
体には細菌やウイルスから身を守るために免疫システムが備わっています。免疫の異常により血管や皮膚、筋肉や関節などの結合組織に慢性的な炎症が起きる病気を『膠原病』といいます。
関節リウマチは、かつて『不治の病』といわれて恐れられていた膠原病の一種ですが、現代は薬物の進歩により適切な治療とセルフケアを行うことでこれまで通りの生活を続けることができます。
今回は関節リウマチを正しく理解し、症状を緩和するための方法をお伝えします。
この記事の目次
1.関節リウマチとは?
厚生労働省の資料によると、国内で関節リウマチと診断された患者は約70万~80万人と推定されています。
これは人口の約0.5~1%に相当する数であり、高齢化に伴い患者数は右肩上がりに増加しています。特に30~50代の働き盛りの女性に発症することが多いため、家族や職場の理解が得られないと、治療をしながら仕事を続けることが難しくなります。
それだけでなく、周囲から理解されないというストレスが症状を悪化させる可能性もあります。
第105代内閣総理大臣の高市早苗首相も関節リウマチを患っているというのは世間的にも知られています。高市首相は2026年2月の衆院選演説中に関節リウマチの症状が悪化して一時NHKの討論番組を欠席したことがメディアでも取り上げられました。
それでは関節リウマチはそのような症状があり、どのような経過を辿るのでしょうか。
2.関節リウマチのステージ別症状について
もっとも初期にみられるのは起床時の手指のこわばりです。そして指の関節を動かす時に違和感があります。次第に関節が腫れてくると、関節可動域の制限を感じるようになります。
初期のうちは1時間以内にこわばりが改善することもありますが、炎症が進行すると午前中ずっとこわばりがとれないことも珍しくはありません。
関節リウマチのステージをまとめましたので参照してください。

●ステージⅠは滑膜の炎症に滑膜の炎症により朝のこわばりや関節の腫れ、痛みがありますがレントゲン上でも骨や軟骨の破壊はみられない状態です。日常生活への影響が少ないこの段階に治療を開始し、進行を食い止めることが重要です。
●ステージⅡは関節の軟骨が減り始めます。レントゲン検査では骨の破壊の始まりが確認できますが日常生活では身の回りのことは自分で出来る段階です。関節が腫れて痛みが出ることがあります。このステージの時から無理せず、周囲の人に理解を求めることが大切です。
●ステージⅢはレントゲン検査で骨の破壊が進み関節の骨が変形しているのを確認できます。痛みや関節の変形によって日常生活では外出や身の回りのことに介助が必要な場合もあります。この時期は薬物療法に加えて手術療法が検討される段階です。
●ステージⅣはレントゲン検査上で、関節の骨や軟骨が破壊し硬直して動かなくなります。変形したまま固定されるため、入浴や食事、移動などの日常生活の動作が著しく制限されます。慢性的な激しい痛みがあり寝たきり状態、車いすの生活を余儀なくされることがあります。
関節リウマチでは進行に伴い下のイラストのような独特の変形や拘縮が見られます。

3.関節リウマチの治療について
治療の目標は炎症と関節破壊を抑えて、痛みのない状態である『寛解』を維持することです。医学の進歩により治療効果の高い薬が開発され、ステージⅣでも人工関節置換術などで痛みを取り除く方法もあります。
ただし、免疫抑制剤による感染症のリスク、費用負担という側面も知っておく必要があります。
焦らず主治医と相談しながら治療を進めていきましょう。
関節リウマチの治療効果を高めるためには、治療と並行してセルフケアを行う必要がありますので次に説明します。
4.関節リウマチのセルフケア
①休息をとること
関節リウマチが重症化すると貧血や間質性肺炎、血管炎などの合併症を伴うことがあります。ストレスは免疫力を低下させるだけではなく、体力も消耗させてしまいます。積極的に休むための工夫をしましょう。
大切なのは腫れや痛みが強い時は安静にし、症状が落ち着いている時は適度な運動をすることです。このメリハリが体力の消耗を避けて免疫力を維持する秘訣です。
②保冷と保温を使い分ける
使い分けの基本は気持ちよい、楽だと感じるかどうかです。そのうえで以下の症状で判断しましょう。
●急性期(腫れや炎症がある時)は保冷する
痛みのある関節を冷やすことで炎症を鎮めて痛みを楽にすることが出来ます。保冷剤をタオルに包み、しばらく当てておきます。
●慢性期(こわばりや鈍い痛みがある時)は保温する
朝に起きるこわばりや、慢性的な痛みがある時は血行を促し硬くなった筋肉をほぐすと痛みが和らぎます。特に冬場は血管が収縮してこわばりや痛みが悪化しやすくなります。
入浴やホットパック、遠赤外線の商品や関節を保護する温熱サポーターをうまく利用しましょう。
また服装は首・手首・足首の三つの首を冷やさないことが大切です。
この三つは皮膚が薄く、太い血管が通っているため温めることで全身の血流が改善し筋肉の緊張をほぐして関節の動きを改善する効果があります。また痛みの原因となる物質『プロスタグランジン』の滞留を防いで痛みを緩和する効果があります。

③適度に関節を動かす
関節リウマチでも関節の可動域を保つために無理のない範囲で関節を動かすことが必要です。手首足首などの大きい関節から小さい指の関節の順番にゆっくりとした動きで行いましょう。
●指の握開運動
手指を握る・開く動作を繰り返し行います。同じように足の指も行いましょう
●指つまみ運動
親指と人差し指で丸をつくり開いて伸ばす動作を繰り返します。
●手首の曲げ伸ばし
手首を内側・外側にゆっくりと交互に動かす。
●足首回し
座った状態で足首を内回し、外回しと左右交互に行います。
これらを無理のない範囲で行いましょう。体が温まっている入浴後がお勧めです。
④周囲に理解してもらうための工夫
私は関節リウマチの患者様の看護をしていた頃に『一番つらいのは、病気を理解してもらえないことだ』と聞いたことがあります。
病気を周囲に理解してもらうためには、他者に伝えるための工夫が必要です。
具体的な工夫は次の3つです。
●整理して伝える
どのような症状でつらいのか、自分はどうなったら楽になるのか、手伝ってほしいことは何かを具体的に整理する必要があります。言葉で伝えることが難しい場合は一度紙に書いてみると良いでしょう。
●感情の共有
症状でつらい時は不安な気持ちや悲しみや怒りなど様々な感情が沸いてくると思います。その感情を無理に抑え込む必要はありません。具体的な症状や抑えきれない感情があることを相手の伝えていくことが大切です。それでは、伝え方を次に説明します。
●アイメッセージを使う
アイメッセージはⅠ(アイ=私)を主語にするコミュニケーション方法です。
例えば「今はとても痛くてつらいので私は寝ていたい」
「指を動かすと痛いので食器を洗ってくれると私はとても助かるの」
このように相手に「わかってほしい」という気持ちを伝える時に使うと効果的です。

➄生活での工夫
関節に負担をかけないように素補助具や自助具を生活スタイルに合わせて使用すると良いでしょう。
●食事の時:太い柄のついた箸やスプーン・すべり止めマット・ベットボトルオープナー
●着替え:ボタンかけ(ボタンエイド)・ファスナーフック
●入浴:柄の長い洗身ブラシ
●洗面:柄の太い歯ブラシ(ハンカチやミニタオルを輪ゴムで固定する)・歯磨きチューブ絞り
●移動:福祉用具を利用する。歩行器、4点杖、車いすなど。

自助具は100円ショップの介護用品コーナーでも取り扱いがあります。また、『リウマチ友の会』に紹介されていますので参考にすると良いでしょう。
『リウマチ友の会』https://x.gd/aeN6b
福祉用具『ダスキンヘルスレント』https://x.gd/UQ6YO
※関節リウマチは国の指定する難病には該当しませんが、合併症を伴う症状は指定難病として医療費助成の対象になります。
前者でも公的な医療保険に加入していれば利用できる支援制度もありますので各自治体の福祉相談窓口やかかりつけ病院のソーシャルワーカーに相談してみることをお勧めします。
まとめ
関節リウマチは進行性の病気ですが、治療とセルフケアを併用することで関節破壊の進行を食い止め、健康な人と変わらない日常生活を送ることが可能になります。そのためには一人で頑張るのではなく、家族、医療従事者、社会全体で助け合うことが重要です。
ひとり一人が病気を理解し、自分事として捉えると役割を見出すことが出来ると思います。

参考資料
『おしえてリウマチ』中外製薬
看護学講座専門Ⅱ『アレルギー膠原病感染症』医学書院
この記事を書いた人
福井三賀子
<プロフィール>
小児内科、外科、整形外科の外来と病棟勤務で看護の基本を学ぶ。
同病院の夜間救急ではアルコール中毒、火傷、外傷性ショックや吐血、脳疾患など多くの救急医療を経験。
結婚後は介護保険サービス事業所で勤務しながらケアマネジャーの資格を取得。6年間在宅支援をするなかで、利用者の緊急事態に家族の立ち場で関わる。
在宅支援をしている時に、介護者である娘や妻の介護によるストレスが社会的な問題に発展していることに気づき、心の仕組みついて学びを深めると同時に更年期の女性について探求を始める。
現在は施設看護師として入居者の健康維持に努めながら50代女性対象の執筆活動やお話会、講座を開講している。
<経歴>
看護師経験20年。
外来、病棟(小児・内科・外科・整形・救急外来)
介護保険(デイサービス・訪問入浴・訪問看護・老人保健施設・特別養護老人ホーム)
介護支援専門員6年
<資格>
看護師/NLPマスタープロテクショナー/プロコミニュケーター
<活動>
講座「更年期は黄金期」
ブログ「幸せな更年期への道のり」
メルマガ「50代女性が自律するためのブログ」
スタンドFMラジオ「幸せな更年期への道のり」
動画配信YouTube「看護師mikakoの更年期チャンネル」