小さな意識で大きな効果!外出先でできる簡単な介護予防運動をご紹介
高齢者は加齢とともに筋肉の量が減少して、体が疲れやすくなったり、歩くときにふらついたりなど様々な症状が現れやすくなります。
この筋力の低下のスピードは年に1~2%程度低下するといわれていて、上半身の筋肉より下半身の筋肉が3倍にものぼるそうです。
このように、低下する筋力をなんとか補うために運動しようと思うと、どうしても専門のスポーツクラブなどに行かなければ出来ないと考えてしまい、なかなか取り組めていない方も多いと思います。
しかし、実はスポーツクラブに通わなくても日常のちょっとした工夫で運動の効果を高めることができます。
このコラムでは、自宅の外で簡単に取り組める介護予防に繋がる運動を4つ紹介します。
この記事の目次
運動その1:歩く
高齢者では日常生活で行う様々な動作の中で、「歩く」「立つ・座る」動作に使われる筋肉が比較的早期に低下するといわれています。
平成9年に厚生労働省が行った調査では、70歳以上の高齢者が1日に歩く平均歩数は男性が5,436歩、女性が4604歩で平成元年から1000歩以上増加しているそうです。
では、1日の目標歩数はどれくらいに設定すればよいのでしょうか?
こちらも、厚生労働省が目標歩数を定めています。男性で6,700歩、女性5,900歩で先ほど紹介した平均値より約1,300歩(歩く時間で15分程度)増えた歩数が目標になります。
皆さんはこの目標値と比較して1日どれくらい歩けていますか?
既に散歩を日課にしている方でも、散歩を行っている方は今の歩数にプラス1,300歩(15分)を参考に歩数を増やしてみることをお勧めします。
出所:厚生労働省 身体活動・運動
歩く距離を増やすためには、以下の3つを取り入れて意識してみるだけでも気持ちも歩く効果も変わってきます。
- 回り道を通ることで歩数を増やす
- 普段通らない道を通ることで気分転換をして景色を楽しむ
- 万歩計を持ち歩き日々の歩行歩数をチェックする
歩数のみを増やそうとすると苦痛になってしまいます。
万歩計を使ってゲーム感覚で楽しむ、通ったことのない道で風景を楽しむといったポイントが大切となってきます。
ちなみに、最近のスマートフォンには万歩計機能が搭載されていますので活用してみてはいかがでしょうか。
普段から散歩を行っていない方の中には、歩行補助具と呼ばれる杖や歩行器といった道具を使うことに抵抗がある高齢者は少なくありません。
その理由は、「頼ってしまうと脚の筋力が弱るから」というものです。
たしかに、これらを用いることで下半身への負担を軽減することができますが、だからといって筋肉が活動しなくなるわけではありません。
むしろ、負担を軽減して安楽に歩ける状態でたくさんの歩数を歩けるようにすることが良いでしょう。
運動その2:はやく歩く
歩くことについては歩数だけではなく、スピードを意識することも大切になってきます。
実は歩行スピードと余命には深い関係があるといわれています。
70歳になっても若い人と変わらないスピードで歩くことができる高齢者の方は、健康寿命を維持して長生きができるという研究があります。
出所=(歩行速度から予想される余命(JAMA. 305(1), 50–58, 2011))、『健康寿命をのばす食べ物の科学』
はや歩きをするポイントは以下の3つです。
・初めから最後まで早く歩かずに、普通の速さとはや歩きを入れ替え歩くスピードを変化させてながら歩く
・早歩きの合計時間が20分になることを意識する
・前に歩いている人に追いつく(追い抜く)イメージで歩く
ただし、早歩きに慣れない人が無理をしてしまうと膝や股関節などに負担がかかってしまうばかりか、転倒に至ってしまうこともあります。
まずは少し挑戦してみる程度からスタートし、慣れれば徐々に時間やスピードを増やしていきましょう。
もちろん、膝に痛みがあるなどのトラブルを抱えている場合には控えるか、杖を使用して膝などの負担を軽減すると良いでしょう。
運動その3:階段の昇り降り
歩行運動と似ていますが、階段の昇り降りも下半身の強化にはとても効果があります。
階段の昇り降りができる人とできない人を比較した研究では、階段の上り下りできる人の方が、長い距離を歩くことができたり、転倒しにくいという結果が出ているそうです。
日常の中で階段の昇り降り運動を始める際におススメの方法をご紹介します。
・スーパーなどでエレベーターやエスカレーター控えて、階段を使ってみましょう。
・散歩のコースに階段のある公園などを取り入れる。
・昇るときにはやや前傾姿勢、降るときにはゆっくりと足をつくことを意識してみましょう。
もちろん、こちらも膝などに痛みがある場合には無理をせず、徐々に頻度を増やしていくことを心がけていきましょう。
「普段は1Fから3Fまでエスカレーターを使っているけど、今日は2Fからエスカレーターを使おう」というように、部分的に階段を用いることが大切です。
また、荷物を多く持った状態で行うことは転倒にも繋がりますので、時と場合によってはエレベーターやエスカレーターを積極的に使いましょう。
運動その4:立ち座り
椅子からの立ち座りは下半身の筋力トレーニングにとってとても効果的です。
立ち上がりでは、大殿筋や大腿四頭筋と呼ばれる下半身で大きな筋肉が使われています。
外出したときに椅子に座ることは必ずあるものでしょうから、そのときには下記のポイントを考えながら行ってみると良いでしょう。
・下半身の筋肉をしっかりと使うために立ち座りはゆっくりと行う
・可能であれば手すりやひじ掛けなどを使わずに足の力だけを使う
・高さの異なる椅子に座ることで様々な下半身の筋肉の使い方を行う
(低い椅子が足への負担が大きくなります)
このように、動きを少し意識するだけでも筋力トレーニングとしての効率を変えることができます。
同じ動きであっても、動きの速度・動きの向き・姿勢などの条件によって筋肉の活動の仕方が変わるとされています。
立ち座りは歩くことや階段の昇り降り以上に意識することが少ないからこそ、小さな意識で大きな効果を期待することができます。
もちろん、これは自宅内でできるトレーニングにおいても同様ですので、是非チャレンジしてください。
おわりに
この記事では、自宅の外で簡単に取り組める介護予防に繋がる運動をご紹介しました。
いずれも日々の生活にほんの少し変化を加えるだけですので、慣れてしまえば当たり前になってくることでしょう。取り組めそうなものを1つだけでも取り組んでみてくださいね。
あわせて読みたい
在宅分野の強い味方、保険外看護介護サービス
看護師が家事サポートとしてやってきます! 週1日だけ誰か手伝いに来てくれないかな・・ 夜だけでも、トイレ介助を手伝ってくれないかな・・ 誰か老々介護の両親の手伝…
この記事の監修
アークメディカルジャパン株式会社
「健康寿命100歳の実現とQOLの向上に情熱的に貢献する。」をミッションとしています。
主な事業としては「鍼灸整骨院の運営」「ヨガ&ピラティススタジオの運営」「身体の専門家向けプラットフォームXPERTの開発運用」「ヘルスケアコンサルティング」などを行っており、これらの事業を通して一人でも多くの方が笑顔で幸せ溢れる社会の実現を目指しています。