目次
エラン公式LINE
友だち追加

看護師が詳しく解説!頭痛トリセツ④仕事も遊びもあきらめない!頭痛治療最前線

頭痛トリセツ④仕事も遊びもあきらめない!頭痛治療最前線

はじめに

片頭痛は多くの人々が日常的に経験する身近な症状のひとつですが、「片頭痛に特化した治療薬がある」ことは知らない方が多いのではないでしょうか?

第一回目の記事「以外と知らない頭痛のこと」でもお伝えしましたが、「頭痛くらいで病院に行くなんて」と、医療機関を受診する方は少ないのが現状です。
しかし、近年の頭痛治療は進化を続けており、従来の治療薬に加えて新しい治療薬も登場しています。

頭痛トリセツ第4回目は、頭痛の急性期薬の1種であるトリプタン製剤と、頭痛の予防薬で新薬の抗CGRP関連製剤を中心にご紹介します。

特に、片頭痛に悩まされており医療機関の受診をしたことがない方へ、受診のきっかけになればと思います。

1. 片頭痛の治療薬とは?

大きく分けて二種類の治療薬があります。

1) 急性期薬

まず、頓服(とんぷく)薬として、「頭痛を感じた時に内服する」急性期薬です。
一般的にはアセトアミノフェンや、非ステロイド抗炎症剤(NSAIDs)などは馴染み深いかもしれません。
下記③に表記したトリプタン製剤は、片頭痛発作が始まった早めの段階で内服することで効果があります。
例えば、「頭痛にならないように早めに飲む」「嘔吐し、寝込んでしまった」など、内服するタイミングが早くても遅くても、その効果は期待できません。

急性期薬は、頭痛の頻度や種類によって投薬の種類、飲み方は異なるため、それぞれの方々にあった薬の選び方、飲み方は医師に相談しましょう。

急性期薬の種類

  • アセトアミノフェン(カロナール、バファリン、タイレノールなど)
  • 非ステロイド抗炎症薬(ロキソニン、ボルタレン、イブプロフェンなど)
  • トリプタン製剤
  • エルゴタミン
  • 制吐剤
頓服薬、とんぷく薬

トリプタン製剤とは?

片頭痛の発症に関係する物質のひとつに、セロトニンという神経伝達物質があります。別名「幸せホルモン」と呼ばれていますが、自律神経や女性ホルモンのバランス調整、睡眠などに関わっています。
強いストレスなど何らかの刺激でセロトニンが少なった結果、片頭痛を引き起こす原因のひとつとなります。
セロトニンに構造が類似している「トリプタン」は片頭痛の治療に広く使用されています。

トリプタン製剤の種類

ゾーミッグゾルミトリプタン製剤
レルパックスエレトリプタン製剤
マクサルトリザトリプタン製剤
アマージナラトリプタン製剤

2) 予防薬

頭痛の予防薬は、頭痛が発生する前に内服する薬で、頭痛の発作そのものを減少させることを目的としています。こちらは、頓服ではなく毎日定期的に使用することで、頭痛の回数や強さを抑え、日常生活への影響を最小限にすることを目的としています。

予防薬の種類

抗てんかん薬
(バルプロ酸)
元々はてんかんの治療薬として使用されていますが、片頭痛の予防にも効果があります。
降圧薬
(ロメリジン、プロプラノロール)
高血圧の治療薬として使用されていますが、片頭痛の予防効果も確認されています。
抗うつ薬
(アミトリプチリン)
うつ病の治療薬として使用されていますが、片頭痛の回数や強さを減少させる効果があります。
CGRPの作用と片頭痛発作時の吐血及び唾液中のCGRP(イメージ図)
監修:社会医療法人会 富永羽院 副長 竹島 多賀夫 先生2) Schuster N, Rapoport AM: Nat Rey Neurol. 2016: 12(11):635-650(苦者にイーライリリー社からコンサルタント料を受領している者が含まれ)を一部改変 3) Brain SD. et al.: Nature. 1985: 313: 54-56 4) Cady RJ. et al.: Mol Pain. 2011: 7: 94 5) Na W. et al.: The calcitonin gene-related peptide family. Form, function and future perspectives 2010: Springer: p.151-171

抗CGRP関連製剤とは?

頭痛の予防薬として2021年、「抗CGRP関連製剤」と呼ばれる画期的な薬剤が登場しました。
内服薬では痛みのコントロールが難しく、日常生活の支障が強い場合などに処方されています。

CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)、聞き慣れない名称ですね。
これは、顔や頭の感覚をコントロールする「三叉神経」にたくさん含まれているものです。CGRPは脳の周囲の血管のCGRP受容体に作用して、血管の拡張、神経が刺激されて炎症が起きることに関係します。

もっとわかりやすく言うと、CGRPは頭の中にある「信号」のようなものです。
これがたくさん出ると、頭の血管が広がって、痛みを感じるようになります。これが「頭痛」です
CGRPを止めるお薬は、この「信号」をブロックして、血管が広がらないようにして頭痛を防ぎます。頭痛の治療には、このCGRPの活性を抑えることが重要です。

抗CGRP関連抗体薬のメカニズム

抗CGRP関連製剤は、このCGRPの働きをブロックすることで片頭痛の発作を予防します。

具体的には、CGRPそのものやその受容体に結合することで血管の拡張や炎症を抑制し、頭痛の発生を防ぎます。他の治療法に比べて副作用が少なく、安全性が高いとされています。また、これまでの薬剤で効果が見られなかった患者さんにも有効であることが多く、片頭痛の頻度や強度を大幅に減少させることが臨床試験で確認されています。

抗CGRP関連製剤の種類 (皮下注射薬)

  • エムガルティ(ガルカネズマブ)
  • アジョビ(フレマネズマブ)
  • アイモビーク(エレヌマブ)

これらの薬は、1ヶ月に1回または12週間に1回3本打ち(アジョビのみ)の投与で効果を発揮します。

2. 治療の進め方と医療機関の選び方

片頭痛の診断と治療は、専門医の診察を受けることから始まります。
正確な診断を受け、ご自分の頭痛のタイプや原因を理解しましょう。

頭痛のタイプは、頭痛トリセツ第2回目での記事「頭痛の検査、診断」をご参考ください。
頭部MRIなどで脳に異常がないかを確認した後、医師と相談しながら最適な治療法を決定します。

信頼できる医療機関を見つけるためには、頭痛専門外来や頭痛専門医がいるクリニックを探しましょう。

脳神経外科や神経内科があるからといって、頭痛に対してよく診察しているとは限りません。
例えば、「頭痛に関して親身になって診察してくれる医師」「片頭痛で通院している」などの口コミや評判を参考に、自分に合った医療機関を選びましょう。

3. おわりに

2021年春から日本に登場したCGRP関連抗体薬は、これまでの治療法に比べて非常に効果的であり、副作用も少ないため、多くの片頭痛持ちの方々にとって希望となるものだと感じています。

頭痛に悩む日々から解放され、より充実した生活を送るために、ぜひ専門医の診察を受け、最適な治療法を見つけてください。あなたの頭痛に対する理解と対策が、日常生活を大きく改善する一歩となることを願っています。

■参考文献:日本の頭痛診療ガイドライン2021
一般社団法人 日本頭痛学会 CGRP関連新規片頭痛治療薬ガイドライン(暫定版)
最適推進使用ガイドライン ガルカネズマブ

LINE友だち追加ボタン

エラン公式LINE

定期的にコラムの更新、キャンペーンなどご案内しています。ぜひご登録をお願いいたします



この記事を書いた人

看護師:工藤 巳知子

北海道出身、看護師歴21年。
新卒で一般病棟勤務中、急変対応の経験不足を痛感したため手術室・救急外来へ部署移動。

上京後は大学病院の高度救命救急センター、民間病院の集中治療室(ICU /CCU)で12年。

その後、命を救う現場から病院と在宅を結ぶ訪問看護ステーションへ転向。営業やマネジメント、国際医療搬送を経験。

21年間、脳神経外科領域に関わり、現在は開業メンバーとして脳神経外科のクリニックに勤務中。

脳と意識、こころの探求を学びながら、フリーランスナースとして活動中。

よろしければシェアをお願いします
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!