょう。

妻が一人となった場合に受け取れる年金額がいくらになるのか、必要な生活費と比べて不足額はいくらになるのか、あらかじめ試算・見える化し、不足額に対する対策や準備を検討する必要があります。

ご自身で試算や見える化が難しい場合は、ファイナンシャルプランナーに相談することも選択肢の一つです。

介護・相続・死後の手続きに備える

核家族化が進み、高齢者世帯が増加しているということは、いずれ訪れる介護や相続・死後の手続きについても配慮・準備が必要になります。近隣に頼れる親族がいればできていた手続きも、遠方であったり、多忙であったり、疎遠であったりすれば介護や相続・死後の手続きは負担の重いものとなります。

分かってはいても何から取り掛かればいいのか分からずに年月が過ぎ、いざ終活に取り掛かりたいと思ったときに身体の調子を崩してしまった、体力や集中力、気力が衰え思うように準備することができない、準備が間に合わなかったということにもなりかねません。

介護・相続・死後の手続きへの備え方は、家族の状況や想いなどによって様々です。
限られた時間の中で、自分の場合には何を優先的に始めれば良いかを判断するのは容易ではありません。優先順位を判断するために必要な現状を把握し、課題がどこにあるのか、何から対策・準備していくのかを整理することは時間と労力、情報、知識が必要になります。

現状の見える化に役立つアイテム:エンディングノート

自分の想いや介護・相続・死後に係る現状把握に役立つのは、エンディングノートです。
エンディングノートには、自分のプロフィールや考え方、想いを整理する項目、介護・相続・死後に必要な情報や考え方を書きこむことができる項目があります。

エンディングノートは、全ページを埋めようとすると書くことが億劫になってしまいますので、自分で優先順位を決めて、介護や相続・死後の手続きで関わる人たちが困らないように書き進めていきましょう。

65歳以上の5人に1人が認知症に?

おひとりさまの将来の心配事のひとつに「認知症になる」ことがあります。
内閣府によると、高齢化が進む中で認知症患者の数も年々増加傾向にあり、2025年には認知症の有病率が20%になると推計されています。人生100年時代におけるライフプランは、健康に過ごせるケースと、認知症を発症して介護が必要になるケースの2つを想定して考える必要があります。

認知症の患者数推移
<内閣府 平成29年度「厚生社会白書」より>

認知症になった場合の預貯金は?

夫婦のうち、例えば夫が認知症になった場合、妻は夫の預金を引き出して介護費用に充てることが難しくなります。

たとえ本人の介護費用や生活費であったとしても、家族といえどもその預金を引き出すことができません。

本人が認知症となった場合、その意思の確認が困難になるため、本人の資産を守るために、口座は凍結されることになります。

元気なうちにできる対策

認知症になってからではなく、元気なうちにできる対策として、家族信託任意後見制度を活用することが考えられます。

家族信託

信頼できる家族に資産管理を委託することで、本人の利益を守ることができます。

任意後見制度

認知症の進行前に信頼できる後見人を指名し、法的に資産を管理してもらうことが可能です。

それぞれ一長一短があり、ご家族の状況や資産によっても異なりますので、早めに専門家に相談すると良いでしょう。

認知症になった場合の生命保険

病気になったときの医療保険や介護認定された場合に受け取りができる、生前給付型の保険があります。
認知症の場合、本人が請求することは難しいことから、指定代理請求制度を利用して、本人に代わって請求ができるようになっています。このようにして保険金を介護費用に充てることができます。契約形態や指定代理請求制度の詳細を確認しておき、その内容を指定代理請求人やご家族に知っておいてもらうことが大切でしょう。

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この記事を書いた人

齋藤 弘道(さいとう ひろみち) 遺贈寄附推進機構 代表取締役 全国レガシーギフト協会 理事

齋藤 弘道(さいとう ひろみち)

<プロフィール>
遺贈寄附推進機構 代表取締役
全国レガシーギフト協会 理事

信託銀行にて1500件以上の相続トラブルと1万件以上の遺言の受託審査に対応。
遺贈寄付の希望者の意思が実現されない課題を解決するため、2014年に弁護士・税理士らとともに勉強会を立ち上げた(後の全国レガシーギフト協会)。
2018年に遺贈寄附推進機構株式会社を設立。
日本初の「遺言代用信託による寄付」を金融機関と共同開発。

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