今までのコラムでは、歯を失わないようにするためにお伝えしたいことを書いてきました。「歯を守ろう」シリーズ最後にお伝えしたいことは、歯を失った時の選択肢についてです。
歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士、歯科関連の製造会社、研究者など歯の専門家は多岐に渡ります。また、歯科関係に就労している方も数多くいます。こういった専門職が歯に関する様々な研究や製品開発を重ねているおかげで、歯を失ったとしても自分の歯が戻ったような生活ができるようになってきました。このコラムでは、歯を失った時の選択肢を3つご紹介します。
この記事の目次
1.入れ歯(義歯)
歯を失った時の選択肢として、なにか思い浮かぶものはありますか?
ほとんどの方は入れ歯を思い浮かぶのではないでしょうか?
入れ歯はテレビのコマーシャルや、アニメで登場するおじいちゃんやおばあちゃんのキャラクターと一緒に描かれていることもありますね。
入れ歯について少し詳しくお伝えします。
(1) 入れ歯(義歯)とは
歯が抜けた部分を補う目的で、取り外し可能な人工の歯を指します。
入れ歯には、総入れ歯と部分入れ歯の2種類があります。総入れ歯は、歯が1本も残っていない場合に用います。
部分入れ歯は、数本の人工の歯を連結しているものです。健康な周りの歯や歯ぐきに、入れ歯を固定して使用します。
日本の入れ歯は歴史があり、海外からは一目を置かれています。戦国時代だった16世紀半ばには、入れ歯が実用化していたことがわかっています。当時は仏像を作る職人がツゲの木などを彫刻し、仕上げたものを使用していました。
(2)入れ歯のメリット
残っている歯が少なくても使用することができます。取り外すことができるため、お手入れが簡単です。
種類は限定されますが、保険が適応するので経済的負担が少ないです。予算や希望により、保険適応外の性能を選ぶことができます。合わなくなったときは修理に出すことができます。
(3)入れ歯のデメリット
取り外し可能な反面、話している時や食べている時に外れやすいです。外れやすいため、発音のしにくさや噛みづらさを感じる場合が多いです。
一般的な歯磨きに加えて、入れ歯のケアが必要です。金属アレルギーを引き起こす可能性があります。
2.ブリッジ
(1) ブリッジとは
無くなった歯の両隣にある歯を土台として、橋をかけるように真ん中の歯を支える治療方法です。
歯がない部分に人工の歯が入るため、自分の歯に近い感覚で歯を使うことができるのが特徴的です。
ブリッジの歴史は、入れ歯よりも古く、なんと紀元前5世紀ごろから実用されたと考えられています。
発掘されたものや当時の記録によると、金属のプレートを使い、数本の健康な歯の間に偽物の歯を入れて繋いでいたということがわかっています。
(2) ブリッジのメリット
自然な見た目を回復することができます。インプラントと比較し、大きな処置がないため安価です。
治療期間は2週間前後と、インプラントと比較し早く済みます。入れ歯と違って取り外さないため、歯磨きやフロスなど他の歯と同じようなお手入れをすることができます。
しっかり取り付けるため噛む力が均等に分散され、食事や会話など日常生活での機能を回復させることができます。
(3) ブリッジのデメリット
ブリッジは人工の歯のため、寿命が7~8年と言われており永久的な使用ができません。ブリッジを作る時、無くなった歯の両側にある歯を削る必要があります。場合によっては、健康な歯を削ることもあります。
人工の歯を支える歯がなければ、ブリッジを作ることが不可能です。ブリッジと歯ぐきの間は汚れが溜まりやすいため、日常的なケアが必要です。
3.インプラント
(1) インプラントとは
インプラントとは、人工の材料や部品を体に入れることの総称です。「歯の」インプラントは、人工の歯根をあごの骨に埋め込み、その上に人工の歯を装着する治療方法を指します。
インプラントの歴史は、入れ歯やブリッジよりも浅く、初めて使用されたのは1910年頃と言われています。
導入してすぐの頃は、非常に多くのトラブルが発生し、日本では危険な治療とマイナスイメージが根付いてしまっていました。現在のインプラントは、トラブルがほとんどなく安全性の高いものになってきました。
(2) インプラントのメリット
天然の歯とほぼ変わらない生活を送ることができます。インプラントを装着しても、見た目が大きく変わりません。
健康の歯を削る必要がありません。痛みが起こりにくいです。見栄えをよく仕上げることが可能です。
義歯やブリッジと比べて利便性、快適性、審美性が高まります。
(3) インプラントのデメリット
保険適応ではないため、金銭的な負担が大きいです。一般的な相場は歯1本30万円ほどと言われています。治療期間が長く、場合によっては6か月ほど時間が必要な場合があります。
外科的な処置を行うため、痛み・腫れ・出血などの合併症の可能性があります。インプラントの治療後も定期的なメンテナンスが必要になります。
4.まとめ
今回のコラムでは、歯を失った選択肢として
✓入れ歯
✓ブリッジ
✓インプラント
があるということをお伝えしました。
歯科に携わる方は数多く存在し、現在も日々研究が行われています。再生医療や歯の移植など、少しずつ広がりつつあります。
もしかしたら近い未来に新たな選択肢が増えるかもしれませんね。歯を失った場合でも選択肢がありますが、やはり自分の歯の方が生活の質が守られます。
引き続き、今ある自分の歯を大切にしていただけると嬉しいです。ここまで5つのコラムに分けて「歯を守ろう」シリーズを執筆してきました。このコラムの出会いをきっかけに、何か1つ行動を変えてみませんか?
・1日1回の歯磨きを1日2回に増やす
・歯ブラシを月に1回交換する
・デンタルフロスを使ってみる
など、気軽にできることから始め、ご自身の歯を意識していただくことが大切です。あなたの将来で、あの時歯を大切にしてよかったと思える日が来ますように。
<参考資料>
テーマパーク8020 歯を失ったら
日本審美歯科協会 入れ歯あれこれ
日本歯科協会 歯医者さんに行こう!
この記事を書いた人
冨永美紀
母親の入院で関わった看護師に心を打たれ、看護師資格を取得。
看護師の現場で、臨場の場に立ち会うことで『生死』について興味が沸く。
恩師の紹介でお寺とのご縁が結ばれ、2020年から密教塾生となり修行の世界へ。
現在は仕事と修行を両立するため岐阜県へ移住し、夫と犬2匹と自然豊かな場所で暮らす。
<経歴>
看護師歴10年
・腎臓内科、糖尿病内科、内分泌科病棟
・救急救命センター
・自由診療のクリニック
・コールセンター
・訪問看護ステーション
・家事代行業