認知症・脳卒中・高齢による衰弱・骨折(転倒)について
この記事の目次
介護が必要な人が20年で3倍になる!?
介護の原因を知って予防につなげよう!
2000年に介護保険制度がスタートして23年が経ちました。
厚生労働省の報告によると、超高齢社会の日本において、要介護認定者の割合は80~84歳では26.4%、85歳以上は59.8%といわれています。
みなさんは自身の両親の介護や自分自身に介護が必要になった場合など将来への備えはできていますか?
介護が必要になる原因には様々なものがあります。代表的なものとして認知症が18.7%と最も多く、次いで脳血管疾患(脳卒中)が15.1%、高齢による衰弱が13.8%、骨折(転倒)が12.5%となっています。
このコラムでは、介護が必要になるそれぞれの原因について分かりやすく説明します。
介護になる原因その1:認知症
認知症は様々な脳の病気が原因となり、認知機能(脳の全般的な機能)の障害によって生じる状態です。
日本国内での認知症の人の数は増え続けていて、平成24年度で軽度認知障害(MCI)の人も加えると4人に1人の割合となります(※MCIの方がすべて認知症になるわけではありません)。
これだけ高い割合で認知症が発生することがわかっていますので、家族や自分自身に認知症にかかる可能性は低くはありません。
認知症と一言で言っても、原因や症状、重症度は様々ですので、少しずつ認知症に関する理解を深めていくと良いでしょう。
認知症の症状には、記憶力低下・言語障害(言葉がでない、文字が読めないなど)・判断力低下などがあります。
初期段階はいずれも軽度ですが、時間の経過とともに悪化していくことが多いです。
なぜ認知症になると、介護が必要になるのでしょうか?
その代表的な原因を3つご紹介します。
日常生活が困難になる
認知症の良く知られている症状として、「記憶力や判断力の低下によって、人の名前や日付が分からなくなる」があります。
この他にも、「入浴していないことに気付かずに何日も過ごしてしまう」、「食事をしたことを忘れてお腹が空いたと何度も周囲に伝える」、「薬を飲まなければならないのに忘れてしまう」などの生活への影響を生じることがあります。
危険な行動をとる
記憶力や判断力の低下によって周囲の状況を十分に理解できず、危険な行動をとることがあります。
例えば、「食べてはいけないものを食べようとしてしまう」ことがあり、ビニール袋や洗剤といった命に直結する物を口に入れてしまう場合があります。
他には、「火の元に近づいて触れようとする」、「外出中に迷子になる」といったこともあり、介護者が目を離せないことが少なくありません。
コミュニケーションが困難になる
言葉の理解や表現能力が低下すると、コミュニケーションが困難になります。
これにより、先述したような記憶力の低下や危険な行動を改善するよう伝えても伝わりきらず、生活に介護を要する状態となります。
介護になる原因その2:脳血管疾患(脳卒中)
脳卒中は、脳内の血管が詰まることや破裂することで脳に障害が生じる病気です。
その症状には、麻痺(手足が思うように動かない)・言語障害・高次脳機能障害(記憶力が低下する、注意力が散漫になる、感情がコントロールできないなど)などがあります。
いずれの症状があっても病気になる前と同じ生活をすることは難しくなってしまい、介護が必要になります。
脳卒中が介護に繋がる理由には、以下のようなものが挙げられます。
日常生活が一人では行えなくなる
「麻痺によって腕に衣服を通すことができない」、「麻痺によって歩くことが難しい」、「通常の食事ではなく、加工されたとろとろの食事でないと呑み込めない」といったことが生じます。これまで一人で出来ていたことがゆっくりしか行えなくなる、もしくは誰かの手助けがなければ難しくなり、介護を必要とした生活となります。
転倒や事故の危険がある
麻痺によって体が思うように動かずに転倒したり、高次脳機能障害(思考・記憶・行為・言語・注意などの脳機能の一部に障害が起きた状態)によって危険な行動をとってしまうことがあります。また、麻痺によって体に無理が生じて腰痛などの痛みに繋がることもあります。
コミュニケーションをとることが難しくなる
言語障害や高次脳機能障害が起こってしまうと普段何気なく行っているコミュニケーションをとることが難しくなります。家族や友人といった身近な人間関係だけでなく、買い物でレジでのやりとりが難しくなるなど生活全般への影響がみられることから、「体は元気なのに介護が必要になる」という場合があります。
介護になる原因その3:高齢による衰弱
私たちは加齢によって様々な身体機能の変化が起こります。
その変化の内容は様々で、筋力低下や骨の変形といった身体機能に関連するものや認知症を含む精神機能に関連したものなどがあります。
このように、加齢による身体機能の変化が原因となり介護に繋がる理由には、以下のようなものが挙げられます。
筋力の低下
加齢に伴って徐々に筋肉は減少しますが、65歳以上の高齢者の15%が筋力低下を生じているというデータがあります(これをサルコペニアと呼びます)。
これによって歩く、立つ、階段を昇り降りするといった動作が難しくなり、介護を必要とする状態に至ります。
慢性疾患の増加
加齢に伴って慢性疾患(糖尿病や高血圧などの治療期間が長期にわたって必要な疾患)を発症するリスクが高まります。
この慢性疾患が原因となり、治療のために運動が制限されたり、安静にしている時間が増えることで日常の運動量が減少するなどして筋力の低下が引き起こされることがあります。
社会的な孤立
「配偶者と死別する」、「子どもや孫が遠くに住んでいる」、「友人や知人と会えなくなる」などが原因となり一人で過ごす時間が増加するケースがみられます。
これを社会的な孤立と呼び、出かけることが少なくなって筋力が徐々に低下する、社会のさまざまな情報に疎くなる、食事が簡単なものばかりになるといったことに繋がり、身体の衰弱を引き起こします。
介護になる原因その4:骨折(転倒)
高齢になると筋力やバランス能力の低下が原因で転倒による骨折を起こすことが多くなります。
骨折に繋がる骨密度の低下は加齢と関連していることが広く知られていますが、特に女性では閉経以降に骨密度が急激に低下するとされています。
骨折や転倒が原因で介護が必要になる理由には、以下のようなものが挙げられます。
痛み
転倒や骨折によって生じた痛みがなかなか改善せず、痛みを抱えたままで日常生活を送らなければならないことがあります。
そうなると次第に外に出かけることが苦痛となり、外出の機会が減ることで筋力の低下などに繋がってしまいます。
不安感
痛みがなかったとしても、「また転倒してしまうのではないか・・・」といった不安によって外出を控える場合があります。
「転倒したら介護を受ける生活になる」と思っている高齢者も多く、「気持ちの問題」では済まされないものです。
転倒や骨折の再発
転倒や骨折を生じた高齢者では、それらを再度生じてしまうことが多くなります。
転倒を経験した高齢者の50%は転倒を繰り返すとも言われており、繰り返すたびに介護が必要な状態になります。
まとめ
今回のコラムでは、介護が必要になる原因として多くみられる認知症・脳卒中・高齢による衰弱・骨折(転倒)について解説しました。
それぞれに異なる原因であっても介護が必要になる理由は類似するものが多いものです。予防できる部分もあるため、日々の運動・生活習慣を見直してみてください。
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この記事の監修
アークメディカルジャパン株式会社
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