ダブルケアという言葉を耳にしたことはありますか?
じつは意外にも私たちにとって身近な問題です。
現在、少子高齢化・晩婚化・晩産化の影響でダブルケアになる人が増加するかもしれないと言われています。
この記事では、まず ダブルケアとは? についてお伝えしていきます。
この記事の目次
ダブルケアとは?
ダブルケアという言葉
ダブルケアとは2012年に横浜国立大学の相馬直子教授とブリストル大学の山下順子上級講師によって創られた言葉です。
ダブルケアには2つの意味がある
ダブルケアには狭義と広義の2つの意味があります。
狭義の意味は介護と子育てのケアが同時進行する状態を指します。
広義の意味は家族や親族、そのほかの親密な関係における複数のケア関係や、自分自身へのケアなどを含む複合的ケアのことを指します。
ダブルケアは介護と子育てのみではない
ダブルケアの調査当初、介護と子育てに焦点が当てられていました。
しかしダブルケアという概念が広まるにつれて、ダブルケアとは介護と子育てのみではないということが分かってきました。
- 父親と母親の同時介護
- 母親の介護をしていたら配偶者が病気になる
- 知的障がいの兄をサポートしながら子育てをしている
- 高齢の叔母が病気になり、叔父のこともサポートしながら介護を手伝う
- 子育て中に自分自身が病気になる
- 母親の介護中に妊娠が分かる
- 祖母の介護をしていた母親が倒れてしまい、祖母と母親の介護をすることになる
以上はほんの一例です。
もしかしたら身近な人がダブルケアをしているかもしれないと思われた方もいらっしゃるかもしれませんね。
ダブルケアは介護と子育てだけではないかもしれない。
そう考えるとダブルケアはより身近な問題となってくるのではないでしょうか。
ダブルケアラーの実態
2016年の内閣府の調査報告によると以下のことが分かっています。
- ・全国でダブルケアをしている人は約25.3万人
-
内訳は女性が約16.8万人、男性が8.5万人
- ・ダブルケアをしている割合が高い年齢は40~44歳
- ・ダブルケアをしている人の約8割が30~40歳代
- ・女性の約半数、男性の約3割が介護と子育ての2つを担っている
ダブルケアの負担は30~40代の女性に集中していることが分かります。
ダブルケアが増えている3つの原因
晩婚化と晩産化
結婚年齢が上がり、それに伴い出産年齢も高くなってきています。
1975年の女性の初婚年齢は24.7歳で、第1子を産む年齢は25.7歳でした。それが2019年になると女性の初婚年齢は29.6歳になり、第1子を産む年齢は30.7歳となっています。
以前は子育てが一段落してから介護という順番で子育てと介護の時期がずれていました。
出産の時期が遅くなっていることにより、子育てと介護の時期が重なるようになってきています。
高齢化
2025年問題をご存知でしょうか?
2025年は団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になると言われている年です。
2040年には5人に1人が75歳以上になると言われています。
今後、介護が必要になっていく方は増加していきます。
少子化
子どもの数が減れば兄弟姉妹の数も減ります。
大家族から核家族へと変化していきます。
家族の人数が多ければ介護・子育ての負担をある程度、分散することが出来ます。
兄弟の数が減り、家族の人数が減ることで介護・子育ての負担が1人に集中しやすくなります。
ダブルケアで生じる5つの問題
介護と子育て支援は別々で発展しているため、相談窓口が分かりにくい
・どこに相談したらいか分からない
・子どもと介護のことで役所の窓口が違うから大変
・介護と子どもについてのプロはいるけど、ダブルケアの話になると相談出来る相手がいない
というようなお悩みを話される方が多いです。
子育てや介護について、相談出来る場所を3つ紹介します。
①地域包括支援センター
市区町村が設置している高齢者の介護、医療、福祉など総合的なことを相談出来る窓口です。
2022年4月時点で支所を含め、全国で7,409か所設置されています。
「高齢の親が1人暮らしをしていて不安がある」というような相談でも大丈夫です。
地域包括支援センターはケアマネージャー、保健師、社会福祉士など介護や医療の専門家が在籍しています。
必要であれば関係機関と情報共有をして、必要なケアにつなげてくれます。
②保健センター
地域住民の健康のために保健サービスを提供してくれる施設です。
サービスの種類は乳幼児健診、新生児訪問、保健相談、成人病検診などがあります。
保健センターには保健師、助産師、管理栄養士などが在籍しています。
子どものことから大人、高齢者のことまで幅広く対応してくれます。
また必要時は地域包括支援センターなどと連携・協力しながら対応してくれることもあります。
市区町村に設置されていますが、自治体によっては保健所が機能を兼ねていたり、名称が異なっていたりすることがあるため利用する際は注意が必要です。
③男女共同参画センター
老若男女問わず、その人がその人らしく自分の力を発揮することの出来る社会を作るために都道府県、市町村等が自主的に設置している総合施設です。
施設によって提供されているサービスは様々です。
仕事やキャリアの相談から、子育ての相談、心に関する相談などの相談をすることが出来る施設もあれば、ダブルケアなど様々な講座を開催している施設もあります。
サポートグループの情報もあるため、同じ境遇の仲間を見つけることが出来るかもしれません。
優先順位をつける難しさ
ダブルケアの難しさの1つに「ケアが同時進行している」ということがあります。
例えば、朝に寝たきりの祖母のオムツ替え、子どもにご飯を用意して学校へ送りだしをしなければならないという場面で、もし皆さまだったらどちらを優先して行いますか?
ダブルケアをしていると、自分の身体は1つにも関わらず同じ時間に違うケアをしなければならないということが発生します。
このような「どちらを優先してやるか」という選択をする必要があります。
介護と子育てと仕事の両立
ダブルケアをしている人は30~40歳代が多く、仕事も働き盛りで子育ても行っている世代です。
仕事をしながら子育てと介護のケアを行うことは身体的・精神的にも厳しいため、仕事を辞めるという選択肢を選ぶ方もいます。
仕事を続けながらダブルケアをしていくのか、ダブルケアに専念するため仕事を辞めるのか。
どちらを選んでも葛藤される方が多いです。
経済的な負担
介護にも子育てにもお金はかかります。
介護費用を年金や貯金で賄えなかった場合、経済的援助が必要になることもあります。
さらに子どもは成長すればするほど教育費や養育費がかかってきます。
またダブルケアに専念するために仕事を辞めることを選択した場合、収入は減っているためさらに経済的に苦しく感じやすくなります。
ダブルケアラーの疲弊
①身体的な疲弊
介護と子育てが重なると毎日が分刻みのスケジュールになっていきます。
状況によっては睡眠も十分にとれないこともあり、疲労は身体に蓄積されていきます。
実際にダブルケア経験者の方でほぼ毎日徹夜状態が続いくことがあり「その時は体がもう1つ欲しかった!」と話される方もいました。
②精神的な疲弊
介護や子育てをしている時、イライラしたり落ち込んだりすることもあるかと思います。
それに加えて主介護者として重要なことを決めなければならないというプレッシャーがあったり、相談出来る人がいなくて孤立してしまったりすると精神的に疲弊しやすくなります。
③社会的規範
・介護は家族がした方がいい
・介護は嫁がした方が良い
・長男・長女だから介護は自分がした方が良い
・子どもが小さいうちは母親が面倒をみた方がいい
日本には以上のような社会的規範がみられる時があります。
そういった社会的規範が強いと介護や子育てを家族や専門家に分散させることが出来ず、誰か1人に負担が集中することがあります。
多くの場合、30~40代女性に負担が集中しやすくなります。
まとめ
この記事ではダブルケアとは?からダブルケアで生じる問題点をお伝えしました。
ダブルケアは介護と子育てのケアが同時進行する状態と家族内や親しい間柄の中で複数のケアが存在している状態のことです。
少子高齢化・晩婚化・晩産化の影響でダブルケアになる人は今後増えていくと言われています。
ダブルケアになった時、ダブルケアという言葉を知らないと誰に相談すればいいのか分からず途方に暮れてしまいます。
まず知っていくことが大切です。
次回の記事からは介護や子育てのダブルケアに焦点を当て、詳しくお伝えしていきます。
次の記事は【介護に行き詰るとき】です。
[参考]内閣府 | 男女共同参画局 育児と介護のダブルケアの実態に関する調査報告書
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この記事を書いた人
山本みどり
【プロフィール】
看護師経験。大学病院のNICU(新生児集中治療室)で勤務後、精神科、訪問看護を経験。
現在は小児発達ケア専門訪問看護ステーションで発達障がいと診断された子どもやそのご家族へ小児発達ケアを行っている。発達ケアを通して、子どもとご家族が安心して過ごせるように支援をしている。
食から身体のことを整えたいと思い、プライベートでは中医学・薬膳を学んでいる。
【経歴】
看護師/Webライター
看護師歴6年 NICU、精神科、訪問看護(成人・精神特化・小児発達ケア)
家政婦やベビーシッターとしても働いている