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看護師が解説!フレイル予防②高齢者にフレイル予防が必要なのはなぜ?
加齢に伴う心身の生理的な衰えであるフレイルは、病気と健康の間の状態と言えます。 いくつになっても健康で自分らしく暮らしたいというのは多くの方の願いだと思います…
加齢に伴う心身の虚弱を示すフレイルは、進行すればするほど健康への回復が困難になります。
そのため予防と早期発見・早期対策が重要でした。
フレイルには身体的、精神・心理的、社会的側面の3側面が互いに影響し合っているので、対策も多面的に行う必要があります。
本稿ではフレイル予防について運動の視点からお伝えします。
この記事の目次
1.身体的フレイルに影響を与える要因
フレイルの身体的側面のなかで特に運動器に関わる要因に、サルコペニアとロコモティブシンドローム(ロコモ)があります。
(1)サルコペニア
サルコペニアとは、加齢にともなう骨格筋量の減少と骨格筋力が低下する現象をいいます。
骨格筋は一般的に筋肉と呼ばれ、骨格に沿って分布し身体の活動を支えています。
骨格筋面積は20代から70代までに25~30%減少し、筋量は50歳以降毎年1~2%減少します。
加齢に伴う筋量の変化は部位により異なり、足は早期から低下します。
特に太ももで低下率が大きいことがわかっています。
太ももの筋肉は、主に膝関節を動かします。
筋肉が弱ることで、歩くことに支障が出ます。
筋量低下は男性よりも女性の方が早期から起りますが、低下率は男性の方が早いです。
高齢者では筋量の左右差の影響が大きくなるため、歩行時のバランスが取りにくくなります。
その他サルコペニアになりやすいのは、姿勢保持に必要な抗重力筋と呼ばれる筋肉です。
立ち上がりや歩行にも影響します。
抗重力筋の働きが弱くなると、動きにくくなるため動かなくなります。
動かないので一層筋肉は衰え、ますます動きにくくなるという負の循環から、寝たきりへと向かう可能性が高まります。
(2)ロコモティブシンドローム
ロコモティブシンドローム(ロコモ)は、日本整形外科学会が2007年に提唱した比較的新しい言葉です。
筋力の低下や関節疾患など、さまざまな原因による運動器の障害により、移動機能が低下した状態を表します。
コモ度の3段階
ロコモ度1 | 移動機能低下が始まっている状態。 |
ロコモ度2 | 移動機能の低下が進行し、自立した生活ができなくなるリスクが高くなっている状態。 |
ロコモ度3 | 移動機能の低下が進行し、社会参加に支障をきたしている状態。 |
(3)フレイル、サルコペニア、ロコモティブシンドロームの関係
ロコモが出現したとき、その原因のひとつにサルコペニアがあります。
そしてサルコペニアはフレイルのひとつです。
身体的フレイルはロコモ度3に相当すると言われています。
2.セルフチェック
サルコペニアやロコモについてのセルフチェック方法をご紹介します。
(1)サルコペニア
サルコペニアのセルフチェックは、指輪っかテストやSARC-Fと言われる高齢者のサルコペニアによる身体機能低下や虚弱性のリスクを評価するツールを用います。
①指輪っかテスト
- 自分の親指と人差し指とで輪っかを作ります。
- ふくらはぎの一番太い部分にはめ込んで指で囲めない・囲める、で判断します。
- 隙間ができている場合、サルコペニアの疑いがあります。
- 数値の目安は男性34cm未満、女性33cm未満です。
②SARC-F
現在の生活状況を5つの質問から点数化して評価します。
サルコペニアの人を対象にした運動プログラム
指輪っかテストで隙間がある、SARC-Fが4点以上の人で、筋力低下(握力が男性28kg未満、女性18kg未満)がある、または身体機能低下(5回椅子立ち上がりがりテストが12秒以上)がある人は、サルコペニアの可能性があります。
筋力低下または身体機能低下と骨格筋肉量(レントゲンで測定)が基準値より下回るとサルコペニアと診断されます。
筋力低下、身体機能低下、骨格筋肉量低下が全てそろうと重症サルコペニアです。
(2)ロコモティブシンドローム
ロコモ度テストには3つの内容があります。
①立ち上がりテスト | 高さの異なる4種類の台に座った状態から、両足または片足で立ち上がります。 |
②2ステップテスト | 大股で2歩歩き計算式から数値を算出します。 |
③ロコモ25 | 25の質問から身体の状況と生活の状況を確認するものです。 |
ロコモ度テストはこちら→ロコモ ONLINE
3.フレイル予防のための運動
フレイル予防のための運動は、有酸素運動、レジスタンス運動、体操・ストレッチなどのトレーニングを組み合わせます。
運動強度は、中等度から強度へと徐々にアップさせることが良いと言われています。
(1)有酸素運動
ウォーキング、ジョギング、水泳、自転車など長時間継続しておこなう運動をさします。
- 体脂肪の燃焼や、呼吸循環器系の機能向上により持久力がつきます。
- ウォーキングは、1日20分程度で6000~8000歩を目指すと良いと言われています。
- 少しずつ時間や歩数を伸ばしましょう。
天候の悪い日に最適な、バランスボールを使った運動をご紹介します。
- 空気を60%程度抜いたバランスボールを使います。
- 準備:背もたれのある椅子に姿勢良く座ります。
- 空気を抜いたバランスボールを足元におき、底に両足を乗せます。
- バランスボールの上で足踏みをします。
- 両足を揃えて蹴り出し、元に戻します
①と②は一回5分程度です。
好きな曲をかけてするも良し、TVのコマーシャルの間するのも良しです。
*バランスボールは、運動後所定の場所に置き、つまずかないように注意して下さい。
(2)レジスタンス運動
筋肉に負荷をかける動作を繰り返し行う運動です。
筋肉量が増加することで筋力や持久力が向上し、骨粗鬆症の予防にも効果があります。
転ばない身体づくりに必要な運動で、歩行速度アップにもつながります。
心臓血管疾患の予防や糖尿病にも良いとされています。
運動例
- 立って行う運動:踵あげ、スクワット、開脚片足上げなど
- 椅子に座って行う運動:膝関節の曲げ伸ばし、つま先上げなど
- 寝転んで行う運動:両膝立てでの臀部挙上など
回数は、各運動を8~15回×1~3セット。週2回以上行います。
少しキツいと感じる程度で行うことが重要です。
(3)体操・ストレッチ
体を柔軟に保つことは、怪我の予防や関節痛の軽減、気分転換に有効です。
ラジオ体操をはじめ、TVやインターネットの動画には体操プログラムがありますので活用できます。
関節痛やふらつきがある方は、痛みのない範囲で行いましょう。
ふらつきがある方は座って、安全にできることから取り組みましょう。
継続することで、1ヶ月前には困難だったことが出来るようになるなど、その効果が実感できると思います。
フレイル予防の運動メニューは、インターネットでも多くのサイトで紹介されています。
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運動のお供に、運動チェックシートをどうぞ
4.まとめ
今回は運動面からフレイル予防についてお伝えしてきました。
サルコペニアやロコモは、フレイルとの関係が深い運動器の変化です。
日常生活の中で、「あれ、今までこの横断歩道を渡る時こんなに時間がかかっていたかな?」など、これまでの自分との違いに気づくことがあると思います。
そんな時は、ご紹介したチェックリストを使ってみて下さい。
予防のための運動は、少しきついレベルを続けることが大切です。
「継続は力なり」を信じて、コツコツ取り組んでみましょう。
次回はフレイル予防・栄養編です。
「似て非なるもの!ロコモとフレイルとサルコペニアを理解する」 福ふく?
この記事を書いた人
看護師:青木 容子
〈プロフィール〉
看護師経験30年
(病院勤務通算8年、身体障害者施設3年、訪問看護15年、そのほか新生児訪問指導など)
現在は特別養護老人ホームなどで勤務する傍らCANNUS新長田を運営中。
紙屋克子氏らから、NICD:意識障害・寝たきり(廃用症候群)患者への生活行動回復看護を、黒岩恭子氏からは黒岩メソッドを学び、実践するとともにそれらの普及を目指している。