厚生労働省の小児入院施設基準では、小児病棟は15歳未満専用と決められています。また、親の思いとして、病気で入院となると、そばに居てあげたくなると思います。しかし現状は、病院側の設備の問題、子供の病状によって付き添い可能な場合と付き添えない場合があります。さらに付き添える場合でも、付き添いは過酷な環境です。どんな場合に付き添えるのか、付き添えないのか、親の付き添いに過酷な環境を支援するサポート体制をお伝えします。
この記事の目次
【1】病院側の事情
お子さんがかかっている病院が、小児専門や小児科として確立できている病院だと、問題はないのですが、地域によって、小児専門病院はないのでいつでもどこでも環境が整っていることは少ないです。治療のために入院が必要になったのに、いざ入院となると病院の設備不足と言われても困りますね。ですが、やむを得ず、病院の状況を受け入れなければならない事もあるでしょう。
例えば、骨折で緊急入院の場合、整形の一般病棟で対応する事となり小児でも大人と同じ病棟に入院することがあります。小児に適した環境ではないので病院側も、入院する側も困る部分があります。
実際に私が勤務していた病院で、小学校低学年の小さな女の子が骨折して入院してきたときには、すべての物の規格が合わず、保護者による介助が必須でした。ベッドやサイドテーブル、棚なども大きいため届かなかったのです。そのため、ほぼ24時間ご両親が交代で付き添っていました。
私が住んでいる地域からは車で二時間かけて大きい病院へ行かなければなりません。離島や過疎化した地域も同様の問題がありますね。小児専門病院だと、地域差の問題なく安心して入院加療できるようです。付き添い者に対しても状況を改善するようにこども家庭庁が対策に乗り出しているという情報もあります。
【2】付き添い者の現状
付き添いの人はどこに寝るのでしょうか?子供と一緒のベッドでしょうか?我が子が小さくて、ベッドに一緒に寝ることが出来るようなら問題は無さそうですが、点滴や装具などがあって、横に一緒には寝られない場合もあります。そうした場合、小児に対応できる病院の8割ほどは簡易ベッドの貸し出し*1を行っているようです。親の付き添いを病院側が推奨しているためだと考えられます。残りの2割ほどの貸し出しがない病院は個々での工夫が必要になるということです。その場合、自身で市販の簡易ベッドを持ち込んで軽い掛物等を準備している方や、寝袋を利用している人もいるようです。貸し出しのある環境の整った病院で治療ができることが望ましいですね。
子供に付き添いつつ、自分自身の生活も同じ場所で行うため、入浴や食事、衣類の洗濯なども必然的についてきます。食事はコンビニやインスタントカップ麺などの簡素なものになりがちです。入浴は、短時間で効率よく済ませるためにシャワーのみ。シャワーすらもない場合もあるようです。家族間で交代で休んだり、着替えに戻ったりして体調管理も同時に行わなければなりません。
知人の娘さんは、中学二年生の時に右腕の剥離骨折で手術のために5日ほど大学病院に入院しました。自宅からは片道2時間以上の距離でしたので病院の近くにホテルを取り、朝から21時の面会時間最後まで付き添い、夜だけ病院近くのホテルに寝泊りしていたそうです。小児病棟でしたが、付き添いが男親だったため、大部屋での寝泊りは気が引けたと話していました。仕事は休暇をもらい毎日様子を見に行けてよかったと話していました。
【3】子どもの入院、付き添いは何歳まで?!
小児とは0歳から中学三年生の15歳までを言い、その幅は大きいです。
前述した例からも何歳だから付き添いが必要とは言い切れないことが分かると思います(病院側から依頼される場合を除き)。
病状や一人一人の成長具合や本人の理解力の程度等で判断しましょう。しかし、理解力があるからといって慣れない病院への入院が不安なく出来る訳でもないので、できれば付き添ってあげてほしいのです。付き添わなくても大丈夫という子供はいません。居ないと思います。大人ですら不安になるのです。見知らぬ人たちに囲まれて、家とは違う環境で辛い治療を受けていくのです。できることなら、子供のために付き添ってあげてほしいと私は考えます。理想論かもしれませんが。
初めての付き添いや、何をどうしたらよいのかわからない場合、経験者の体験談などが役に立つと思います。こちらのリンク先に求めている答えがあるかもしれません。また子供の付き添いに対してサポートをしている団体も多数あります。いくつか紹介いたします。
NPO法人キープ・ママ・スマイリング
寄付を集めて付き添いしている方を応援しようという団体です。配食サービスも行っているようです。
つきそい応援団
実際に付き添いを経験して、付き添いの大変さを知った方々が営む非営利法人です。経験者が病院の情報を提供したり、掲示板もあるので、わからないことを質問することができます。
こども家庭庁は付き添いに適した病院施設の改善のため、費用補助の予算案を計上しています。また厚生労働省は子供が入院した家庭のサポートをするため、保育士を配置した病院に対し診療報酬を加算する改定を行なっています。
子どもへの「付き添い入院」、ベッドや寝具揃え家族の負担軽減…購入費を補正予算に計上:読売新聞オンライン-2024年12月13日掲載記事
【4】まとめ
年齢で付き添いを決めることはできないですが、必要な時に寄り添ってあげたいという気持ちはみんな同じだと思います。各家庭でそれぞれに事情があり「付き添いたいけれど、家に小さな子がいるため家を空けることができない」とか、「シングルなので経済的に厳しくなるため、休めない」とか、本当に家々ですべて違うと思います。
子どもも、家の事情や親の事情も成長とともに理解していきます。
そこでどうしても難しい場合には周囲の人に助けを求めることも考えてみてください。わが子の入院なのに、周囲に?と不思議に思われるかもしれません。私自身のことですがシングルだった当時、娘は3歳でウイルス性イレウスと診断され、入院したのです。お腹が痛いと泣く娘に付き添いながら自分自身の食事の準備や買い物など急なことで準備が追い付かず、頭も回らず、どうしていいか困り果てていたのです。
「一人じゃどうにもならない、困っている」とぽろりと口に出したことで、同僚らが私の食事や、娘のために絵本を買ってきてくれて、病室で子守をしてくれている間にシャワーを浴びに行き、着替えることができたのでした。
当たり前に生活していれば、難なくこなせている行動も、病院という特殊な環境下では、ままならず限界を感じてしまうのだと知りました。
遠くの親戚より近くの他人ということわざもありますから、思いがけず助けてもらえることもあるかもしれません。付き添いをするということは子供のために自分自身の生活を捨てるといっても過言ではないほどに大変ですが、病状が改善すると希望を持ち、前に進んでほしいと思います。
私のように簡単に人に「助けて」と言えない人もいることはわかっています。それでも、自分と子供のためにたまには人に甘えてみましょう。甘えると思わなくても、呟いてみるだけでもいいのです。その呟きをすくい、手を差し伸べてくれる人もいるかもしれませんから。
参照
「病気のわが子の隣で」付き添い入院 病院の4割超が依頼ーNHK NEWS WEB(2024.4.12)
参考文献
日本小児科学会 令和6年見解
この記事を書いた人
看護師:栗巣正子
<経歴>
看護師歴 23年
大阪府堺市で、50床~2000床の病院勤務(内科、外科、手術室、整形外科、療養病棟)。
離婚後、鹿児島県鹿屋市にて、老人保健施設、透析専門クリニックに勤務
大手生命保険会社に、営業主任として3年勤めた後、地域密着型の内科総合病院に17年(介護保険病棟、療養病棟、急性期病棟、心臓内科、腎臓内科、肝臓内科、消化器内科、呼吸器内科、腹膜透析、血液透析、外来、救急外来、訪問看護)勤める。
現在は、派遣ナース、非常勤での健診スタッフ、訪問看護指示書作成等の委託業務、ナース家政婦登録
<資格>
正看護師/普通自動車免許/大型自動車免許/けん引免許/たん吸引指導者/ペットセーバー/労災ホームヘルパー(A)