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看護師が解説! 更年期症状②更年期のホットフラッシュケア
更年期の症状と言えば、真っ先に思い出すのがホットフラッシュではないでしょうか。 ホットフラッシュは上半身のほてりやのぼせ、発汗などを伴う更年期の代表的な症状で…
更年期を快適に過ごすためには、更年期を迎える前から予防をすることが大切です。
しかし、この時期になると職場での役割や介護が始まるなど、自分以外のことで悩みを抱えることも多いと思います。環境の変化によってストレスを感じてしまうと、感情が乱れて体の不調につながりやすくなります。
あまりにもつらいと感じた時は、治療という選択もありますので我慢しないで受診をしましょう。
今回は、更年期症状の治療についてお伝えしていきます。
この記事の目次
1.受診の流れについて
「更年期症状かな?」と思った時は、婦人科の受診をお勧めします。
以前は妊婦さんと一緒の待合室で「なんだか行くのが恥ずかしい」と思われがちな婦人科でしたが、今は更年期外来や女性外来といった更年期を対象にした診療科があります。
ほとんどの診療科が予約制になっており、他の患者と顔を合わすことも少なくてすみます。
診察はカウンセリングを中心に進んでいくため、構えずに安心して受診をしましょう。
受診の流れは次のようになります。
①問診
受付が終わると、診察待ちの間に体温、身長と体重を測定し問診票を記載します。
診察室に通されると、医師が問診票を見ながら丁寧に診察をしていきます。
問診内容
- 月経について(月経の有無・最終月経・周期や量など)
- 閉経してからどれくらい経過しているか
- 病歴(家族の病歴含む)
- 生活習慣
- 主な症状
- 現在治療中の病気や飲んでいる薬
②検査
問診が終わると検査をします。
検査は血液検査、内診、超音波、細胞診の他、症状によっては、乳房検査や骨量測定が実施されます。
更年期は血液中のエストロゲンの数値が低下するのに対し、卵胞刺激ホルモンの数値は上昇します。
その結果を目安に他の病気がないか判断されます。
外来では更年期に気になる骨密度や乳がん、子宮がんの検査も受けられます。
かかりつけ医として定期的に受診すると更年期以降も安心できます。
検査が終わると、ようやく医師から治療の話が出ます。
治療法については慎重に説明されます。
どのような治療法があるかを前もって知っていると冷静に判断できて迷わずに済むので、次に治療の種類をお伝えします。
2.治療の種類
①漢方薬による治療
漢方薬は東洋医学の代表的な治療法です。
自然の植物や鉱石などの素材で作られた天然の生薬を一定の割合で配合して服用する治療法です。
自然由来の生薬を使っている漢方薬は、西洋の医薬品とは違い、体質に合わせた処方がなされます。
生薬の組み合わせと体質が合えば、薬の効果を発揮しますが、即効性がないことや独特なにおいと苦みがあるため飲みづらいというのが難点です。
私は皮膚の湿疹に悩んでいたころ、煮出すタイプの漢方薬を飲んでいましたが、部屋に漢方独特のにおいが充満して家族から苦情が出たため散剤に変えました。現在皮膚の湿疹は改善しているので、どちらでも効果を感じられると思います。
婦人科では主に3種類の漢方薬が処方されています。
婦人科三大漢方薬
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん) | 冷え性、貧血症状の強いかた |
加味逍遥散(かみしょうようさん) | イライラなど、精神症状のあるかた |
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん) | 頭痛やめまい、のぼせのあるかた |
漢方薬は副作用がなくて安全と言われていますが、症状に合わない服用や間違った方法での服用、市販の薬や健康食品との併用をすることで副作用が生じることもあるため、注意が必要です。
②ホルモン補充療法(HRT)
ホルモン療法は減少したエストロゲンを補充する治療法です。
不足したエストロゲンを補充すると、自律神経が整い更年期の様々な症状が緩和されます。
特に、ホットフラッシュやイライラ、不安感などの感情が落ち着き、治療しているかたから「気分がスッキリしました」「気分が楽になりました」との声が多くあがっています。
エストロゲンは血管をしなやかにし、骨量の維持、肌のハリを保つ働きがあります。そのため、補充することで骨粗しょう症や動脈硬化、肌の乾燥を予防することができるのです。
また、ホルモン補充療法には経口剤と経皮吸収型製剤の2種類があり、体質や生活スタイルに合わせて選ぶこともできます。
経口剤
| 経口剤は投与が簡単ですが、毎日服用する必要があります。 胃腸を通り肝臓を通過した後に効果を発揮する薬剤 |
経皮吸収型製剤
| 貼り薬と塗り薬の2種類があります。 どちらも薬剤が直接皮膚から吸収されるため経口剤より胃腸や肝臓への負担が少ないと言われています。貼り薬は1週間に2回張り替えるタイプと2日に1回張り替えるタイプと選択できますが塗り薬は毎日塗布する必要がある |
このように非常に効果が期待できるホルモン補充療法ですが、副作用もあります。
ホルモン補充療法のおもな副作用は以下の通りです。
ホルモン補充療法の副作用
- 不正出血
- 乳房のハリや痛み
- 吐き気
- 下腹部のハリ、不快感
- おりものや月経のような出血
- 貼り薬や塗り薬による痒みや発赤、湿疹
このような症状は、薬を使用する頻度や量を調節することで改善できますが、経皮吸収型製剤が合わない場合は飲み薬に変更する必要があります。いずれも早めに医師に相談しましょう。
ホルモン補充療法は更年期の症状を緩和する優れた治療法ではありますが、治療ができない場合もあります。
ホルモン補充療法ができないかた
- 乳がん、子宮体がんがあるかた、完治しても既往がある場合
- 血栓症のあるかた 過去に血栓症と診断された方
- たばこを良く吸う方(血栓症のリスクがあるため治療できない場合があります)
ホルモン補充療法については、これまでにかかった病気や体質を踏まえて医師と相談しながら進めていくことになります。
③抗うつ剤・抗不安薬による治療
エストロゲンが減少すると、自律神経のバランスが乱れて、抑うつ、不安、過換気症候群などの精神症状が出現する場合があります。そのような時は、抗うつ薬、抗不安薬や睡眠導入剤の処方が選択される場合があります。
自律神経症状の症状が強いかたは、自律神経を調節する作用の薬と循環作用のある薬を症状に応じて使い分けることになります。
3.治療費について
更年期に起こる症状や治療に必要な期間は個人によって違いがあるため費用にも差があります。
また、治療には健康保険が適応できるものや、できないものがあります。
初診料
婦人科も健康保険適応であれば初診料は850円~1,000円未満と他の診療科と変わりはありません。自費診療になると初診料は約2,000円になりますが、受診先によって違うため確認は必要です。
漢方薬
漢方薬は一般的な病院であれば健康保険の適応となります。1か月あたりおおよそ5,000円です。
ただし、漢方専門の医院や漢方薬局で自由診療をする場合は全額自費負担となります。
ホルモン補充療法(HRT)
ホルモン補充療法は健康保険が適応されるため1か月あたり約1,000~2,000円で治療が受けられます。
治療の期間は個人によりますが、医師からも丁寧に説明がされるので安心です。
婦人科診療は今つらい症状を改善させる目的で診察を受けるのであれば、10,000円程度持参すれば安心できます。健康保険証も忘れずに持っていきましょう。
診療所によっては、クレジットカードが使用できるところもありますので、受診前に確認すると良いですね。
健康保険の適応外になる治療法もありますが、治療を進めながらゆっくり考えていくと良いと思います。
4.まとめ
更年期は様々な疾患に見舞われることも多く、その原因がエストロゲンの減少だけであると限りません。
つらい症状がある時、まずは受診して症状を緩和することが優先されます。
受診が生活習慣病を見直すきっかけになる場合もありますので、遠慮なく医師を頼ってみましょう。
次回は更年期症状を予防するセルフケアについてお伝えします。
この記事を書いた人
福井三賀子
<プロフィール>
小児内科、外科、整形外科の外来と病棟勤務で看護の基本を学ぶ。
同病院の夜間救急ではアルコール中毒、火傷、外傷性ショックや吐血、脳疾患など多くの救急医療を経験。
結婚後は介護保険サービス事業所で勤務しながらケアマネジャーの資格を取得。6年間在宅支援をするなかで、利用者の緊急事態に家族の立ち場で関わる。
在宅支援をしている時に、介護者である娘や妻の介護によるストレスが社会的な問題に発展していることに気づき、心の仕組みついて学びを深めると同時に更年期の女性について探求を始める。
現在は施設看護師として入居者の健康維持に努めながら50代女性対象の執筆活動やお話会、講座を開講している。
<経歴>
看護師経験20年。
外来、病棟(小児・内科・外科・整形・救急外来)
介護保険(デイサービス・訪問入浴・訪問看護・老人保健施設・特別養護老人ホーム)
介護支援専門員6年
<資格>
看護師/NLPマスタープロテクショナー/プロコミニュケーター
<活動>
講座「更年期は黄金期」
ブログ「幸せな更年期への道のり」
メルマガ「50代女性が自律するためのブログ」
スタンドFMラジオ「幸せな更年期への道のり」