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乳がん③-乳がんの手術_診断から手術までの流れを知っておこう

白いシャツを着ている男性

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 もし乳がんと診断された時、治療までの流れがイメージできないと不安になると思います。乳がんの治療方法には手術・抗がん剤・放射線治療がありますが、一般的に多く選択される方法は手術です。今回の記事は乳がんの診断から手術までの流れについてお話ししていきます。

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この記事の目次

1.診断から手術までの大まかな流れとかかる日数

 乳がんの疑いから手術までのおおまかな流れは『受診⇨検査⇨診断⇨入院⇨手術』となります。1つ1つ詳細にみていきましょう。期間の目安もお伝えします。

  1. 初回受診
  2. 検査
  3. 手術までの待機時間
  4. 入院〜手術

1.初回受診(数日〜1週間)

検診やしこりなどの自覚症状を感じ近医のクリニックなどを受診することになります。最初に受診した病院やクリニックから専門医がいる病院へ紹介になる場合もあります。数日〜1週間程みておくといいでしょう。

2.検査(マンモグラフィやエコー検査など)(2週間程)

乳がんと確定診断するための検査を複数受けることになります。その結果が出るのに2週間程度必要になります。

3.手術までの待機時間(1ヶ月程)

診断後手術が必要となった場合、手術を受ける病院の待ち時間がかかります。この期間は病院によって異なります。手術予約が集中していると1ヶ月以上かかることもあります。

4.入院〜手術(1週間〜2週間程)

入院期間は手術の方法によって多少ことなります。乳房温存という乳房を残しておく手術は約1週間です。乳房を全部切除する方法・そして再建(切除した乳房を再び作ること)するかしないかで異なりますが、2週間ほどとなります。

このように診断から手術まで、3ヶ月程かかります。

人の足

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2.乳がんを疑うきっかけ3つ

 最初の診断に至るまでにはきっかけがあります。

  1. 自覚症状がある
  2. 会社の健康診断
  3. 市町村で行われる乳がん検診

1.自覚症状がある

 最初に乳がんを疑う場合、一番多いきっかけはご自身で気づく時です。1つ目の記事でお伝えしたセルフチェックの時・体を洗っている時・下着をつける時など何かをきっかけに、しこりなどの異変に気づきます。

2.会社の健康診断

一般的な健康診断の内容には入っておらずオプションで乳がん検診を選ぶ必要があります。費用は自己負担の場合がほとんどです。中には補助金制度を取り入れている会社もあります。内容は国の指針では、問診・マンモグラフィが検査項目となっています。他に超音波検査(エコー)が組み合わさっている時もあります。

3.市町村で行われる乳がん検診

40歳以上の方にお住まいの市町村よりお知らせが送られてきます。費用は0円〜3,000円と市町村によって異なります。内容は会社の健康診断と同様で問診・マンモグラフィ・エコー検査などです。なぜ40歳からかというと、40歳以上になると乳がんにかかりやすくなるからです※1

乳がんは、早期発見・早期治療ができると予後が比較的よいがんと言われています。そのためにも乳がん検診を受けることが推奨されています。(乳がんの早期発見はセルフチェックが有効・3セルフチェックの大切さ参照)

おすすめ関連リンク:自宅でカンタン!痛くない!(乳がん検査キット)

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3.乳がんの検査7つ

代表的な乳がん検査7つを紹介します。これらを組み合わせて乳がんかどうかが診断されます。

1.問診

 体の調子や自覚症状についての質問に答えていきます。年齢・生理周期・妊娠の有無・授乳経験の有無・家族にがんになった人がいるか・今までの病気や怪我の有無・飲んでいる薬・現在受けている治療の有無・自覚症状(しこり・痛み・ひきつりなど皮膚の変化など)などです。医師はその問診内容を参考にしながら診察します。

2.マンモグラフィ

 乳房専用のエックス線撮影のことです。乳房を板で上下から挟み広げて撮影します。しこりやがんがしこりをつくる前にできる「石灰化」と呼ばれる病変を見つけることが可能です。「石灰化」が見つかっても乳がんと確定するわけではなく良性のものもあります。

メリット:③のエコー検査では見つけにくい「石灰化」を見つけやすい。

デメリット:・検査に痛みを伴うことがある。

      ・乳腺の密度が高いとしこりを見つけにくいことがある。

      ・妊娠中や妊娠の可能性があると検査を受けられないことがある。

3.超音波検査(エコー)

 乳房の外から超音波を発生する機械を当てその反射された波を画像化し、しこりの有無がわかる検査方法です。

メリット:・マンモグラフィと違い被曝のリスクがないので、妊娠中やその可能性があっても受けられる。

     ・痛みなど負担がない。

     ・乳腺の密度が高くても、しこりを確認できる。

デメリット:石灰化を見つけるのが難しい。

このようにマンモグラフィとエコー検査はメリット・デメリットがあるため、組み合わせて検査をされることが多いです。

4.CT

 CTは手術など治療を検討する時に行われる検査です。がんが他の場所(肝臓や肺など)へ広がっていないかを確認します

5.MRI

 手術前に行われる検査です。マンモグラフィやエコー検査ではわからない小さながんや広がりを検査します。

6.細胞診

 乳がんが疑われる病変(がんによって起こる組織が変化した部分のこと)が見つかった場合、もしくはマンモグラフィやエコー検査ではっきりとしない場合に細胞や組織を取り検査をします。組織を取るといっても乳腺外来で行うことができます。組織を取る方法には数種類ありますが、はっきりとした診断ができない場合は、手術室で組織を取ることもあります。

7.腫瘍マーカー

 腫瘍マーカーとはがんが体の中にある場合、がんから特定の物質が放たれておりその値を血液検査で測定します。腫瘍マーカーには種類がいくつもありますが乳がん疑いの場合” CEA” ”CA15-3”と呼ばれる数値が上昇します。しかし他の病気でも上昇することがあるので、あくまで補助的な検査となります。

建物の窓

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4.病院の決め方3選

 しこりなど気になる症状がある、もしくは詳しい検査を考えた時など、病院選びに迷うことがあるかもしれません。まず”乳腺外科がある病院受診をすること” ”乳腺専門医医のいる病院” ”がん診療拠点病院であること”、この3つについてお伝えします。

1.乳腺外科について

乳がんはほぼ女性特有の病気(男性も数%の確立で発症しますがかなり少ない)というイメージからか婦人科受診を考える方がおられます。しかし婦人科は子宮や卵巣が専門になります。乳房は乳腺外科になります。

2.乳腺専門医

日本乳癌学会が認定をしている資格です。乳腺の病気について診療の専門的な知識・豊富な実績があると認定された医師のことです。日本乳癌学会のホームページに乳腺専門医がいる医療機関の一覧が載っています。

3.がん診療拠点病院

がん治療に対する質の高い医療を提供するための医療機関です。全国に現在(令和6年4月時点)461箇所あります。厚生労働省が作成している一覧を参考にしてみてください。

最近はインターネットの普及で病院の口コミが簡単に見られます。口コミには「優しい先生だった」「話をよく聞いてくれて、すぐにお薬を出してくれた」等一般の方の評価で星マークがついています。しかしあくまで1意見であり、例えば話をよく聞いてくれたから、いい先生・いい病院ということには直接繋がりません。上記の専門的で高い医療が受けられる病院や医師を探すことをおすすめします。

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5.入院までの過ごし方

 検査から入院まで1ヶ月ほど時間があります。その間の過ごし方をお伝えします。

  1. 体の変化に対して
  2. 仕事について
  3. お金について
  4. 家族(パートナー)について
  5. 準備物品について

1.体の変化に対して

 乳がんの手術を受ける前の大きな不安要素として乳房の形の変化があります。手術の方法にもよりますが、どの程度形が変わるのか、乳房再建という方法もあります。形の変化は女性にとって自分らしさを保つために大切なことです。担当の医師とよく相談をしてみてください。

2.仕事について

 ある一定の方はがんと診断を受けると退職の方向で考えがちです。しかし人は役割があることで自分らしさを保っており、仕事は社会に対する役割を続ける場でもあります。またがん治療にはお金がかかります。治療を続けながら仕事をするためのサポート体制を職場の人事部に確認してみましょう。

 もし職場にサポート体制に詳しい人がいない場合、全国のがん診療拠点病院に「がん相談支援センター」があります。その病院に通院していなくとも無料で、そして匿名で相談できます。がん治療や仕事、お金などに詳しい看護師やソーシャルワーカーが相談にのってくれます。

 探し方はインターネットで「がん相談支援センター」と検索すれば出てきます。また国立がん研究センターに相談窓口があり、そこで教えてもらうこともできます。URLを載せておきますので、参照してみてください。

がん情報サービスサポートセンター/国立がん研究センター

3.お金について

 がん治療は治療内容や期間によっても変わりますが、費用がかかります。できるだけ保険や控除を受けて負担を少なくすることが望ましいでしょう。

  1. 高額療養費制度
  2. 医療費控除
  3. がん保険
  4. 傷病手当金

1.高額療養費制度

公的な健康保険に加入していれば誰でも受けられます。年齢や所得で治療費の自己負担額が決まっており上限を超えると戻ってきます。また事前に加入している健康保険に手続きしておくと支払う治療費は自己負担限度額までとなります。後から手続きすると一旦自己負担となり、払い戻しとなるので事前手続きをおすすめします。

2.医療費控除

医療費が年間10万以上もしくは所得の5%を超える治療費が必要になった場合に使えます。会社勤めの方でも確定申告をする必要があります。

 

3.がん保険

民間の保険に加入されていると、がん保険に入っている方もいるでしょう。内容を確認し申請方法の確認などを行なっておくとよいでしょう。

4.傷病手当金

会社員で治療のため働けない期間がある場合、給料がある程度支給されます。詳しくは加入している健康保険組合に確認してみましょう。

お金に関して「医療費のサポート体制について」の「3. 自己負担額のサポートシステム」に詳しく書いているので参照してみてください。

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4.家族(パートナー)について

 がんの診断や治療は精神的にも肉体的にも辛いことがあります。治療は長期にわたる時もあり、それを乗り越えるには親しい人にサポートしてもらうことが必要になってきます。同居している家族、子供、親、仕事関係の方、友人など身近な方に話しておくといいでしょう。

 私も母ががんと診断された時、家族は母以外いなかったのですが、職場の人や身近な友人に伝えて支えてもらっていました。仕事を調整してもらったり、私が精神的に辛かった時友人に話を聞いてもらい少しずつ落ち着いていきました。

5.趣味について

 今まで続けていた趣味、特に体を動かすスポーツなどをあきらめてしまう方がいます。手術してすぐに腕を動かすことは困難ですがしっかりとリハビリをして継続できることもあります。趣味は心のよりどころとして続けていく方向で考えてみましょう。

 今回は乳がんの診断から手術までの一般的な流れに基づいて・乳がん検診の内容・病院の選び方・手術までの待機期間で行えること、という内容をお伝えしました。次回は、手術後の生活で気をつけたいことを乳がんの手術・入院の流れに沿ってお伝えします。

6.まとめ

参照データ

※1 全国がん情報サービス 都道府県別がん罹患データ(2016年~2020年) 

rateタグ2020年年齢別(上皮内がん除く)参照

参考

乳がんのことがよくわかる本 監修:聖路加国際病院乳腺外科部長ブレストセンター長、山内英子 2018年,講談社

おすすめ関連リンク:自宅でカンタン!痛くない!(乳がん検査キット)


この記事を書いた人

看護師山川さちえ

山川幸江
<プロフィール>
病棟勤務14年。手術や抗がん剤治療など癌治療を受けられる多くの癌患者様に関わる。ICU配属中に、実母が肺癌ステージ4と告知を受ける。在宅での療養生活を見越し、訪問看護へ転職。同時期に事業所管理者となり、母の療養生活を支える。訪問看護でも、自宅療養の癌患者様に多く関わる。ダブルワークで働く中、母の在宅看取りを経験。自身の経験から癌患者様、介護中のご家族様が安心できる療養生活を過ごせるよう、介護空間コーディネーターとして、複数メディアで記事執筆、講座を行う。
<経歴>
看護師経験16年(消化器・乳腺外科、呼吸器・循環器内科・ICU/訪問看護・管理者)
自費訪問 ひかりハートケア登録ナース
(一社)日本ナースオーブ ウェルネスナース
<執筆・講座>
株式会社キタイエ様
「暮らしの中の安心サポーター“ナース家政婦さん”」
「ほっよかった。受診付き添いに安心を提供。”受診のともちゃん”」他
「がんで余命半年の親を看取った看護師の経験/ウェルネス講座」
「退院前から介護利用までの50のチェックリスト/note」

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