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看護師が解説!小児の発達障害⑤発達障害のある孫と関わる時の心の準備

祖父母と孫

発達障害を持つ孫とどのように関わって良いか困ることはありませんか?
この記事では、発達障害をもつ孫と関わる時の心の準備について、説明していきます。

この記事の目次

1. 発達障害という言葉を聞いたことはありますか?

壁に向かって遊ぶ子供たち

昔は『発達障害』という言葉はありませんでした。1987年にアメリカ精神医学会で初めて使われました。

その後、言葉や概念が日本に入ってきて徐々に広まってきました。
発達障害と言う言葉は1980年代以降に広まっていきました。
そして支援の必要性も徐々に高まっていき、2005年に発達障害に特化した発達障害支援法という法律が施行されました。

平成24年度の文部科学省の調査によると、通常学級に在籍する子どもの中で発達障害の可能性がある生徒は6.5%の割合でいるという結果が出ました。
この調査はあくまで複数の教員によって判断された回答で、医師の診断によるものではないそうです。
100人いたら、約6人は行動面や学習面で著しい困難さが認められるということです。

こだわりやコミュニケーションの苦手さ、落ち着きのなさ、聞く・読む・書くが出来ないなどの発達障害の特性があり、そのような判断に至ったのだと思います。
この割合はあくまで通常学級での数値のため、支援学級は入っていません。
そのため発達障害を持つ子どもは6.5%以上いる可能性の方が高いです。

自身の孫が発達障害である可能性もありえます。

参考 文部科学省 | 5.発達障害について

2. 発達障害は治りますか?

子どもの勉強を見守る母親

本屋や図書館に行くと、「発達障害は治せるのか?」という本が並んでいるのを見ることが出来ます。
つまりそれほど「発達障害が治るかどうか」ということに対して、関心が高いことが分かります。

この質問に対して、「治る」または「治らない」と断定的に答えることは難しいです。
ただコントロールすることは出来るようになる可能性は高いです。
そこには「子どもの成長発達」「環境調整」が大きく関わってきます。

確かに一般的な発達をする子どもよりも苦手なことが多いかもしれません。
しかし適切なケアを受けることで成長発達が促進され、様々な分野の第一線で活躍出来るような長所になることもあります。

また環境によって、苦手な部分が強く出ることがあります。人が多くいる場所など刺激が多い場所では障害の特性が強く出て、パニックや癇癪を起してしまう子もいます。落ち着いていることが出来る環境にいれば特性が出ないようであれば、環境を調整することで障害の特性をコントロールすることも出来ます。

子ども自身の成長発達を促しつつ、適した環境を整えてあげてください。

3. 孫守りとは?

孫、祖父母

厚生労働省によると、1980年の調査で共働き世帯は614万世帯だったものが年々増加しており、2020年では1240万世帯と約2倍となっています。

参考 厚生労働省 | 図表1-1-3 共働き等世帯数の年次推移

もし近くに住んでいたとしたら、仕事が忙しいという理由で「ちょっと預かって欲しい」と孫守りを頼まれる機会はきっと多いでしょう。

働く夫婦の代わりに子ども達の日常の世話をすることが『孫守り』です。
孫守りの内容としては日中預かり一緒に遊んだり、ご飯を用意し食べさせたり、危なくないように見守ったり、幼稚園・保育園のお迎えをしたり、急に熱が出てしまって親の代わりに病院へ行ったりと多岐にわたります。

孫と過ごすことは、祖父母にとって楽しいことかもしれません。ただ発達障害を持っているといわゆる『普通』や『当たり前』ということが苦手なことが多いです。そのため「あれ?」と戸惑うことも多いかもしれません。

4. 発達障害の孫と関わる時に気をつける3つのポイント

子ども、こども、女の子

発達障害を持っている子どもは、一般的な子どもに比べ少し関りにくさや難しさがあり、孫守りを始めると戸惑うこともあります。

ポイント1〈発達障害の特性を知っておくこと〉

分からないことや理解出来ないことは「なぜ?どうして?」とモヤモヤという感情につながることがあります。知識を得ることで解消させることが出来ます。

例えば孫が同じルーティンをしないと癇癪を起してしまう時。
発達障害の自閉症スペクトラム障害の知識が無ければ「どうして怒っているの?」と戸惑ってしまうかもしれません。もし『こだわりが強い』という特性を知っていたなら、「いつものルーティンが出来なかったから怒ってしまったのかな?」と納得出来るのではないでしょうか。

詳細なことまで知っておく必要はないと思います。何となくでも知識があるだけで違います。

ポイント2 〈他の子どもと比べたくなる気持ちを一旦置いておく〉

発達障害を持つ子どもは得意なことと苦手なことが極端である場合があります。何か得意なことや好きなことには驚くような集中力を見せることがあります。反対に落ち着きが無かったり、注意が散漫になってしまったりすることがあります。学習障害という発達障害があると、字の読み書きや計算が出来ないこともあります。

他の子どもと比べて、「努力が足りない」「怠けている」と感じることもあるかもしれません。特に小学生になると国語や算数など保育園・幼稚園に比べ、本格的に学習に入って行きますが、学習障害があると思うように読み書きや計算が出来ません。それは決して努力が足りないわけでもなく、怠けているわけでもありません。

他の子どもと比べてしまうと出来ない部分に目がいってしまいがちです。
他の子どもと比べたくなる気持ちを一旦置いて、孫自身の良いところに目を向けてあげてください。

ポイント3 〈気を使いすぎなくて良い〉

孫を預かるということは安全に気を配りながら、遊び相手をしたりおやつを用意したりする必要があります。

子どもは元気です。散歩や公園に行くと、あとを追いかけたり、一緒に遊んだりするかもしれません。身体を使うことになるため、疲労を感じたり、筋肉痛になったりすることもあります。

アレルギーを持つ孫がいる時は何が含まれているかチェックするという手間がかかります。また用意するにもお金が必要で、少し出費が増えるため経済的な負担も増えます。

身体的にも経済的にも負担がかかります。気を使い過ぎず、自身が楽しいと思える範囲で孫守りを楽しんでください。

5. さいごに

インターネットで「みんな、どんなキーワードを良く使っているか?」ということを調べる検索システムがあります。「孫守り」と調べると多くの人が「孫守り とは」と調べる中で、「孫守 疲れ」と検索している人も多いことが分かります。

孫守りは子どもを預かり面倒をみるという、体力的にも精神的にも疲れます。
もしもそこに「発達障害」という未知のことがあったら、「分からない」「理解出来ない」と戸惑い、さらに精神的に疲れます。

インターネットで調べたり、図書館に置いてある本を借りて読んでみたりして少しずつ知識を蓄えて、子ども達を理解してあげてください。そうすることで自分自身に余裕も生まれてきます。



この記事を書いた人

山本みどり 【プロフィール】 看護師経験。大学病院のNICU(新生児集中治療室)で勤務後、精神科、訪問看護を経験。 現在は小児発達ケア専門訪問看護ステーションで発達障がいと診断された子どもやそのご家族へ小児発達ケアを行っている。発達ケアを通して、子どもとご家族が安心して過ごせるように支援をしている。 【経歴】 看護師歴6年(NICU、精神科、訪問看護/成人・精神特化・小児発達ケア)

山本みどり

【プロフィール】
看護師経験。大学病院のNICU(新生児集中治療室)で勤務後、精神科、訪問看護を経験。
現在は小児発達ケア専門訪問看護ステーションで発達障がいと診断された子どもやそのご家族へ小児発達ケアを行っている。発達ケアを通して、子どもとご家族が安心して過ごせるように支援をしている。
食から身体のことを整えたいと思い、プライベートでは中医学・薬膳を学んでいる。

【経歴】
看護師/Webライター
看護師歴6年 NICU、精神科、訪問看護(成人・精神特化・小児発達ケア)
家政婦やベビーシッターとしても働いている

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