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人生の最終章をどう迎える?                       介護保険を使ったケアと支援の選び方を解説します

親が高齢になってくると、入院や体調不良が増え、「この先どこで、どう過ごすのがいいのか」という話題が現実味を帯びてきます。
できるだけ住み慣れた自宅で過ごして欲しいと思う一方で、本人の希望や、家族の負担や費用、医療体制も気になるところだと思います。
介護保険制度は、こうした家族・本人の悩みに応えられるように、多様なケアと支援の選択肢を用意しています。
今回は、人生の最終章の過ごし方を考えるために知っておきたい介護サービスや施設、費用の目安をご紹介します。

この記事の目次

1. 人生の最期をどこで過ごすか

人生の最期をどこで過ごすか、という問いは、人それぞれ希望や状況によって異なります。一般的には、自宅・介護施設・病院などが考えられます。それぞれにメリット・デメリットがあります。
以下に自宅・介護施設・病院それぞれのメリット・デメリットをまとめます。

1.自宅

メリット:住み慣れた環境で、家族と過ごす時間を大切にできる。リラックスできる環境で、精神的な安定を得やすい。

デメリット:介護負担が家族にかかる可能性がある。急変時の対応が不安になる場合がある。

2.介護施設

メリット:介護サービスを継続的に介護専門職から受けることができる。他の入居者との交流も期待できる。

デメリット:施設によっては自宅で過ごすよりも費用がかかる場合がある。自宅のような自由な生活は難しいことが多い。

3.病院/緩和ケア病棟

メリット:専門的な医療ケアを24時間受けられる。急変時にも迅速な対応が期待できる。

デメリット:費用が高額になる可能性がある。面会時間が限られる場合がある、自宅のような自由な生活は難しいことが多い。

住み慣れた自宅で過ごす精神的な安定と、住まいを移し専門職からの支援を受ける上で生活の自由度が低くなることが対比として考えられます。

まずは、親御さんご本人の希望を尊重して、家族全員で希望や不安を擦り合わせながら考えていきたいことです。

2. 自宅で最期まで過ごすための介護保険サービス

自宅で最期まで過ごすことを考えた場合、本人・家族の力だけで生活を成り立たせることは難しいこともあります。そこで介護保険の在宅サービスを使用することで自宅での生活を実現することができます。

以下に介護保険による在宅支援サービスを挙げます。

  • 訪問介護:入浴、排泄、食事など日常生活全般のサポート
  • 訪問看護:看護師による医療的ケア、症状の観察、痛みのコントロール
  • 訪問リハビリ:理学療法士や作業療法士による身体機能の維持、安楽のためのリハビリ
  • 福祉用具レンタル:自宅で安楽に過ごすことができるように介護ベッドや車いすをレンタルすることができる。
  • 住宅改修:工事により手すり設置や段差解消をすることができる。

詳細なサービス内容や費用については、第4回目の記事で解説しています。

3. 施設での暮らしとケアの選択肢

自宅で生活することは難しいとなると、検討するのは施設への入居です。施設には様々な種類と特徴があります。
介護の必要度や医療ニーズによって、検討できる施設は変わります。

以下の表に代表的な施設と施設の特徴をまとめます。

施設名特徴費用目安(1割負担、食費・居住費含む)
介護老人福祉施設(特養)介護保険サービス
長期入所可能
要介護3以上が原則
約8~15万円/月
介護老人保健施設(老健)介護保険サービス
リハビリ重視
在宅復帰支援を目的とする
約10~15万円/月
介護医療院介護保険サービス
長期療養可能
医療と生活支援が一体
約15~20万円/月
有料老人ホーム
サービス付き高齢者向け住宅
民間運営、
サービス内容・費用に幅がある
約15〜25万円/月以上
入居一時金:0~数千万円
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)介護保険サービス
認知症の診断の方が対象
約15~18万円/月
入居一時金:5~8万円程度
軽費老人ホーム(ケアハウス)「住宅型」「介護型」に分かれる
公的補助により比較的定額で生活支援を受けることができる
約13~15万円/月

介護保険に基づく施設サービスは、介護老人福祉施設・介護老人保健施設・介護医療院と認知症対応型共同生活介護(グループホーム)です。
介護老人保健施設は在宅復帰を目標とする一時的な入居施設のため基本的に終身利用は不可となっています。

有料老人ホームとサービス付き高齢者住宅は、民間事業者が運営します。
有料老人ホームは、高齢者の生活を支える機能を備えた住まいです。介護型・住宅型・健康型と分けられ、介護保険を利用してサービスを受けることもできます。終身利用ができるかは、施設によって異なります。

サービス付き高齢者住宅は、「サ高住」と呼ばれる、賃貸住宅に近い施設です。安否確認や生活相談サービスがあり、安心して暮らすことができる環境が整っています。外出や外泊、来客なども制限がないことが多く自宅のように自由に生活をすることができます。一方で介護の必要度合が上がると住み続けられない可能性があります。

軽費老人ホーム(ケアハウス)は、公的補助により比較的定額で、食事や洗濯などの生活支援サービスを受けながら生活ができる施設です。
60歳以上で家庭環境や経済的な状況により生活が困難な方を対象としています。
一般型と介護型に分かれ、どちらも食事提供のサービスはありますが一般型の場合介護サービスはつきません。
施設によっては、介護度が上がった場合住み続けられなくなる可能性があります。

施設に入居する際は、どのような点を重要視するのか、最期まで住み続けられるのかなどによって選択肢が異なります。

本人・家族の希望や懸念点などを擦り合わせ、ケアマネージャーなど地域の施設に詳しい人と一緒に相談して決めていくことが大切です。

4. 自宅、施設でも利用できる医療の形

終末期には介護だけでなく医療的な支えも必要になります。
病院に受診することが難しくなった場合、訪問診療という方法で医療を受けることが可能です。自宅、施設のどちらで生活をしていても訪問診療を利用することができます。

訪問診療とは、医師が患者の自宅や施設を定期的に訪問し、診察や治療を行う医療サービスです。
高齢者や寝たきりの方、終末期の方など通院が困難な方が医療を受けながら最期まで生活を継続するために重要な医療サービスです。
訪問診療は介護保険適用ではないため、介護度に関わらず医療保険が適応されます。
料金の目安は月2回の診療で約7,000〜10,000円(1割負担の場合)です。採血検査などは別途料金がかかります。

定期的に訪問をしてくれる医師がいることは、本人・家族にとっても安心に繋がります。

5. まとめ

人生の最終章をどこで過ごすのか、自宅で過ごす場合と施設で過ごす場合のケアの選択肢を解説しました。
介護保険と医療保険の両方を活用することで、自宅でも施設でも、その人らしい時間を過ごすことができます。

どこで過ごすのか、どのようなサービスを利用するのかなどを検討する際は、まずは生活をする本人であるご両親の希望を聞くことが最優先です。

そこに家族の希望や、医療介護の必要度、費用や場所の都合などを合わせて考えていくことが良いでしょう。本人・家族だけでは調整が難しいこともあるので、ケアマネージャーや地域包括支援センターの職員など専門職と一緒に考えていくことをおすすめします。

そして、最初に方針を決めた後も、状況によって「選択肢を変えること」も可能です。「こうでなければいけない」ではなく、「出来る限り自宅で生活をしたい。でも、生活をしてみて施設で過ごすという可能性も考えるかもしれない」という幅を持たせて検討することもよいでしょう。

様々な選択肢があることを、知っておくことで選択の幅が広がります。
最期まで後悔のない人生を送ることができる、支えることができるためにこの記事が一助になれば幸いです。

<参考文献>

  1. 松川竜也(2024)『介護保険のしくみと使い方&お金がわかる本 介護サービスのトリセツ』株式会社ユーキャン学び出版

2)小林哲也(2024)『図解でわかる介護保険サービス』中央法規出版株式会社


この記事を書いた人

清水千夏
<プロフィール>

看護師経験15年(大学病院9年、訪問看護4年)
大学病院で、急性期(消化器外科、心臓血管外科、HCU)から退院支援部門まで幅広く経験を積む。その後、訪問看護ステーションに転職。

現在は立ち上げから関わっている訪問看護ステーションで勤務。0歳から100歳まで様々な年齢の方を対象に、住み慣れた自宅で暮らし続けるための支援を提供している。

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