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看護師がわかりやすく解説! がん①  がんはどうやってできるのでしょう?〜別視点の捉え方〜

がんに対してどのようなイメージを持たれていますか?現代は治療や検査の精度があがってきており、がんに対する認識にも変化が必要です。
ネガティブなイメージがありますが、別の角度からがんをみると、違った視点が見えてきます。

この記事の目次

1. がんって何

がん①  がんはどうやってできるのでしょう?〜別視点の捉え方〜

1)がんの発生

そもそも私たちの体は何でできているでしょうか?およそ60兆個の細胞からできています。
その細胞は絶えず分裂を繰り返し増えています。
その分裂時に、遺伝子(DNA)をコピーしながら増えていますが、その時コピーミスをすることがあります。これを突然変異した細胞と呼び、がん化する細胞となります。
こういった細胞は1日5,000個程できていると言われています。
これらの細胞が全てがん化すれば、私たちは全員がんになりますが、そうではありませんね。

では、なぜ突然変異した細胞はがん化したりしなかったりするのでしょうか?

2)体内の予防システム

コピーミスをした細胞が、がん化しないのは、私たちの中にもともと備わっている免疫システムが働いているからです。
それは免疫細胞と呼ばれる数種類のリンパ球からできています。
これらが働いて私たちの細胞はがん化せずに死滅しています。
がん化をする時というのは、この免疫システムが弱くなった時と考えられています。

3)がんの原因

免疫システムが弱くなる要因には何があるでしょう?それは、喫煙感染食事運動不足ストレスと言われています。
これら生活習慣の改善を行うことで、予防ができます。

喫煙はがん化の要因として高く、男性29.7%、女性5%という研究結果が出ています。
喫煙以外にがん化する大きな要因に感染があります。これはウイルスや菌です。

≪代表的ウイルスや菌≫

  • 肝がんの原因である肝炎ウイルス・子宮頸がんの原因であるヒトパピローマウイルス
  • 胃がんの原因であるヘリコバクター・ピロリ菌などです。


感染に対してはワクチンや除菌で予防が行えます。
ついで予防できる生活習慣として運動不足や食事(塩分過多や飲酒、野菜不足など)があります。これらは約10%を占めます。
ストレスに関しては、がんの要因になるという明らかな研究結果は出ていません。
化学的には明らかにはなっていませんが、ストレスから喫煙量や飲酒量の増加、食生活の乱れは十分に考えられます。

このようにがんの要因は解明されてきており、予防できる病気へと変化していっています。

2. がんに対する情報

がん①  がんはどうやってできるのでしょう?〜別視点の捉え方〜

1)がんに対するイメージ

 がんに対するイメージをどうお持ちでしょうか?
内閣府が世論調査を行ったところ、「こわいと思う」と回答する割合が74.4%となっています。


がんに対する印象も調査結果

・がんが死に至る場合があるから
・がんそのものや治療により、痛みなどの症状がでる場合があるから
・がんの治療費が高額になることがあるから
・子宮頸がんのように若い世代で増えているがんもある
・日本では死亡者の約3人に1人が,がんで死亡している


がんにたいしては新薬の開発や検査・治療の精度があがってきていますが、ネガティブなイメージが強い病気ということが、このアンケート調査からわかります。

2)がんと情報社会

今や情報化社会、テレビやインターネット、本などで情報をいくらでも見ることができます。
このコロナ禍で更にインターネット・SNSの利用は増加しています。

総務省が「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」を行っています。
令和3年度で平日にテレビやインターネットに触れている時間は平均3〜4時間となります。

現在の1日の情報量は江戸時代の1年分とも言われています。

しかしフェイスクニュースが横行しているのも事実です。
SNSで一般的ながんの情報には3割の誤情報が含まれているとユタ大学ハンマンツがん研究所の医師が報告しています。

3)情報を正しくとる3つのポイント

正しく情報をとるためのにはどうすればいいでしょうか?

≪3つのポイント≫

  1. 情報の出どころを確認する
    誰が記事やSNSで発信しているのかを確認しましょう。
    信頼できるところでは、国立がん研究センターが運営しているがん情報サービス、がん学会・日本臨床腫瘍学会などのがん関連学会、がん拠点病院のホームページ、厚生労働省・各自治体のホームページが挙げられます。
     
  2. 情報を多角的に捉える
    いつの情報なのか?偏った情報になっていないか?必ず治るなどの文言がはいっていないか?などです。
    テレビなどは正しい情報というより当事者に親身な番組構成となり異なる方向性の話になることもあります。
    この事は視聴者にとっても偏った知識になることもあります。
     
  3. 複数の情報を見比べる
    複数の意見や考えを読む必要があります。同じような本でも数冊読んでみることをおすすめします。1つのデータに対し、別視点での解釈や考え方をしていることがあります。
     

情報の出どころを確認し、多角的にさまざまな情報をとり、ご自身が納得する情報を得られることが大切かと思います。

3. がんになる方が「2人に1人」という言葉の捉え方

がん①  がんはどうやってできるのでしょう?〜別視点の捉え方〜

1)日本の現状

現在の日本は3人に1人はがんで亡くなられ、2人に1人はがん罹患されています。
国立がん研究センターによると、生涯でがんと診断される確率は男性62%、女性46%とデータがでています。

2019年のデータでは、新たにがんと診断された方は約100万人おられます。
このように聞かれると不安に感じる方がおられるのではないでしょうか?

2)年齢別・がん罹患率の捉え方

このデータは全年齢の平均データであり、年齢別に見ると、違った捉え方ができます。
年齢別で見れば、例えば現在40歳代男性の方が10年後にがんに罹患する確率は1.6%、女性は4.2%です。

女性がやや高いのは、男女別で見れば全年齢では男性ががん罹患率は高いのですが、年齢によっては女性特有のがんリスクがあります。

60歳代までの働きざかり世代のがん罹患する方は10%未満、10人に1人以下となっています。
2人に1人ががん罹患する年齢は男女とも80歳代以降という統計がでています。

3)「私、がん家系だから」の意味

がんは増えているという印象があり、そこから、がん家系を心配される方も見られます。
「うちはがん家系だから」時々耳にする言葉です。電車やお店の中でも、「親ががんだから私も心配で」という会話を聞きます。私も母ががんで亡くなっているので、やや過剰に心配している時期がありました。

しかし調べてみると、遺伝的要因は5〜10%程度です。

さらに上記にあげたように、2人に1人ががんになる時代ですので、家系にがんの方が1人、2人おられてもおかしくないと考えられます。

4)生存率の変化

2人に1人ががんになるという、身近なご病気となっているからこそ、新薬の開発や副作用の少ない薬、検査の精度上昇などがあります。

がん治療の1つの指標として、5年生存率というものが使われます。

診断されてから5年間の生存されている方の割合の統計です。
この数字は年々伸びてきています。
最新の2022年のデータでは、男女計で69.0%でした。


およそ7割の方が生存されているということがわかります。

4. まとめ

この記事では、がんに対するネガティブなイメージを少しでも払拭して頂きたく、がんを別視点で捉えています。
最初に、がんの発生機序から要因を知り、予防できる病気になってきていることをお伝えしました。

そして、この情報化社会だからこそ、フェイクニュースに惑わされることなく、正しい情報をとるための3つのポイントをお伝えしました。

最後に、2人に1人ががんになる、という言葉を別方向から捉え、多角的に情報を見ることの重要性・遺伝的要因の割合・生存率の変化をお伝えしました。現代は医療が進み、予後は伸びています。

つまり、がんは付き合っていく病気へと変化しています。

それに伴い必要な情報・心構え・社会のサポートシステムなどを今後もお伝えしていきます。


この記事を書いた人

山川さちえ 看護師経験 15 年(訪問看護2年、管理者1年) がんで余命半年の親を看取った看護師の経験/ウェルネス講座(2023 年) 誰でもわかる/退院前から介護利用までの 50 のチェックリスト作成

山川さちえ
<プロフィール>
病棟勤務14年。手術や抗がん剤治療など癌治療を受けられる多くの癌患者様に関わる。ICU配属中に、実母が肺癌ステージ4と告知を受ける。在宅での療養生活を見越し、訪問看護へ転職。同時期に事業所管理者となり、母の療養生活を支える。訪問看護でも、自宅療養の癌患者様に多く関わる。ダブルワークで働く中、母の在宅看取りを経験。自身の経験から癌患者様、介護中のご家族様が安心できる療養生活を過ごせるよう、介護空間コーディネーターとして、複数メディアで記事執筆、講座を行う。
<経歴>
看護師経験16年(消化器・乳腺外科、呼吸器・循環器内科・ICU/訪問看護・管理者)
自費訪問 ひかりハートケア登録ナース
(一社)日本ナースオーブ ウェルネスナース
<執筆・講座>
株式会社キタイエ様
「暮らしの中の安心サポーター“ナース家政婦さん”」
「ほっよかった。受診付き添いに安心を提供。”受診のともちゃん”」他
「がんで余命半年の親を看取った看護師の経験/ウェルネス講座」
「退院前から介護利用までの50のチェックリスト/note」

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