入院に対する不安というと「病状」と「お金」の2つが多いと言われます。
病状については、医師の診断に基づいて最適な治療法と自分の努力によって乗り越えるものですが、入院の経験がない方ほど、お金に対する不安は大きいかもしれません。
いつ、どれくらいの費用がかかるのか、それらの費用のうち、どこまで医療保険でまかなうことができるのかを確認していきましょう。
この記事の目次
いつお金が必要?病院にお金を支払うタイミング
病院にお金を支払うのは、「入院時」「毎月の精算日」「退院時」の3回です。
多くの病院では入院時に保証金として5~10万円がかかります。
これは万一のトラブルに備えてのもので、一般的に退院時に支払う医療費と相殺で精算されます。
入院中の医療費は、月単位で清算され月末締め翌月10日頃、もしくは月2回にわけて請求書が入院中のベッドに届きます。
支払い方法は、現金の他、振込やデビットカード、クレジットカードに対応しているケースもあるので、入院時に確認してみましょう。
請求される金額は「診察費」「検査費」「手術費」などの医療費と、「差額ベッド代」などの医療費以外の費用を合わせたものです。
この他に、病衣(パジャマ)やタオル、紙オムツなどをレンタルしている場合、病院の請求書に含まれるかレンタル業者から直接、請求書が届きます。
入院時に準備するお金の目安は5~10万円
医療費の自己負担には上限がある
では、翌月の清算日にはいくら準備しておけば良いのでしょうか。
病気や怪我の治療で頼りになるのは「健康保険証」です。
健康保険証を示せば最大でも自己負担は3割です(公的医療保険対象の治療)。
ただ入院となると3割負担でも数十万~100万円を超えるケースもあります。
実は、医療費については手続きをしていれば、個人が負担する金額には上限があります。
それが「高額療養費制度」です。
高額療養費制度とは、ひと月の医療費が高額になった場合、定められた上限額を超えた分を払い戻してもらえる制度です。
上限の金額は年齢と収入で決まりますが70歳未満では約8万円に該当する方が最も多くいらっしゃいます。
医療費以外の食費や消耗品代、レンタル代などの諸経費は月に2~4万円ぐらいが相場です。
病院からの請求は“高額療養費の自己負担額8万円+諸経費2~4万円”。
これが、入院中に毎月支払うお金の目安となります。
毎月の清算日に必要なお金の目安は10~12万円
公的医療保険でカバーされない範囲(全額自己負担の範囲)
食事療法に関しては、治療の一環として医療保険でまかなわれる部分と自己負担部分があります。
また先進医療と自ら希望して個室に入った場合の差額ベッド代は範囲外です。
個室といっても1人部屋のみでなく、4人以下で必要な広さを備えた特別室であれば差額ベッド代が発生します。
費用も2,000円から特別室になると20,000円かかることもあり、平成29年厚生労働省の『主な選定療養に係る報告状況』によると、差額ベッド代の平均額は、1日あたり6,144円となっています。
この他、必要に応じて病衣やタオル、紙オムツなどのレンタル費用や、テレビや本などの娯楽費、診断書や入院証明書などの文書費用もかかります。
家族が病院に向かう交通費なども距離や日数によってはかなりの支出になることもあります。
診療費・治療費や医薬品の購入費のほか、通院や入院のための交通費、電車やバスの移動が困難な場合のタクシー代は確定申告で医療費控除を申請することができます。
医療費控除を申告するには、かかった医療費や交通費の領収書、レシートをまとめて記入した医療費の明細書を作る必要があります。ただ、公共交通機関を使った場合の交通費は領収書がとれません。
通院履歴と交通費が照合できるようメモなどに記録しておくと明細書を作成する際に慌てることがありません。
差額ベッド代の目安は半月で9万円、ひと月に19万になることも!
1回の入院での平均的な入院費用はいくら?
すでにお話したように、入院時にかかる費用にはいろいろなものがあり、「だいたいこれくらい」という金額を提示することは難しいです。
公益財団法人生命保険文化センターでは、定期的に1回の入院にかかる自己負担費用額の平均を公表しています。
令和元年度の結果が20.8万円、平成28年度は22.1万円です。治療方法や入院日数で変わってきますが1回の入院の目安として参考にしてください。
1回の入院で必要なお金の目安は20~22万円
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お孫さんに学費を贈与したい、家族が急に逝去されて何から手を付けていいかわからない、認知症になっても子どもに負担がいかないように準備したい…など、多岐にわたるご相談を承っております。
この記事を書いた人
渋澤和世(しぶさわ・かずよ)
「在宅介護エキスパート協会」代表。川崎市の介護相談員、生命保険・鉄道・金融機関等大手企業における認知症の在宅介護講座の講師もつとめる。
NEC関連会社でフルタイム勤務をしながら、10年以上に渡り遠距離・在宅介護を担う。親の介護をきっかけに社会福祉士、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーなどの資格を取得。2人の子どもに恵まれるも、両親が同時期に脳血管障害、認知症、骨折、肺炎で入院を繰り返す。長年にわたり仕事・子育て・介護の「トリプルワーク」を経験。
新聞やウェブビジネスニュース等メディアでの執筆も多数。アイディア発想講師としての知識を生かし、「完璧な介護」ならぬ「自滅せず親も家族も幸せになる介護」へと発想の視点を変え、現代人のための介護思考法を独自に研究。介護する者、支援する者、専門家としての3つの顔と行政、企業、家庭の3つの軸から介護問題を解決する唯一無二の存在。座右の銘は「なんとかなるさ」。
著書「親が倒れたら、まず読む本」(プレジデント社)は家族の入院・介護に取り掛かる方のバイブルとなっている。