
子宮がんと診断され、これから治療を始めるにあたり、不安や戸惑いを感じる方も多いかと思います。私自身、子宮内膜症という病気を抱え、これまでに5回の入院を経験してきました。初めて入院した時、手術を含む治療に不安や心配は避けられませんでした。しかし、入院に関する事前の準備や治療のスケジュールを知ることで、気持ちに余裕が生まれました。
これから治療と向き合う中で、治療以前に入院が初めての経験という方もいらっしゃるかと思います。何を準備すべきか、どんな流れで進んでいくのかを事前に把握することは心の安定に繋がります。不安を少しでも軽減できるよう、私の体験もあわせてお伝えしたいと思います。同じような不安を抱える方々が、少しでも安心して治療にのぞめることを願っています。
この記事の目次
1. 治療の基本的な流れを知る
1) 治療や入院生活の見通しを確認する
治療の具体的な日程がわかると、治療のスケジュールが明確になります。そうすると、治療以外の時間をどのように過ごすか考えられたり、家族や職場の人に具体的に治療予定を伝えられて周囲の支援を得やすくなったりします。また、治療に関する質問も思い浮かびやすくなります。
入院生活の見通しを知る手助けとなるものは、医師または看護師から受け取る「入院診療計画書」や「治療説明書」です。治療の目的や方針、検査や手術のスケジュール、看護ケアなどの内容が明記されています。また、退院までの計画やその後のリハビリテーションなどの予定も含まれている場合もあります。
用紙を読んで、疑問点があれば遠慮せずに質問してください。自分自身が治療に納得し、前向きに受け入れることが、治療の効果を高める鍵となります。
下に治療方法別の入院日数とスケジュールについてのせています。手術療法の種類については、前回の「子宮がんと診断されたら?治療法の種類と選び方」の治療法の種類を参考にしてください。
手術療法を行う場合、開腹手術では7~10日程度の入院が必要ですが、膣式手術では日帰り~2日程度、腹腔鏡下手術では5~7日程度で退院可能な場合が多いです。今は、一日でも早くベッドから離れて過ごす時間を増やすことが大切といわれていることから、手術後の安静期間は短く、痛みがあれば鎮痛剤を使用します。そのため、入院日数はさらに短くなっています。
手術後に放射線治療や化学療法を行う場合は、手術後そのまま入院を継続して治療を行うこともあれば、通院で行えることもあります。通院で行う場合は、普段通りの生活でかまいません。ただし、疲れたらすぐに横になれる環境づくりをしておきましょう。無理は禁物です。
2) 入院治療に必要な準備を知る
私は初めての入院の時、看護師なので何を準備すればよいか、わかっているつもりでした。しかし、婦人科系の病気で入院経験のある同僚から差し入れでいただいた孫の手やクッションがとても役に立ちました。事前に何が必要かを知り、備えることがいかに大切か身をもって感じました。
まず、持ち物の準備をしましょう。病院から渡される「入院案内書」をもとに必要な持ち物を揃えます。入院案内書には、病院の設備や備品、病院で用意可能なものや患者さん自身が用意するものなど書かれています。バスタオルやタオルなど、最近はレンタルできるものが多くあります。持って行く荷物を増やしたくない時、体調が悪い時は洗濯をする必要もなく便利かと思います。
下にのせた入院グッズの一覧その➀~③は、私が実際に手術入院の準備をする時に書き留めたものです。今も急な入院に備えて揃えています。入院中にリラックスできるアイテムは、入院生活を快適にしてくれる重要なアイテムですので、お気に入りのものを持って行くようにしています。
また、入院で一時的に自宅を離れることになります。そして退院したあとも、すぐにもとの生活に戻れるわけではありません。家族に家のことを代わりにお願いしたり、職場に迷惑をかけているのではないかと不安になったりすることが増えると思います。
そのため、持ち物の準備と同時に、家事や仕事を家族や周りの人に引き継ぐ準備も忘れないようにしましょう。事前にしっかり話し合って、協力を得ることで安心して治療に専念できます。
2. 心のケアを大切にする
1) 一人で抱え込まず、支援を受ける
がんは身体の病気ですが、心にも大きな負担がかかります。がん患者さんの2~4割ほどの人は、心の治療を必要としているといわれています。身体の痛みへのケアが大切なように、心の痛みにもケアが必要です。
がんの告知をうけた時や手術の前、放射線治療や薬物療法を始める時、術後の再発や転移の不安を感じる時など、恐怖感や孤立感などいろいろな感情が起こります。治療に対して、一時的な感情のゆらぎは自然なことです。しかし、2週間以上続く場合は日常生活にさまざまな支障をきたし、治療の妨げにもなるため、心の支援や治療が必要です。周囲のサポートをうまく活用することで心が軽くなり、安定した心の状態を維持しながらがん治療を受けていくことができます。自分ひとりだけで抱え込まず、必ずサポートを求めてください。
まず、身近な相談先として挙げられるのは、病院の医療従事者です。主治医や看護師に相談し、不安を共有することで気持ちが軽くなることもあります。また、がん診療連携拠点病院ではがん相談支援センターやがん情報サービス、精神腫瘍科もあります。精神腫瘍科は、がん患者さんやその家族を対象にがんの診断や治療、仕事や学業、家族や周囲との関係など、がんと診断されたことで生じるさまざまな心のケアを行う診療科です。
また、家族や友人と気持ちを共有することも、心を軽くする大きな助けになります。さらに、同じ経験をしている人々と交流する患者会や地域のサポートグループがあります。
さらに、同じ病気を経験した人々と交流する患者会や地域のサポートグループがあります。このようなつながりは、孤立感を和らげ、前向きな気持ちを育む助けとなります。最近ではオンラインフォーラムやSNSなどを活用し、自宅にいながらサポートを受けることもできます。
2) 大切な人が子宮がんになった方へ
大切な人が子宮がんと向き合う姿を見守るのは、簡単なことではありません。子宮がんを経験する女性は「女性性を喪失した」と感じ、深い悲しみや孤独を抱えることがあります。一方で、家族やパートナーもどう接するべきか迷い、彼女たちの苦しみを理解できないと感じることがあるかもしれません。
患者さん自身が自分の周りの人たちに辛い思いをさせたくないと感情を押し殺してしまうことがあります。これが悲観的な気持ちを強める要因になることが研究で示されています。彼女たちが悲しみを口にした時、相手が否定せずに「その気持ちは自然なことだよ」と伝えてもらえると、受け止められた、励まされた、慰められたと感じられると報告されています。
無理に解決しようとせず、そばに寄り添い続けることは、心の支えになると思います。例えば、患者さんが話をしたい時は意見を挟まずに話を聞いてください。共に歩む姿勢が、お互いの心をつなぎ、困難を乗り越える力となるのではないでしょうか。
まとめ
・がん治療は身体だけでなく、心にも大きな影響を与えます。そのため、治療に向き合う際には、適切なサポートを得ることが大切です。
・事前の準備や心の支えとなる環境を整えることは、安心して治療と向き合うことにつながります。
次回は、安心して過ごすための生活の送り方についてお伝えします。
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この記事を書いた人
ヤマダ カオリ
〈プロフィール〉
親に勧められ、自分が希望する心理学への道をあきらめ、看護学校に入学し、病院に就職する。周りの同期のように看護が楽しいと感じられず、私のしたいこととは違うと思い続け、「看護師は向いていない」と悩みながら3年間 病院で勤務後、退職する。事務職に転職しようとパソコンや簿記を学ぶが、25歳では事務職への転職は難しく、生活のために看護師に復帰する。
復帰後はマンネリ化した機能別業務に、再度「看護師は向いていない」と感じる日々が続いていた頃、関連病院で病床数増床のため看護師を募集していることを知り、心機一転すれば看護の楽しさがわかるのではと思い、異動を希望し、上京する。上京した病院で、自宅で最期を迎えたいと希望する患者や家族への退院指導の難しさと充実感を知り、新人教育担当として新人看護師が日々成長していく姿に励まされ、5S活動やQCサークル活動を通じて業務改善に手ごたえを感じるなど、看護師を続けたいと思えるようになった。それからは、自分の興味の赴くままに学びを深め、特に認知症に関する知識や技術を身につけ、「その人の行動の意味することは何か、生活歴を通して気づく看護の楽しさ」を伝えたいと思うようになった。
現在は、「看護が楽しい」と感じる仲間を増やしたくて、看護学校で看護教員をしている。
〈経歴〉
看護師経験 32年(内分泌代謝・循環器内科病棟、外科混合病棟、高齢者施設で勤務)
看護教員養成研修 修了
認定看護師教育課程(認知症看護) 修了
医療安全管理者養成研修 修了
認定看護管理者制度 ファーストレベル・セカンドレベル教育課程 修了
〈講座〉
認知症ケアに関する講座 多数
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