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看護師がわかりやすく解説! 救急医療② 救急搬送に付き添う人の役割について
少子高齢化の現代は全国でも救急搬送の件数は年々増え続けています。 2022年の総務省消防庁のまとめによると、搬送車のうち6割超にあたる386万2874人が65歳以上の高齢者…
緊急時は誰もが慌てているために、冷静に物事を判断できなくなります。それが家族であれば、なおさら大慌てとなってしまいます。
しかし、救急車で病院に搬送されたとなれば診察券やお金が必要になりますので急いで準備をしなければなりません。
検査の結果で入院になれば寝衣や洗面道具など必要物品はさらに多くなります。
いざという時に何が必要なのかは普段意識していませんが、こうなったらこれが必要だと前もって予測し準備することは大難を小難にするためにも大切なことです。
今回はいざという時に慌てずに準備が整えられるように、緊急時に必要な物品と費用についてお伝えします。
この記事の目次
1.救急車が到着するまでに用意する物
ご家族や身内の方の状態が悪化した時は、誰もが慌ててしまうものです。側にいるのが自分だけであるとなおさら何をしてよいのかわからなくなります。このような時のために必要物品を前もって準備しておくと安心です。
緊急時用のカバンをひとつ用意すると保管場所さえ伝えれば、入院となった時でも後から自分以外の人が持参することができます。
普段使用する保険証や診察券、お薬手帳などは小バック、またはポーチに小分けして必要に応じて出し入れすると便利です。
それでは具体的に何が必要なのかをあげていきます。
(1) 小バック、またはポーチに入れて普段持ち歩く物
- 保険証、診察券
- お薬手帳
- 内服中の薬
- 現金、小銭、クレジットカード
- 印鑑
- メモ帳、黒色のボールペン
- 家族の連絡先を記入したもの
- 携帯電話 充電コード
(2) 緊急用として大きめのカバンに入れておくもの
- 着替え(上下肌着、靴下)×2セット
- 必要に応じてオムツやリハビリパンツ、パット、ナプキン
- 冬場は上着
- 靴
- 室内履き
- タオル(バスタオルは掛物にもなるので便利です)
- 外用薬(点眼薬・吸入薬・貼布薬・軟膏類)
- 義歯ケース、歯磨きセット
- ポケットティッシュ・ウェットティッシュ
- 石鹸・シャンプー
- ペットボトルの水1~2本
救急搬送される方自身は担架にのせられるため、靴をはいてないケースがほとんどです。
たとえばすぐに帰れることになったけれど、靴がなくて困った!という方が案外多くいらっしゃるようです。
付き添うご家族は、搬送される方の靴も忘れずに持参しましょう。
(3)現金の持参について
緊急時に救急車を呼んでも日本であれば費用は発生しません。
行政サービスのひとつであるために搬送費用はすべて税金で賄われています。
しかし、到着後に救急外来で診察を受けた際には検査や診察料などの費用が発生します。
時間外受診で窓口が閉まっていても預り金を支払う費用は必要になります。
病院によってはクレジットカードが使えない場合もあるため、現金は持ち合わせた方が良いでしょう。
また、搬送された時間帯や検査によって費用が変わりますので、おおよそどの程度必要なのかを知っておくといざという時に慌てないで済みます。
次の項目では診療時間外に受診した際にどれくらいの費用が必要かを説明していきます。
2.必要な金額について
休日や時間外で病院の診療時間以外の時に受診した場合は割り増し料金が加算されます。緊急時に受診されるとたいてい会計窓口が閉まっている場合が多いため預り金を支払うことになります。
預かり金の目安(※病院によって差があります)
保険証の提示がある場合 | 高齢者2,000円~ 一般5,000円~ |
保険証の提示がない場合 | 10,000円~ ※交通事故の場合も含む |
※入院になった場合はもう少し高額の預り金となります。
私は子供が交通事故で緊急搬送された経験があります。
その時は外来のみでしたが日曜日であり30,000円の預り金を支払いました。
後日、受付で清算され過払い金は返却されましたが入院になる場合や他に必要な経費のことを考えると30,000円~35,000円は手元にあった方が安心です。
受診月を過ぎると自費での清算となることがあるため、遅くても月末までに清算を済ませると良いでしょう。
診療時間外に受診すると、どの程度の加算があるのかを下の表にまとめたので参考にしてください。
緊急で受診するとなればレントゲン検査やCT検査など症状から診断するために様々な検査が必要になります。
また、応急処置としての点滴や注射も必要に応じて実施されますのでそれぞれの料金についても参考にしてください。
検査の結果入院の必要がない場合は必要な金額を受付に支払いますが、帰りはお迎えの車が必要になります。
時間帯によっては家族が迎えに来てくれるとは限りませんのでタクシーの手配とタクシー代が必要になります。
ほとんどの病院の受付前にはタクシー会社の電話番号が提示してあるので受診の際に確認しておくと良いでしょう。
タクシー料金は地域によっても差がありますが基本は初乗り運賃と加算運賃によって算定されます。
10㎞で3,000円~4,000円となりますので目安としてください。
また、診察をされた方がお体に不自由がある場合は介護タクシーが必要になりますが、病院側も患者様や付き添いの方の状況を見て帰宅できるかを判断されます。
もし、困ることがあれば相談してみましょう。
3.入院になった時に必要なもの
診断の結果、入院になった時には緊急用として用意しておいたカバンが役に立ちます。
当日は検査着に着替えるため、あとの必要物品は後からでも充分に準備することが出来ます。
入院になった時に追加で必要なものを下にあげましたので参考にしてください。
- 寝衣(診察や検査がしやすいように前開きのものをお勧めします)
- 洗面用具
- 着替えを入れるビニール袋
- ボックスティッシュ
- 保湿剤
- 爪切り
- 電気髭剃り
入院時に付き添いの方やご家族の都合によっては荷物を準備することが出来ない場合もありますがそのような時でも今は入院セットをすぐに準備してくれるサービスがありますので安心です。
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4.まとめ
緊急時に備えての荷物の準備や緊急受診をイメージすることはいざという時に慌てないで済む習慣です。
緊急時の受診は曜日や時間帯によって動き方やかかる費用の違いが出ることを知るだけでも心構えが変わります。
常日頃から、いつでもあり得ることと想定して荷物のチェック表などを作成しておくと良いですね。
緊急受診の際は、たとえ搬送されたとしても状態によって優先順位があります。
付き添いの方も長時間待たされることが予測されますので、搬送者だけではなく付き添う方ご自身が疲労しないような準備も必要です。
たとえ緊急事態であっても付き添う側の心のゆとりで状況が左右されますので、飲み物や間食できるものがあると待ち時間に一息つくことができます。
私も子供が交通事故で搬送された時は長時間待たされましたが、飲み物を飲むだけでも落ち着きを取り戻すことが出来ました。
荷物の準備と一緒に心を整えることも大切ですね。
次回は「救急搬送時に医師や看護師に確認したいこと」についてお伝えしていきます。
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この記事を書いた人
福井三賀子
<プロフィール>
小児内科、外科、整形外科の外来と病棟勤務で看護の基本を学ぶ。
同病院の夜間救急ではアルコール中毒、火傷、外傷性ショックや吐血、脳疾患など多くの救急医療を経験。
結婚後は介護保険サービス事業所で勤務しながらケアマネジャーの資格を取得。6年間在宅支援をするなかで、利用者の緊急事態に家族の立ち場で関わる。
在宅支援をしている時に、介護者である娘や妻の介護によるストレスが社会的な問題に発展していることに気づき、心の仕組みついて学びを深めると同時に更年期の女性について探求を始める。
現在は施設看護師として入居者の健康維持に努めながら50代女性対象の執筆活動やお話会、講座を開講している。
<経歴>
看護師経験20年。
外来、病棟(小児・内科・外科・整形・救急外来)
介護保険(デイサービス・訪問入浴・訪問看護・老人保健施設・特別養護老人ホーム)
介護支援専門員6年
<資格>
看護師/NLPマスタープロテクショナー/プロコミニュケーター
<活動>
講座「更年期は黄金期」
ブログ「幸せな更年期への道のり」
メルマガ「50代女性が自律するためのブログ」
スタンドFMラジオ「幸せな更年期への道のり」