がんと診断されたら、医師から病状とそれに対応した治療法を提案されると思います。どの治療法を選択するかは、あなた自身が決めなければなりません。また、婦人科のがんは社会的にまだまだ現役である年代に発症しやすい病気です。若くして発症すると50年以上も治療後の人生が待っています。そのため、治療法の選択は数十年先を見据えて選択する必要があります。
この記事では、子宮がんと診断された時、治療法とその選び方をお伝えします。治療法を知ることで、その選択の一助になればうれしく思います。
この記事の目次
1. 診断方法
「HPVワクチンだけではない 子宮がん予防の3つのポイント」の「定期的に検診を受ける」でお伝えしました通り、子宮がん検診では細胞診を行い、子宮がんの可能性を確認します。
細胞診で疑わしい結果が出た場合は、子宮頸がん、子宮体がんどちらも組織の一部を切り取って顕微鏡で調べる組織診で詳しく検査します。子宮頸がんの組織診を行う子宮頸部はほとんど痛みを感じないといわれており、通常麻酔をしないで検査します。しかし、子宮体がんの組織診は細胞診に比べておなかにひびくような痛みを伴う場合が多く、麻酔を使うことも多いようです。痛みに弱い方はあらかじめ医師に相談するとよいでしょう。
組織診に加えて、超音波やCT、MRI、PET-CTを使った画像診断や腫瘍マーカーとよばれる血液検査などを行います。これらの検査によって、がんの大きさや粘膜への浸潤の程度、がんの広がりなどがわかり、がんがどこまで進んでいるか、進行期(ステージ)が診断されます。ステージを知ることは、治療法を選択するうえで大切な情報になります。
2. 治療法の種類
1.がん治療の中心となる3つの治療法
治療法には、主として手術療法、放射線療法、薬物療法があります。それぞれの特徴を知ることは、自分に合った治療法の選択につながります。
- 手術療法
がんの治療法の中で、もっとも多く行われています。がん組織を直接取りのぞくことができるため、根治を目ざせる可能性が高い治療法です。
開腹手術や膣式手術のほかに、最近ではおなかに小さく穴を開けてカメラや手術器具を挿入してモニター画面を見ながら行う腹腔鏡下式手術も行われるようになりました。
- 放射線療法
高エネルギーの放射線(X線、ɤ線、電子線、粒子線)を使って、細胞の核にあるDNAを壊し、がんの増殖を抑える治療法です。
からだの外から放射線を照射する外部照射法と、子宮内や膣内に放射線源を挿入して行われる内部照射法(密封小線源治療)があります。ステージや患者さんの体調に合わせて選択されます。
- 薬物療法
薬物療法には、抗がん剤による化学療法、子宮体がんの場合に使用するホルモン療法、がん細胞の成長を抑える分子標的治療薬が含まれます。
手術療法や放射線療法と異なり、注射で全身に薬物の効果を巡らせることもできます。手術の前に病巣の縮小を期待したり、治療効果の持続や再発を防止したりすることなどを目的に、がんの特徴に合わせて効果的な薬を選択します。また、ひとつの薬を使用するよりも作用の異なるいくつかの薬を組み合わせた多剤併用療法が一般的です。
おすすめ関連リンク:自宅でカンタン!痛くない。その場でわかる「子宮頸がん検査キット」
2.子宮頸がんの進行期別治療法
子宮頸がんは手術療法が中心ですが、進行期(ステージ)によって治療内容が異なります。
ⅠA期はがんが子宮頸部にとどまり、子宮頸部以外に転移している可能性が低い状態のため、扁平円柱上皮境界を切除する「円錐切除術」が第一選択となります。子宮の大部分を残すことから、妊娠の可能性を残すこともできます。しかし、円錐切除術を行った結果、完全にがんが取り切れていないと判明した場合は、追加手術として「単純子宮全摘術」が行われます。
また、ⅠA期でもⅠB期に近い状態の場合、がんがリンパ管を経由して子宮から全身に広がる恐れがあるため、子宮とその周辺の組織や骨盤リンパ節も切除する「準広汎子宮全摘出術」が行われます。
ⅠB期からⅡ期になると、子宮とその周辺の組織や骨盤リンパ節のほか、卵巣・卵管の両側付属器を切除する「広汎子宮全摘出術」が行われます。再発のリスクが高い場合は、術後に「放射線療法」または放射線療法と化学療法を同時に行う「同時化学放射線療法」が追加されます。
Ⅲ~Ⅳ期はがんが子宮周辺の組織や他の臓器に転移しているため、「同時化学放射線療法」や「全身化学療法」が中心となります。
3.子宮体がんの進行期別治療法
子宮体がんも手術療法が中心となります。しかし、子宮頸がんと異なり、子宮体がんは子宮の奥に発生するため、手術前に正確な進行期を判断できません。最終的な進行期の確定は、手術で摘出した病変の組織を検査して決定します。そのため、手術前には初期のがんと推測されていたのに、手術後にリンパ節まで広がっていたことがわかり、進行期の分類が変更されることもあります。
子宮体がんのごく初期で、年齢が40歳以下で妊娠を望む場合は、手術をせずにホルモン療法で6か月~1年ほど様子を見ます。病変が消えなかった場合は手術療法が選択されます。
Ⅰ期ではリンパ節の転移している可能性が低いことから、まず「単純子宮全摘出術」が行われます。手術をしている間に、リンパ節に転移していないかどうかを検査します。転移が確認された場合、骨盤と傍大動脈リンパ節をあわせて取りのぞく手術法へ変更されます。転移が確認されなければ、手術後の追加治療はありません。
Ⅱ期はがんが子宮頚管部まで広がっているため、「準広汎子宮全摘出術」または「広汎子宮全摘出術」が行われます。
Ⅲ期は卵巣や膣、子宮周辺の組織にがんが広がっているため、再発の危険から手術後に薬物療法を追加します。
Ⅳ期は他の臓器にもがんが広がっているため、最初に薬物療法を行ってから手術療法や放射線療法などの治療を行います。
3.治療法の選び方
医師から病気について十分な説明を受けた上で、その内容を正しく理解し、納得し、治療法を選択することが大切です。ただし残念ながら、診察時間は限られています。限られた時間で聞きたいことを質問していくために、準備しておきたいことがあります。
1.信頼できる人に相談する
信頼できる人に相談することで気持ちが整理され、自分が治療を受ける中で大切にしたいことは何か、どのような治療を希望するか気づくことができたと話す患者さんもいました。
また、説明に同席してもらい、聞き逃しを防いだり、自分では思いつかない質問をしてもらえたり、あとから客観的な意見を聞くこともできます。一人で説明を聞く不安を軽減できるのではないでしょうか。
2.前もって聞きたいことを準備する
病気や治療法に関する基本的な情報を知った上で、質問したいことをメモに準備しておくと、質問しやすくなります。
情報収集する際、インターネットだけではなく、大きな医療機関であれば、患者向けの図書スペースや看護師を配置して相談できるところもあります。がん診療連携拠点病院には相談支援センターがあり、情報を提供したり相談窓口があったりします。また、わたしはこの記事を書くにあたり、公共図書館の司書に本を一緒に探してもらいました。意外と公共図書館は健康・医療本は充実していて、参考になる本があります。
3.メモをする
説明の内容をあとから確認できたり、わからなかったことを調べたりするときに役立ちます。場合によっては、医師の許可を得てスマートフォンなどで医師の話を録音させてもらえれば確実です。
治療について疑問に感じることや少しでも不安なことは、聞くことに遠慮があるかもしれませんが積極的に医師に質問や相談をしてみましょう。質問や相談をすることで必要な情報を得ることができますし、医師と信頼関係を築くきっかけになると思います。
まとめ
・子宮がんと診断を受けた場合、組織診や画像診断、血液検査などを行い、進行期(ステージ)を決定します。
・子宮頸がん、子宮体がんどちらも進行期(ステージ)によって、治療法は異なります。治療法には、手術療法、放射線療法、薬物療法があり、患者さんのからだの状態などを考慮して、選択されます。
・信頼できる方と協力し、必要な情報を得ることで、自分自身の希望を大切にしながら治療法を選ぶことができます。
次回は、子宮がん治療を乗り越えるための心の準備についてお伝えいたします。
この記事を書いた人
ヤマダ カオリ
〈プロフィール〉
親に勧められ、自分が希望する心理学への道をあきらめ、看護学校に入学し、病院に就職する。周りの同期のように看護が楽しいと感じられず、私のしたいこととは違うと思い続け、「看護師は向いていない」と悩みながら3年間 病院で勤務後、退職する。事務職に転職しようとパソコンや簿記を学ぶが、25歳では事務職への転職は難しく、生活のために看護師に復帰する。
復帰後はマンネリ化した機能別業務に、再度「看護師は向いていない」と感じる日々が続いていた頃、関連病院で病床数増床のため看護師を募集していることを知り、心機一転すれば看護の楽しさがわかるのではと思い、異動を希望し、上京する。上京した病院で、自宅で最期を迎えたいと希望する患者や家族への退院指導の難しさと充実感を知り、新人教育担当として新人看護師が日々成長していく姿に励まされ、5S活動やQCサークル活動を通じて業務改善に手ごたえを感じるなど、看護師を続けたいと思えるようになった。それからは、自分の興味の赴くままに学びを深め、特に認知症に関する知識や技術を身につけ、「その人の行動の意味することは何か、生活歴を通して気づく看護の楽しさ」を伝えたいと思うようになった。
現在は、「看護が楽しい」と感じる仲間を増やしたくて、看護学校で看護教員をしている。
〈経歴〉
看護師経験 32年(内分泌代謝・循環器内科病棟、外科混合病棟、高齢者施設で勤務)
看護教員養成研修 修了
認定看護師教育課程(認知症看護) 修了
医療安全管理者養成研修 修了
認定看護管理者制度 ファーストレベル・セカンドレベル教育課程 修了
〈講座〉
認知症ケアに関する講座 多数
未来をつくるkaigoカフェ 「つづけるカフェ」隔月開催(現在休止中)
おすすめ関連リンク:自宅でカンタン!身体にも負担のない検査キット(子宮頸がん)