みなさんは、「頭痛」と聞いてどんなことを連想されますか?
頭痛のイメージ
「風邪を引いた時や、二日酔いの時になる」
「寝れば治るもの」と思われるような軽い頭痛、
またはくも膜下出血や脳出血などの重く怖い病気
頻繁に起きる頭痛や、吐き気がしたり横になりたいほどの痛みがあるとき、それは日常生活に大きく影響を与えます。 市販の痛み止めでなんとか日常を送っていても、どうにもならない痛みで精神的に追い込まれてしまう症状、それが頭痛です。
脳の病気からくる頭痛なのかが気になっても、仕事や家庭のことを休めない、「頭痛くらいで・・・」と思われることが気になってしまい、辛いことが言い出せない。 頭痛持ちの方にとって、心身ともに安定した日常生活を送ることが非常に難しいこともあります。
「たかが頭痛」と軽視されがちな頭痛。今回の記事では、日常生活に大きく影響を与えている、「一時性頭痛」にスポットを当て、「頭痛の取り扱い(トリセツ)」 として進めていきたいと思います。
この記事の目次
1.頭痛とは?
頭痛は、おおきく2種類に分けられます。
一時性頭痛
はっきりとした原因がわからない、「頭痛そのものが病気である」いわゆる「頭痛持ち」と呼ばれるもの。片頭痛、緊張性頭痛、群発頭痛などのことをいいます。
二次性頭痛
脳に頭痛の原因となる脳出血やくも膜下出血、髄膜炎などのはっきりとした病気がある場合の頭痛です。
この章では、一時性頭痛について、少し詳しく進めていきます。
(1)緊張型頭痛
日本に約2000万人いると推計されている「緊張型頭痛」は、側頭筋や後頚筋群、僧帽筋などの頭から首、背中にかけての筋肉のコリや張りによって、痛みを感じる神経が刺激されることで痛みが起こると考えられています。
原因と症状
スマートフォンの操作、デスクワークや車の運転などの「うつむいた姿勢」や強いストレスなどで、頭蓋骨を包んでいる筋肉が縮み続けることで起きやすいと言われています。 頭が締め付けられるような痛みがダラダラと30分〜数日続きます。
対策と治療
頭の周りの筋肉を普段から動かしたり、血流を良くする目的で首の周りを温めるホットパックや入浴などもいいでしょう。 鎮痛剤を何度も使用するような頭痛が続く場合には、慢性的な頭痛になる前に頭痛外来や神経内科などの専門外来で、医師による適切な治療方針を決めてもらうことが大切です。
(2)片頭痛
日本で片頭痛がある人は約840万人と推計さ れ、20〜40代の女性に多く、その数は男性の3.6倍になります。 特徴として、突然に起こり始めることが多いようです。
STEP
第1段階
音、光、気圧の変化、ホルモンバランス、温度変化、ストレス、運動、匂い、アルコール、睡眠不足
原因と症状
まぶしい光や騒音、においやストレス、気圧の変化、月経などのホルモン変化や寝不足が頭痛を誘発する神経伝達物質を分泌します。それらの働きで脳の表面にある硬膜の神経と血管の周囲に炎症が起こり、血管が拡張して痛みが起こると考えられています。 痛みの持続時間は4~72時間で、頭の左右どちらかや両側が脈を打つようにズキンズキンと痛み、動くと悪化するのが特徴です。 嘔気や嘔吐を伴い、寝込むほどの痛みになり日常生活に強く影響を与える頭痛といわれています。
対策と治療
痛む部位を冷たいタオルなどで冷やしたり、静かな暗い場所で安静にし、少しでも睡眠をとってみましょう。片頭痛の治療は、頭痛発作が起きた時に頭痛を鎮める急性期治療と、頭痛発作を起きにくくする予防療法の二種類があります。 緊張型頭痛同様に、専門外来で医師に相談し、適切なお薬の処方の継続が大切です。
(3)群発頭痛
20代~40代の男性に多く、数週間から数か月にわたって片方の眼の周囲から側頭部にかけて発作的な激痛が起きる病気です。発作は150~180分ほどで、眼をえぐられるような強烈な痛みが襲います。群発頭痛には、対症療法がありません 。
頭痛専門外来を受診し、酸素投与や内服薬による適切な治療が必要な病気です。
(4)薬物の使用過多による頭痛(MOH:Medication Overuse Headache)
もともと頭痛持ちだった方がなりやすい病気です。
MOHは、鎮痛剤を内服し過ぎてしまうことにより、逆に頭痛が起きやすくなっている状態 をいいます。 以前から、1か月に15回を超える頭痛がある、1か月に10日もしくは15日以上、3か月を超えて定期的に服用している方は、MOHに移行している可能性が高い でしょう。慢性的な頭痛は適切な治療によって緩和することができますので、頭痛外来を受診してみましょう。
2.片頭痛による個人、社会への影響
辛い頭痛症状があったとしても、定期的に医療機関を受診している方は全体のわずか2.7%にとどまり、一人で我慢している人もすくなくありません。(慢性頭痛の診療ガイドライン2013より)
また、頭痛による生産性の損失は世界中でなんと数兆円に上るとされています。 この研究では、頭痛による労働力の損失や医療費、およびそのほかの経済的な損失が指摘されています。 頭痛の発作がある時、 仕事中の集中力や効率の低下が報告されています。(参考:Global, regional, and national burden of migraine and tension-type headache)
(1)頭痛が「ある」ときにつらいこと
日常生活に及ぼす影響は、「いつも寝込む 4%」「時々寝込む 30%」「寝込まないが支障あり 40%」と、全体の74%は日常生活に支障をきたしていると言われています。学校や仕事など休みがちになってしまうのも片頭痛の特徴です 。
(2)頭痛が「ない」ときにもつらいこと
いつ来るかわからない頭痛のために、日常生活を制限することがあります。
例
計画を立てると、迷惑をかけてしまうから、予定を立てられない。
迷惑をかけないように、と遠慮して無理をしてしまう。
片頭痛の発作が出ても、早退すればサボっていると思われるのが怖い。
楽しいことを計画しようとすると自分で制限をかけてしまい、社会的な活動を避けるようになる。
以上のように、家庭でも職場でも、周囲の人が頭痛のある人の辛さを理解し、サポートしていくことが大切ですね。
3.まとめ
いかがでしたでしょうか?
頭痛トリセツ第一回目は「意外と知らない頭痛のこと」 について、特に日常生活に最も影響を与える頻度の高い「片頭痛」 にスポットをあててみました。 頭痛のない人にとっては、なかなか理解することが難しい病気かもしれませんがご家族や友人、職場の方に頭痛持ちの方がいたら、少しでもその苦しみに寄り添えるような知識になれたら幸いです。
次回は、「頭の病気じゃないですか?」〜頭痛持ちの方が気になる検査、診断〜についてお届けいたします。
参考資料:頭痛の診療ガイドライン2021 、一般社団法人 日本頭痛学会
この記事を書いた人
看護師:工藤 巳知子
北海道出身、看護師歴21年。 新卒で一般病棟勤務中、急変対応の経験不足を痛感したため手術室・救急外来へ部署移動。
上京後は大学病院の高度救命救急センター、民間病院の集中治療室(ICU /CCU)で12年。
その後、命を救う現場から病院と在宅を結ぶ訪問看護ステーションへ転向。営業やマネジメント、国際医療搬送を経験。
21年間、脳神経外科領域に関わり、現在は開業メンバーとして脳神経外科のクリニックに勤務中。
脳と意識、こころの探求を学びながら、フリーランスナースとして活動中。