目次
2024年4月、キクミミサイトはリニューアルしました

看護師監修 介護側の食事指導①介護者が知っておくといい食事管理について

生きていくために、必要な習慣のひとつに食事があげられます。

食事は、生命を維持するだけでなく、健康な体づくりや、生活のリズムを整える、家族や親しい人とのコミュニケーションの役割を担っています。

高齢者にとっての食事は、加齢により身体機能が低下しているため重要です。

この記事では、高齢者の食事についてお伝えしていきます。

介護側の食事指導①介護者が知っておくといい食事管理について
この記事の目次

1,高齢者の健康は食事管理から

高齢になると、身体の機能が低下し食べる量が減ってきます。
食べる量が減ると、身体機能の低下を加速させるほか、認知面やメンタルにも大きな影響を与えます。

同時に、身体を支える筋肉の量も減るので、動くことがつらくなります。
次第に生活する範囲が狭くなり、必要とする摂取エネルギーも少なくなります。

この繰り返しで体力や持久力が落ちて、寝たきりになってしまう場合も少なくはありません。

また、味覚が低下することで、食事への関心や楽しみが薄れてくる場合があります。

お茶漬けやパンやお惣菜といった、簡単に済ませられる食べ物になってしまうことも多くなり、栄養が偏る原因しなります。

さらに、消化・吸収するための機能も加齢により低下するので、せっかく摂った栄養をエネルギーとして蓄える量が少なくなります。

消化吸収するのも、エネルギーが必要です。
少ないエネルギー量で体力を維持するためには、栄養バランスのとれた食事をすることが高齢者にとっては必要です。

加齢とともに変化してくる食事の問題に、どう取り組んだらいいのかを考えてみたいと思います。

介護側の食事指導①介護者が知っておくといい食事管理について

2,食事の役割

食事のもつ主な役割は、以下の通りです。

生命活動を続けるため

食事の役割でまず挙げられるのは、「生命活動を続けるため」です。

わたしたちの体は、60兆個の細胞でつくられています。
細胞のひとつひとつが集まって、内臓や筋肉や骨となって体を動かしたり、生命を維持するために心臓を動かしたり、呼吸をしたりしています。
その生命活動の、エネルギーのもととなるのが栄養です。

エネルギーが作られなければ、わたしたちは活動することができなくなります。

日々の楽しみであること

食事は、大切な役割をもうひとつ持っていることをご存じでしょうか。
これは生命活動の維持以上に大切なことです。

その、大切な役割というのは「日々の楽しみであること」です。

どんなに忙しくても、24時間のなかで必ず食事の時間を確保しています。
そして、食事の時間がくることを心待ちにしています。

理由は、ただ単に栄養補給として食事をするだけではなく、ほっとする時間でもあり、家族や親しい人との会話を楽しみにしている時間だからです。

動いた後に栄養補給を兼ねて、ほっと一息できる食事の時間は1日の中で最も満たされる幸せな時間です。

生活のリズムを整えること

わたしたちのからだには、「体内時計」と呼ばれる機能が備わっているのをご存じでしょうか。
睡眠や体温や血圧のコントロールや、ホルモンバランスの調整をしています。

体内時計の周期は25時間に対し、地球の1日の時間は24時間です。
わたしたちの体内と、地球とでは1時間の時間差があります。
この時間差を、修正する1つの方法として食事があります。

食事を摂ることで、刺激を脳に送り、体内と地球との時間差を調整する役割を持っています。

調整することで地球の24時間周期に合わせて生活することができています。

特に、高齢者は身体機能の低下により体内時計が乱れがちです。
高齢者の体内時計は短くなっていることが多く朝、早く目が覚めるのが特徴です。
朝、早く起きることはいいことですが、早すぎると体内時計が更に前にずれるため、定期的にリセットをする必要があります。

体内時計を調整するためにも、食事は欠かすことができない習慣です。

介護側の食事指導①介護者が知っておくといい食事管理について

3,栄養素の働きについて

次に、身体にとって大切な栄養素の働きについてお伝えします。

栄養素とは、食べ物の中に含まれる栄養の素を指します。
この栄養素が、身体のなかで消化吸収されて、日々の活動に必要なエネルギーになっています。

さて、ひとつひとつの栄養素にどんな働きがあるでしょう。
栄養素の種類と働きを知ると日々の献立に活用することができます。

(1)カラダをつくる
(2)エネルギー(力や熱)になる
(3)身体の調子を整える

この3つの項目にそって、説明していきたいと思います。

介護側の食事指導①介護者が知っておくといい食事管理について

(1)カラダをつくる栄養素【タンパク質】

カラダは、動くための筋肉・骨・内臓・皮膚・爪と、栄養素や酸素を届けるための血管で構成されています。

動くために必要な栄養素を、タンパク質といいます。

また、病気からカラダを守る免疫抗体も、タンパク質からつくられています。

タンパク質は体内に取り込まれると、消化吸収されて、アミノ酸に分解されます。

吸収されたアミノ酸は、血液によって全身の細胞へ届けられて活動に必要なエネルギーとなります。

アミノ酸は全部で20種類あり、そのうちの9種類は体内で合成できない必須アミノ酸と呼ばれ、食事から補う必要があります。

タンパク質を多く含む食材
肉類・卵・乳製品(ヨーグルト・牛乳など)

タンパク質を多く含む食材 肉類・卵・乳製品(ヨーグルト・牛乳など)

(2)エネルギーになる栄養素【脂質・糖質】

脂質の働きは簡単にいうと身体を保護する役割があります。

例えば、身体は細胞の集まりですが、細胞のひとつひとつを分けるために膜があります。
その膜を保護しているのが脂質です。

ほかにも、

・ホルモンをつくる成分になる
・体温を維持する
・内臓の保護する
・皮膚を保護する

などの、外敵から身を守るバリア機能の役割を担っています。

また、脂質のエネルギー量は一番高く、タンパク質と糖質は1g4Kcalに対し、脂質は1g9Kcalあり、効率よくエネルギーを摂ることができます。

ダイエットでは悪者にされがちな脂質ですが、、消化機能が低下し食が細くなった高齢者にとっては、少量摂るだけでもエネルギーに変えることができます。

糖質は炭水化物のことで、カラダを動かすエネルギー源です。

特に、糖分は脳の主なエネルギーになります。

最近では、糖質制限の健康志向が高まっていますが、制限しすぎると判断力の低下や、怒りっぽくなるといった問題もあるため適度に摂ることが必要です。

脂質を多く含む食材
植物油(オリーブオイル・ごま油・えごま油)・肉類魚類(マグロ・サンマ・サバ・カツオなど)・乳製品など

脂質を多く含む食材 植物油(オリーブオイル・ごま油・えごま油)・肉類
魚類(マグロ・サンマ・サバ・カツオなど)・乳製品など

糖質を多く含む食材
お米・パン・麺・イモ類・砂糖・はちみつ・果物

糖質を多く含む食材:お米・パン・麺・イモ類・砂糖・はちみつ・果物

(3)カラダの調子を整える栄養素【ビタミン・ミネラル】

ビタミン・ミネラルは、エネルギーにはなりません。

役割は、タンパク質・脂質・糖質の分解と合成を助ける働きがあり、健康管理には欠かせない栄養素です。
ビタミンは、体内でつくられることができないため、不足すると欠乏症を引き起こすことがあります。
栄養管理が行き届くようになった現在は、ほとんど見られなくなりましたが、以前は次のような欠乏症がありました。

壊血病:血管が弱くなって、出血が起こりやすくなる。ビタミンCの欠乏で起こる。

脚気:神経が障害されて、手足のしびれや身体のだるさが続く。ビタミンB1の欠乏で起こる。

貧血・末梢神経障害:貧血によるふらつきや神経障害によるしびれが起こる。ビタミンB12の不足で起こる。菜食主義者や胃を全部摘出したあとに起こる。

また、摂りすぎると、めまいや頭痛・吐き気や食欲がないなどの過剰症になるため、注意が必要です。

ミネラルは、カリウム・カルシウム・リンが代表的な栄養素です。
身体の臓器や、細胞の活動をサポートしています。

ビタミンと同じく、体内ではつくられないため、食べ物でとる必要があります。

ビタミンを多く含む食材
肉類・魚介類・野菜・藻類・豆類

ビタミンを多く含む食材 肉類・魚介類・野菜・藻類・豆類

ミネラルを多く含む食材
ひじき・ナッツ類・味噌・果物 

ミネラルを多く含む食材 ひじき・ナッツ類・味噌・果物 

3,食事とコミュニケーション

ひと昔に、飲みにケーションという言葉が流行ったのを覚えているでしょうか。
お酒を飲みながらコミュニケーションをはかり、親睦を深めることです。

お酒の席と同じく、食事とコミュニケーションも深いつながりがあります。

食べながら話すということは、刺激が脳に伝わり、認知機能の低下を防ぎます。
食べるときに会話を通して、知性や社会性が身に付きます。
それは子供だけでなく、大人や高齢者も同じことが言えます。

だれかと食事を共にすることは、同じ食事を共有し同じ時間を過ごすことです。

食べながら会話をして「美味しい・楽しい」と感じて、こころもからだも満たされることは、生きる活力につながっていきます。

近年、ライフスタイルの変化で、一緒に住んでいても食事を一緒に食べることが難しい場合や、核家族化が進み、1人で食事を食べる高齢者も増えています。

毎日、食事を一緒に食べることはできなくても、週1回・月1回は一緒に食べる機会を作ることで食べる量や食事の好みや食べ方の変化のほか、表情や話し方の変化など、健康状態に気づくこともできます。

介護側の食事指導①介護者が知っておくといい食事管理について

4,まとめ

毎日食べている食事は、高齢者にとって生活を支えてくれる習慣です。
栄養バランスのとれた食事と、ご家族と顔を合わせて食卓を囲む時間は、高齢者にとって楽しみであり大切な時間です。

食べればいいだけでなく、人とのコミュニケーションが健康をつくります。

おいしい食事を食べながらご家族とたくさん、お話をしてくださいね。


この記事を書いた人

看護師:渡邉加代子

渡邉 加代子

【プロフィール】

看護師歴24年目。
これまで急性期(整形外科・外科・脳外科・内科・循環器)病棟での勤務を経験。
2016年に現在の職場に転職し、回復期リハビリテーション病棟は配属となる。
2019年から栄養サポートチームに所属し、各専門職と協力して週1回、入院患者様の栄養ケアを行っている。
今後は、退院先での適切な栄養ケアが継続できるようにパンフレットの作成や地域高齢者を抱えるご家族への栄養相談や講座の開催を考えている。

【所属】

一般社団法人 日本ナースオーブ所属 ウェルネスナース

【執筆】

食と健康について考えるブログ/note

【講座】

Wellnessチャートで賢くやせる/ウェルネス講座

よろしければシェアをお願いします
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
この記事の目次