前回の記事
看護師がわかりやすく解説!小児の発達障がい②発達障害のある子供が保育園・幼稚園で困りやすいこと
子供の成長はとても早いものです。赤ちゃんだと思っていたら、あっという間に幼稚園・保育園を考える時期になります。成長していくにつれ、「もしかして発達障害かも?…
幼稚園・保育園を卒園して、小学生になるということは本人にとっても、親御さんにとっても大きな節目です。
環境がガラッと変わるため、親御さんは心配で不安は尽きないと思います。
この記事ではそんな親御さんの不安を少しでも和らげることが出来るように、
発達障害のある子供が小学校に就学する時の3つ心構えお伝えします。
この記事の目次
心構え1.【子供の力を伸ばす】
幼稚園・保育園の時期であれば、出来ないことは先生や親御さんが代わりにしてくれます。
小学生になると先生や親御さんの力を借りながら、徐々に身の回りのことを自分で出来るようなっていく必要があります。
発達障害の特性により、苦手なことや出来ないことがあります。
苦手なことや出来ないことをすることは強いストレスがかかります。
苦手なことを克服するよりも、無理をさせないことが大切です。
苦手でも社会で生きていくためトレーニングした方が良いこともあります。
その場合はソーシャルスキルトレーニング(SST)という社会性を養うための専門的なトレーニングを取り入れてみることをお勧めします。
(1)無理をさせないこと
自閉症スペクトラム症の特性の中に、「感覚過敏」という特性があり、味覚、触覚が過敏になることで偏食になることがあります。多くの人が「おいしい」と感じる味や舌触りの料理でも、砂を食べているような感覚になる子供もいます。
偏食を治そうと無理に食べさせることはストレスに繋がります。
家ではパスタしか食べないけど、学校の給食は残さず全部食べることが出来るということもあります。
明らかな栄養失調が無い限りは、子供が食べられるものを軸に気長に様子を見てあげてください。
子供によって苦手なことは違います。
無理をさせないためにも気長に、根気よく探っていく忍耐力が必要です。
(2)ソーシャルスキルトレーニング(SST)の活用
ソーシャルスキルとは社会的技能と訳されます。
社会生活の中で良好な人間関係を築くための技術です。
例えば、自閉症スペクトラム症(ASD)の特性を持っていると空気を読むことや非言語コミュニケーションを察することが苦手だったり、自分の興味のある話題であれば一方的に話してしまったりします。
また注意欠陥多動性障害(ADHD)の特性を持っていると集中したり、注意を向け続けたりすることが苦手であるため友達や先生の話を聞きもらしてしまいやすいです。
以上の行動をすると、仲の良い友達が出来てもいつの間にか疎遠になってしまいかねません。
苦手なことを克服するには時間がかかります。早い段階で少しずつトレーニングをしていくことが大切です。
ソーシャルスキルとして代表的な5つを紹介します。
①あいさつが出来る
あいさつはコミュニケーションの基本ではないでしょうか。
《あいさつの例》
- おはよう
- おはよう
- こんにちは
- さようなら
- いただきます
- ありがとう
- ごめんなさい
また自己紹介も大切なあいさつの1つです。
極端かもしれませんが、例えば初対面の人と出会い仲良くなっていきたいという時に、「(名前)です。」だけで終わってしまうと、良い関係を築いていくことは少し難しいかもしれません。
逆に名前等の簡単な自己紹介で良い時に、趣味や好きなドラマの話をしてしまったら周りが困ってしまうかもしれません。
適切なあいさつや自己紹介を知っていくことはコミュニケーションの第一歩です。
②身だしなみを整える
TPOに合った服装、髪型があります。
例えば、外出する時、下着が見えてしまうことは適切ではありません。
下着が見えてしまう場合、下着が見えないように服を着る練習が必要です。
また下着が見えないような服を選ぶことも必要になってくるかもしれません。
自閉症スペクトラム症の特性があると空気を読むことや暗黙の了解を理解することが苦手です。
こだわりもあり、特定の色や服、服の組み合わせでなければ外出をいやがることもあります。
感覚過敏があると特定の肌触りの服が苦手です。例えば布地が擦り合わさりシャカシャカという音が鳴る服、身体にフィットするような服、裏起毛の服が苦手など様々です。
また、体調や機嫌によっても、不快感の程度が変わることがあります。
ゆくゆく、子どもが自分自身の特性とTPOに合わせた服装や髪型を選べるように支援していくことが必要です。
③人の感情を知る
自閉症スペクトラム症の特性があると、非言語的コミュニケーションを察することが苦手です。
そのため、相手が喜んでいるのか、怒っているのか、悲しんでいるのかなど表情や態度から読み解くことが難しいことがあります。
そして知らないうちに相手を怒らせ、悲しませることをしてしまい仲の良い人間関係を築けないことがあります。
どんな表情が喜んでいるのか、どんな態度が怒っているかなど知っていくことで色んな人と良い人間関係を築いていきやすくなります。
④人との関わり方を知る
パーソナルスペースという言葉をご存知でしょうか。パーソナルスペースとは、個人を取り囲む見えない境界線です。その中に他人が入ると違和感や嫌悪感が生じます。
自閉症スペクトラム症の非言語的コミュニケーションを察することが苦手という特性のため、相手のパーソナルスペースの距離感を掴めずに、相手が驚いてしまうということがあります。
注意欠陥多動性障害(ADHD)の衝動的という特性があると、いきなり相手に触ってしまうということがあります。
年齢が低いうちはそこまで問題になることはありませんが、年齢が高くなっていくと、特に異性にいきなり触れることがあればトラブルに発展してしまう可能性があります。
社会で生活していくために、他者との関わり方を知ることは大切です。
⑤柔軟性を養う
自閉症スペクトラム症には同じことを繰り返したり、特定の習慣に執着したりする「こだわり」という特性があります。
同じこと、特定の習慣は「何が起こるか」分かっているため、安心します。
新しいものや未知の事柄は「何が起こるか」分からないため、不安な気持ちになることはないでしょうか。
自閉症スペクトラム症の特性を持つ子供はその感覚が強いため、予想外のことがあるとパニックになることがあります。
大人の自閉症スペクトラム症の特性を持つ方の中には、急な予定変更に対応しきれずパニックになってしまう方もいます。
心構え2.【子供の選択を尊重する】
(1) 行き渋りと不登校になっても慌てない
行き渋りと不登校になる原因は人間関係、勉強のことなど様々です。
中学生くらいになると「どうして学校に行きたくないのか」という理由を説明することが出来るようになりますが、小学生のうちはまだ難しいです。
しかし行き渋りと不登校は子供にとっての、「強いストレスがかかっているよ」というサインであるため、無理に登校させようとせず子供の選択を尊重し、話に耳を傾けてあげてください。
(2)行ける時だけ行ってみる
例えば「図工は受けたい」というように受けたい授業はあるか、「火曜日と木曜日だけ行ける」と行ける曜日はあるのか、「3時間目からなら行ける」など本人の希望があるか話を聞いてみてください。
心構え3.【おおらかでいること】
子供にとって、親御さんがおおらかでいることが1番重要です。
おおらかでいることで、心に余裕が出来て子供のことを「ありのまま」受け入れることが出来ます。
心に余裕がないと、我が子と周りの子を比べて「周りの子は出来ているのに、うちの子だけ出来ていない」とネガティブな感情になってしまいます。
子供が成長するにしたがって、「自分が周りと少し違うかも」と感じるようになることがあります。
そんな時、子供に対してネガティブな感情になってしまうと子供の味方でいることが難しくなります。
子供にとって、親御さんが味方でいてくれることは何よりの心の安心につながります。
4. まとめ
この記事では発達障害のある子供が小学校に就学するときの3つの心構えお伝えしました。
- 心構え1【子供の力を伸ばす】
- 心構え2【子供の選択を尊重する】
- 心構え3【おおらかでいること】
少しでも不安が和らぎますことを願っております。
あわせて読みたい
看護師が解説! 小児の発達障害①発達障害に気づくきっかけと診断までの流れ
現在、発達障害で支援が必要とされる子どもの数は年々増えています。しかし、「障害」という言葉からネガティブな印象を抱く方も少なくないのではないでしょうか。 この…
この記事を書いた人
山本みどり
【プロフィール】
看護師経験。大学病院のNICU(新生児集中治療室)で勤務後、精神科、訪問看護を経験。
現在は小児発達ケア専門訪問看護ステーションで発達障がいと診断された子どもやそのご家族へ小児発達ケアを行っている。発達ケアを通して、子どもとご家族が安心して過ごせるように支援をしている。
食から身体のことを整えたいと思い、プライベートでは中医学・薬膳を学んでいる。
【経歴】
看護師/Webライター
看護師歴6年 NICU、精神科、訪問看護(成人・精神特化・小児発達ケア)
家政婦やベビーシッターとしても働いている