適応障害の症状の代表例として今の心の不調を引き起こします。
- 咳がでる
- 胸が苦しい
- 動悸がする
- 眠れない
- 気分が落ち込む
心と体の症状を和らげるために多くの医療機関では、精神安定剤や睡眠薬などの内服が処方されます。
しかし、適応障害は特定のストレスが原因で発症しているため、内服治療だけでは完治は難しいとされています。
適応障害の根本的な治療は、ストレスとなる原因を取り除くことに焦点が当てられます。
ここでは、内服治療を含めた適応障害の治療方法について説明していきます。
この記事の目次
1. 適応障害の治療は精神科?心療内科?
病院を受診するとき、まず体の不調を訴えて受診することがほとんどではないでしょうか。
適応障害も他の病気と同じく、体の不調を訴えて受診されることが多くみられます。
一般的には、内科などの診療科目を受診し問診を進めるうちに医師から適応障害を指摘され、精神科や心療内科にかかることを進められるケースが多くみられます。
医師の判断で、精神科か心療内科のどちらかの受診を勧められますが精神科と心療内科では何が違うのでしょうか。
精神科も心療内科も同じ「心の病気」を扱っていますが、症状の違いによって分かれるため、どこに症状で出ているかでどちらを受診するかを勧められます。
精神科・心療内科を受診する目安
精神科 | 心の不調による「心の症状」が中心 |
心療内科 | 心の不調による「体の症状」が中心 |
【精神科で多い症状の相談】
- 周りから陰口を言われているように感じる
- 常に誰かから監視されているように感じる
- 人の言葉に悪意を感じる
- 物忘れが増えた
- 特定の場所に行こうとすると足がすくむ
【心療内科で多い症状の相談】
- 疲れているのになかなか寝付けない
- 消化器症状(胃が痛い・下痢や便秘を繰り返す)がある
- 学校や会社に行こうとするとめまいや吐き気に襲われる
- 特定の場所や環境で緊張や震えや息苦しさが出てくる
- 原因不明な頭痛や倦怠感が続く
適応障害は、特定のストレスから離れると症状が良くなるため、自覚しにくいのが特徴です。
症状が1週間から2週間続いたら医療機関へ受診することをおすすめします。
2. 適応障害の治療薬
適応障害と診断された場合、症状を軽くするために内服治療を行います。
処方される内服や量は訴えのある症状により変わりますが、どのような治療薬があるかご存じでしょうか。
適応障害で、使用する薬剤は主に3つに分けられます。
- 抗不安薬(精神安定剤)
-
不安や緊張が強い場合に処方されます。
抗不安薬は興奮した自律神経を落ち着かせ、体をリラックスせる目的で処方されます。
注意点は依存性があるため、服用する期間は短期間にすることが望ましいとされています。
- 睡眠薬
-
眠れないという訴えに対し、処方されます。
適応障害では、眠りに入るまでに様々な考えを巡らせた結果、寝付けなくなります。
不眠が続くと、日中の生活に支障をきたすため眠れるように処方されます。
不眠の種類は3つに分けられ、その人の不眠のタイプに合わせて内服が処方されます。
- 入眠困難(寝入りばな)
- 途覚醒(途中で目が覚める)
- 中・早朝覚醒(朝方に目が覚める)
- 抗精神薬・抗うつ薬
-
脳内のドーパミンやセロトニンといったホルモンを増やすことで、症状の改善を期待する薬剤です。
抗精神薬や抗うつ薬の効果は次のようなものがあげられます。
- 幻覚や幻聴を改善する
- 意欲ややる気がわかないなどの症状を緩和する
- 思考や気持ちを落ち着かせる
抗精神薬や抗うつ薬は、うつ病や統合性失調といった精神科特有の疾患の症状の改善を目的とします。
適応障害は、一定のストレスから離れることで症状が改善するため使用頻度はそれほど多くありません。
うつ症状が長期間経過する場合に、処方が検討されることがあります。
3. 薬と併用する治療方法
適応障害の内服治療の役割は症状に合わせて内服の種類や量を調整していきますが、内服治療は補助的に使用する程度です。
適応障害の治療は、特定のストレスに対しどう向き合うかということに焦点が当てられます。
1) 休息と環境調整
適応障害の治療法に、環境調整と休息があります。
適応障害は、原因となっているストレスから離れることで症状は改善するため、ストレスとなる場所や人から離れることを優先します。
環境調整と同時に、休息についても調整していきます。
適応障害で悩む人は、周りの人へたくさんの気づかいや我慢で心と体が疲弊しきっている状態です。
そのため、心と体の疲れを一旦リセットする必要があります。
学生の場合は数日~数週間、学校を休むことを検討します。
症状の重さによっては、休学することも視野に入れていきます。
社会人で症状が軽い場合は休まずに所属長と相談しながら、時短勤務や仕事の割り振りを決めていきます。
症状が重い場合は、休職することを検討していきます。
休職明けには、無理のないように業務や勤務時間の調整を行っていき、心と体を仕事の環境に慣らしていきます。
どうしても、働いていた部署に復帰することが困難な場合は部署変更を行い同じ職場でも環境を変えるなどの調整を図っていきます。
更に、今働いている職場に戻ることが考えられない場合は転職をするなど、職場環境を変える方法もあります。
ただ、転職も環境が変わるため、ストレスを大きくする可能性もあります。
一人で決めずに、家族や主治医と相談して決めることが望ましいでしょう。
もし可能であれば、一旦休職などの措置を行ったうえで、今の職場で続けられるか検討しながら家族や主治医とともに今後の方針を決めていくことをおすすめします。
2) 認知行動療法(カウンセリング)
同じ出来事であても受け止め方は人によって偏りがあり、他愛のない人の言葉や行動でもストレスを大きく受ける場合があります。
物事の受け止め方を「認知」といいます。
適応障害は、認知に何らかの不具合が起き、抜け出せなくなることでストレスが重なり、発症すると言われています。
例えば仕事で、あと10分で会議に行かないといけない場合「あと10分ある」と思うか「あと10分しかない」と思うのでは、感じるストレスに違いが出てきます。
更に、「あと10分しかない」と思った場合は焦ってミスをするなど行動にも影響がでてきます。
認知行動療法は、認知と行動に働きかけて、考え方や捉え方のバランスを整えてストレスを減らしていく心理療法のことを指します。
4. 自分でできる心のケア
適応障害は自分の内面(こころ)で起きる病気であり、周囲から理解されずにつらい思いをすることもあります。
環境調整を行ったとしても再発する可能性もあります。
そのため、適応障害では自分でできる心のケアが重要になってきます。
ここでは、今日からできるケアについてご紹介していきます。
1) 職場でできる心のケア
仕事をしているとき、苦手な業務や人がいると身構えてしまい、イライラや焦りが起きることがあります。
また、集中することで体に緊張し、気が付いたら肩こりがひどくなっていたということはないでしょうか。
そういった症状は、体が休息を求めているサインです。
以下のことをすると効果的です。
- 伸びをする
- 深呼吸をする
- ストレッチや軽い運動をする
- 笑う
- 休憩室でドリンクを飲む
- 窓の外の景色を見る
- 可能であれば、部署を離れて外に出る
深呼吸は、緊張やストレスで凝り固まった筋肉を緩め、体をリラックスさせる効果があります。
呼吸に集中することで、ネガティブな気持ちを落ち着かせる効果があります。
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ストレッチや軽い運動は、長時間の仕事で疲れた体をリフレッシュするとともに体を動かすことで思考を一旦リセットすることができます。
このほか、業務をしている場所から離れることで仕事モードから切り離されると気分が変わり、戻ってから仕事の効率がよくなるとも言われています。
2) 日常生活でできる心のケア
仕事以外でも日常生活でセルフケアを継続させることで、適応障害の症状を軽くすることや再発予防につなげることができます。
- 十分な睡眠をとる
- 休日はしっかり休む
- 適度な運動を行う
- 美味しいものを食べる
- 気軽にできる趣味をつくる
睡眠不足だと体に負担がかかりストレスを増やす原因となるため、十分な睡眠をとることが必要です。
どうしても、眠れない場合は睡眠剤を服用することで休息ができるのであれば服用することは悪いことではありません。
休日は、あれこれ考えずに自分が好きなことやリラックスできることを優先して過ごすことを意識しましょう。
適応障害で悩む人は、仕事とプライベートの切り替えが難しく休みの日でも仕事のことを考えてしまいがちです。
また、休みの日は家事や育児のことでタスクが溜まりがちですが全部自分で抱え込む必要はありません。
ご家族と話し合って、分担して行うなどの工夫が必要です。
5. まとめ
適応障害の治療はストレスとなる因子を取り除くことが最優先になります。
そのため、内服治療は症状を軽くするための手段です。
重要なのは、カウンセリングや休息で環境を調整し特定のストレスとの向き合い方を変えることです。
ストレスを避けることで、適応障害の症状は短期間で軽くなりますが、再発の可能性もある病気です。
ストレスは、知らず知らずの間に積み重なってくる場合もあります。
周囲の人への気遣いも大切ですが、ご自身の体調を最優先して心のケアを行っていただきたいと思います。
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この記事を書いた人
大竹 加代子
大阪在住。身内の死をきっかけに、よりよい生き方を社会に広めたいと思い看護師となる。
整形外科・外科・脳外科・内科・循環器の急性期病棟を経て、回復期リハビリテーション病棟・地域包括ケア病棟へ勤務・現在に至る。
現役看護師として医療に携わる一方、こころの健康が身体の健康に及ぼす影響を実感し、こころと身体の健康を取り扱う看護師Wellnessナースとしてメンタルケア・認知科学の学びをすすめながら、適応障害の人のための電話相談やセミナー開催に向け取り組んでいる。
《経歴》
看護師歴25年
プロコミュニケーター
NLPマスタープラクティショナー
一般社団法人 日本ナースオーブ所属 Wellnessナース
保険外訪問看護 看取り対話師
《執筆》
株式会社 ELAN 様
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